なんで私だけ?
「未だに見つかっていない全国指名手配犯河本広人容疑者が見つかると良いですね。」
「千夏~!!加奈~!!晩御飯よ~~~。」
「分かった、今行く!」
ダダダダダッともの凄い勢いで階段を降りて行く。私はこんな幸せな家庭が、崩れるとは考えて
いなかった・・・。
私は安藤千夏。普通の女子高生でこの17年彼氏は一切持っていない。
さっきのニュースは、老人大量殺害で全国指名手配犯となっている河本広人に関しての内容だ。
警察が、あともう少しで捕まえられそうというときに上手く逃げ出し、また殺人を図るという最悪の
手段ばかりつかっていていまもなお逃走中である。そして国民たちは、いつそいつが来るかという
ことで日々怯えるのであった。きっと、というか絶対捕まったら死刑は免れないだろう。
「お姉ちゃん~!ご飯食べ終わったら宿題教えて~。」
と頼んできたのは妹の加奈である。
「また?おとといだか昨日だかも教えたよーな・・・。」
「そ、それはきっとお姉ちゃんの勘違い、だと思う・・・。」
本当は昨日も、一昨日も一週間連続で教えていたのを知ってるけど。
私は、加奈が大好きだからだまされたフリをする。
「そっか。じゃあ食べ終わったら加奈の部屋でやろうか!」
「えっ?わ、私の部屋・・・?」
動揺する加奈を目の前に、私はさらにいった。
「良いじゃない!加奈だって自分の部屋の方が落ち着くでしょ?」
「そっ、それはそうだけど、私の部屋すごく汚いのっ!!!」
と大声で言った。その瞬間お母さんが
「静かにしなさい!!ご飯中だけでも口を閉じることはできないの?」
と言った。
「だってママ!お姉ちゃんの部屋のほうがきれいなのに、なんで私の部屋でやるのよ!!」
するとお母さんも負けじと声を張り上げる。
「今日学校から帰ってきたら自分の部屋を整理するように、ってお母さん言ったわよ!」
そう言った途端、加奈の顔が、青白くなったような気がした。
「ご・・・ごめんなさい・・・。私忘れてた・・・。宿題教えてもらったら、すぐやります。」
お母さんはそれでいいというようにみんなの食べ終わった食器を重ねて、キッチンへと
持って行った。
「ごめん、お姉ちゃんにも迷惑かけちゃって・・・。」
すごく申し訳なさそうな顔をしている加奈に向けて、私は言った。
「いいよ。本当に加奈が反省してるなら。」
こういう時、いざぎよく反省できる加奈は、すごく偉いし、姉である私も見習いたいと
思うほどである。
居間のテレビには、まだ河本広人に関してのニュースが流れていた・・・・・。
「ん~っと、だからこことここを足して・・・。」
「あ、一週間分を全部足すのね!!」
「そうそう、平均の求め方は合計をその個数で割るから、答えは16。分かった?」
「うん、大丈夫。後は自分でやるから。教えてくれてありがとね!」
頑張って、と私は言い残して加奈の部屋の扉を閉めた。
自分の部屋のベッドへと倒れこんだ。なぜかは分からないが、ときどきこうしたくなる。
すると携帯のベルが鳴った。画面を見た。どうやら友達からのようだ。
『やっほ~!元気?今好きな人からメールで告白されちゃった!!!もちろん答えはok!千夏も
早く彼氏作りなよ!』
というもの。自慢かよ、と思ったが、急いで喜びの返事を送る。
『本当に?!良かったね!!ooちゃんいいなあ~!羨ましい!頑張ってね。』
「羨ましい」と思うのは本当だった。
「なんで私だけ、彼氏できないんだろう・・・・・・。」
はあ、と大きなため息をつきうつぶせに寝転がる。
「人生って楽しくない・・・・・・・。」
そう思った。
彼氏がいたら、楽しいことがたくさんあるだろう。告白されて、毎日手をつなぎながら登校下校したり。
週末にはデートいって、二人で仲良く遊んだり。嬉しいこと満載なのに。
でもそれは、彼氏がいなければどうにもならない。
「なんで私だけ・・・・・・。」
そう、千夏以外のクラスの女子全員は彼氏持ちなのだ。最後の望みだと
思っていた子もさっきのメールで終わってしまった。
でも、明日になって「昨日に戻りたい!!」と強く願うとは誰も思っていなかった。
そう、今日までは。
初登場のユーザーネーム「憂鬱なもののけ姫」です。これからよろしく
お願いいたします。なっ、なるべくみなさんに楽しんでいただけるよう、頑張るので、応援お願いします!