幸せだった時間は・・・
「誕生日、かあ・・・・・」
自室に戻っていた千夏は、自分の誕生日について思い出した。
・・・・・あの毎日が楽しかったとき。
学校から帰ってきた私に、それも早めに帰ってきたお父さんとお母さんと加奈が、
テーブルの上にいつもより豪華な食事と、真ん中にケーキを用意してくれていた。
「ハッピーバースデー、千夏!!」
その瞬間パンパンと何かが弾ける音がする。私は思わず目をギュッと瞑ってしまった。
そして目を開けたとき、飛び込んできたのは回りに舞っている紙ふぶきと幸せそうに笑う、
家族の顔。
「・・・ど、どうしたの?!」
「何よ~、千夏は自分の誕生日も忘れちゃったのかしら?」
楽しそうにお母さんが笑う。
「今日はパーティーをやるっていうからな、早く帰ってきたんだ」
そういいながら、ネクタイをはずすお父さん。
「ケーキは私が作ったの!!少し失敗しちゃったけど、そこは許して!!」
テーブルの真ん中に置かれているケーキを手前に引き出しながら言う妹。
「う、うん・・・・・。ありがとう」
私が照れながら言うと、お母さんは、
「何、照れてるのよ!家族なんだからリラックスしなさい」
と言い、キッチンへと向かった。
私は二階の自分の部屋でスクールバッグを置き、私服に着替えてから下のリビングへ向かう。
テーブルには、さっきよりも物数多く、料理が並べられている。
「美味しそ~!なんかお腹空いちゃった」
「まったく、私なんかお姉ちゃんが帰ってくるまで、ずっと我慢してたんだから!」
加奈が椅子に座りながら言う。
「ごめん」
「いいよ。誕生日だしさぁ!」
「フフ」
「それでは、改めて・・・」
加奈がどうやら乾杯の音頭をとるようだ。
「え~、私の姉にあたる千夏は、今までちゃんと善事を働き、
人のために尽くし、友人達にも献身的であったことを・・・え~」
「加奈、そんなに堅苦しく言わないでよ」
私がすかさずツッこむと、加奈はバツが悪そうな顔で、
「やっぱり、駄目?」
と言った。
「・・・。イヤ、別にいいんだけどさ」
「アハ、じゃ続きをやるね」
そのまま加奈は続けた。
「えっと、これからも、お姉ちゃんは、いい人間であると信じます!
それでは、我自慢の姉の誕生日にて、これを祝します!」
「「「「カンパ~イ!!!」」」」
明るい4人の声がリビングに響いた。
「ん~美味しい!このから揚げなんかサックサクで最高!」
「グラタンも美味いわ~・・・、え?これお母さんの手作りなの?
やるねぇ、お母さんったら」
「何?!チーズフォンデュ!!超イイ!!」
何からなにまで口に入れる私を見て家族は呆れた。
「どこにこんだけの胃袋があるのかなぁ?」
そして最後は加奈お手製のケーキ。
「美味いっ!!美味いよ、加奈っっ!!!私はあんたのお姉ちゃんになれて
本当に嬉しいわよっ!!」
「本当?・・・でもよく入るね、もうこんなに食べたのに」
「平気よ!今日ぐらいは太ったって、プライドが許してくれるわよ」
「・・・・・(汗)」
「・・・もう過去のことなんだね」
千夏は呟いた。
「時間は戻らない」
「でも名残惜しいなぁ・・・」
「今も楽しいけど」
「・・・今を大切にしなくちゃ」
「過去のことに囚われては」
「きっと駄目なんだ」
今回はけっこうつまらない内容にしました。
勝弘と広人が手を組んで千夏の誕プレを買いにいくときの時間をかせがなくては、
と思ったからです。
by姫ちゃん