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Heavens Under Construction(EP5)  作者: 高山 理図
Chapter.3 Under clinical trial in virtual space
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第3章 第1話 NPCs living in Monja◆

 快晴の空のもと、四百人あまりの熱い視線が赤井に注がれている。

 集落の広場に集まった素民たち。

 ぐるりと360度に赤井を取り囲んで、全員出席での集いが催されている。

 弁当と飲み物持参でだ。

 いっしんに赤井の顔を見つめる集落の民を見渡し、彼は少しあらたまって高らかに宣言する。


『モンジャにしました!』


 告知は爽やかに! 間違っても爆笑してはならない。

 一秒後には爆笑しそうだったが……。

 笑うなかれ、これはれっきとした地名なのである。


***Heavens Under Construction 第3章***


挿絵(By みてみん)


 どうしてこういうことになったかというと、集落代表のロイとグランダ女王キララの和解によって、グランダと赤井の集落との交流が図られることになったと素民に伝えると、素民たちは対抗意識を燃やしたのか、こちらの集落にも地名があった方がいいという話になったからだ。


 地方名を決めるにあたり、四百人の意見をまとめるのも骨が折れるので、集落代表のロイに一任するという方向になった。

 ロイは「神様にご加護をいただいている土地なので、やはり神様に決めてもらいたいです」と赤井に丸投げ、赤井に土地命名権が発生。


 それでモンジャになりましたと伝えたのだ。


「ジャンモ?」


 首を傾げながら間違った復唱をする少年ケンタは、刈り上げヘアで頭がツンツンだ。

 去年生まれたばかりの妹を背負い、両親の手伝いをして子守に精を出している。


「モンジャって?」


 最前列で体育座りをしみょんみょんと左右に揺れるメグの眉間の皺が深くなってゆく。

 ロイは律義に正座をして、木の皮のメモ用紙に記録をしていた。

 集会の議事録のようだ。

 カタカナでモンジャ、という文字を、赤井は見なかったことにした。

 いろいろとまずい。


「ジャの部分が言いにくいですけど」

「モン……ジャ?」


 混乱をしているのはメグの横に座るカイだ。

 カイはメグの妹で、料理が得意、亜麻色の髪を長く伸ばしている。

 カイが混乱するのも無理はない。

 拗音ようおんはこれまで集落にはなかった発想だ。


「あのー、ぜひとも由来を教えてもらえませんか」


 狩人、ヤスも困惑顔だ。

 ヤスは以前より髭が濃くなった。

 眉毛もますます太ましく繋がっている。


『由来……由来はですね』


 現実に戻ったら一番食べたいご当地グルメの名前なんです! 

 などと言えるわけもないので、それらしい由来を考えてきた。


『私の故郷の言葉で、”万物の基本”と言う意味です』


 B級グルメの基本、イロハのイ的な意味では間違ってない。

 広島代表お好み焼き、大阪代表たこやき、焼きそばなどメではない。

 発祥はもんじゃが先だ。

 明治時代発祥、起源は江戸時代にも遡る。

 全てのご当地B級グルメはもんじゃにつながると言っても過言では……過言だった。

 拡大解釈もいいところである。

 東京以外のご当地県民から顰蹙を買いかねない。

 ついでにB-1グランプリでは他県の皆さんお手柔らかにしてほしい、と赤井は思う。

 そんな彼はもんじゃの肩を持っているが、何を隠そう神奈川県民だった。


 そんなことはつゆ知らず、由来を聞いた民たちの反応は良好だ。


「それは素晴らしい名前です」

「モンジャ地方の住民として誇りに思います!」


 心苦しさに負けてはいけない、と赤井は笑顔で耐える。

 というわけで、ブリリアントのログアウト、第一区画解放から一週間が経過しての集会は始まった。

 赤井が集落へ帰郷を果たして三日目のことだ。


【アガルタ第二十七管区 第3352日目 居住者数 1891名 信頼率 95%】


 5%程度の素民はギメノグレアヌスを信仰していたり、信仰を捨てても宗旨替えができない岩盤支持層だ。

 赤井を信じない素民はそれでいいと赤井は思う、信教の自由は大いに保証されるべきだ。

 彼はやはり分け隔てなく平等なサービスを心がける、信徒とそうでない素民に差をつけない。

 素民たちとは一年ぶりの再会だったので帰郷したときは何を言われるかと緊張した赤井も、素民たちは全面的に赤井の帰還を喜んでいた。

 第一区画解放までは異常だった彼らも正気に戻って、翌日には一年ぶりに祝福を受けるため、行儀よく長蛇の列ができたりした。


 久しぶりの祝福に感動して泣く素民も多かった。

 そんなものがあるのか分からないが、神様冥利に尽きるというものである。

 ロイも希望者には祝福していたようだが、癒しの力は断然赤井の方が強く、神々しさも違う。

 ヤスの腰も一発で治った。

 また、赤井自身も久しぶりに祝福ができて喜びを感じていた。

 以前のように神通力に感電して民が暴れる兆候もおさまっていた。

 あの素民たちの異変は、区画解放の目安だったようだ。

 第二区画の時は気を付けないとな、と赤井は肝に銘じる。

 また、赤井が集落に戻ったためか、素民の”追加”がはじまった。昨日だけで人口が十人増えた。

 相変わらず素体だったが、素民たちは歓迎し、ハクら大工が張りきって追加された素民たちのために家を建てている。

 ハクはグレーの長髪を布で縛って束ねた三十二歳の男性で、大工だ。

 顔立ちは浅黒く彫が深くて鼻が高いラテン系。

 真面目で冗談も言わない、陽気ではないラテン系、……ラテン系の長所を殺してる気もしないでもない。大工のハクはもはや棟梁のような貫禄が出て、弟子が二十人も増えていた。


 ユイはハクの嫁でインド系の美しい顔立ちだ。

 編み物の得意な彼女は白いリブ編みのニットのようなものを着ている。

 しかし綿織物なので、折角編み物の技術はあるのに作品はぺたっとしていた。

 羊やアルパカ的なモフモフした毛の調達は急務だな、とそれを見た赤井は思う。


 本日の議事は他にもあった。


『また私は、しばしの間このモンジャの集落を留守にしようと思います』


 今度の赤井は行き先を事前に報告する。

 どこに行くのも構わないが、行き先と滞在期間を報告してくれと、ロイに釘をさされたからだ。

 行先が分かれば皆が安心して待てるから文句は言わないのだと。しかし……


「ええ―――!! やめてー!」

「戻ってきたばかりなのに、すぐまた去るなんて酷いですあかいかみさま!」

「行かないでください! 私たちを置いてどこに行かれるんですか!」


 大ブーイングが起こる。

 行き先を伝えても結局同じだった。

 赤井の不在中もロイを中心に立派にやっていた素民たちだが、赤井の加護がないと心細いのだ。


『すぐに戻ります。病に喘ぎ、助けを求めている異国の民が私を待っているのです』


 数日モンジャの集落に滞在し、グランダにとんぼ返りで復興を手伝うつもりだと赤井は彼らに伝える。グランダは壊滅寸前にあり、竜巻の被害も公害病も解決しなければならないのだと説得すると……


「じゃあ、仕方ないです。困ってる人がいるなら……」

「仕方ないよなあ。モンジャの民は元気だし、病んでいる民がいるなら。あかいかみさまがそちらをご心配なさるのもわかる」


 若干拗ねつつ、モンジャ集落の民は心根が優しく聞きわけがよかった。

 赤井がそんな彼らの反応に、何となく申し訳なく思っていると。


「では私たちもその、グランダなる土地の復興を手伝います! 手伝うついでに、暫くそちらに滞在して進んだ建築技術を学びたいです!」


 グランダへの留学を希望したのはハクだ。

 赤井がいない間に、素民たちは向学心が強くなったようだ。

 学べる機会があればとことん学ぼうとするのはロイの影響もあるのだろう。

 赤井がひょっこりいなくなっても、自立できるように……。


 ユイの娘、サチももう八歳だ。

 サチの顔はユイ似で茶髪の少女、手足の長いところはハク似だ。

 サチは両親が始祖なので、普通の素民とは何かしら違っている。

 西園の声が聞こえるようなのだ。

 赤井と西園の会話を盗み聞きしては首を傾げていた。

 ユイには流されていたが、成長して西園との会話を盗み聞きをされると困る、と赤井は警戒している。

 

 というわけで、ハク一家とその弟子十名、ロイ、メグに赤井というグランダ派遣メンバーを決め、モンジャ集落の集会は無事に散会した。

 集会が終わり素民たちが各々の仕事に戻ると、メグが赤井のもとに駆け寄ってきた。


「あかいかみさま……何年も前から言おうと思っていたんだけど、やっぱり言います」

『どうしました?』

”何? 告白? 告白はまずいよ今はやめて?”


 などと赤井が慌てていると。


「ちょっと失礼します」


 メグは赤井の肩に巻かれているストールをとり、腰に巻きつけてきつく結ぶ。

 着物のおはしょりをつくる要領でたくし上げ、紐で締めた。


「これで動きやすい、ですよね?」

『!?』

”あれ? これすごくいいじゃん! いい塩梅。帯にすべきだった!? ストールじゃなくて?”


 腰で縛るとしっくりきた。

 裾も短く調節できて引きずらず動きやすいのだ。

 赤井が素直に喜んでいると


「ロイが、たぶんあれは何か裾を上げない理由があるから指摘しちゃダメだって。でも私、特に理由があるみたいに見えなかったし……」

『……それ、気を遣わずもっと早く教えてほしかったです。結構不便をしていたものですから』

「え、気付かなかったんですか?」


 メグはくすくすっと笑った。


「あかいかみさまでもうっかりしてるところとか、人間っぽいところがあるんだなあって。私たち、かみさまのこと完璧な存在だと思っていたから」

『私、あなたたちとそんなに思考回路は変わりませんよ』


 ロイメグの知的スペックは高い。

 にしてもロイはわざと教えずに裾を踏んで何か意味があるのか確かめるだなんて酷いよ、教えてよそういうことは! 

 と、赤井が口をとがらせていると……メグはほわーとした顔をしながら、さらに赤井の帯を締め、リボン結びをしていた。


”天然だなこの子”

「いえいえ、私もロイもあかいかみさまにはかないません。でも。またかみさまのこと、好きになったですよ」


 もじもじしながらメグが一言を放ったせいで、素民五人ほどが嫉妬の表情で振り返る。

 またメグにライバルが増えた様子だが、無自覚なのだ。


”私もメグのことは大好きだ……”


 赤井は口に出してはそう言えず、きゅっと無言で祝福する。

 メグは幸せそうに寄り添うと、


「あ、グランダ行くのに荷物をつくらなきゃ」


 思い出して恥ずかしそうに走り去った。


 その夜。

 住まいの洞窟の前に素民が夜這いしているのを見つけた赤井は、身の危険を感じそっと洞窟から引き返し、ひとり草原に出て夜風に当たる。

 草原の中心部にいれば、夜は誰も出てこないし人目にもつかない。

 神通力の加護があるのでもうエドは集落に近づいてこないが、素民たちはエドの脅威を差し引いても暗闇が怖いのだ。

 西園との通信の時間である。

 インフォメーションボードを立ち上げ、西園に定時連絡。


『第一区画解放後の処理が大変そうですね、赤井さん。人数も増えましたし』


 西園はスケジュール帳を開きながらずずっと、美味しくなさそうにパスタを啜る。

 いつもモニタ前で食事をしているので、どれだけモニタに張り付いているのだろう、と赤井は思うが怖くて聞けなかった。

 その西園は、今日はたらこスープパスタのようだ。

 赤井は西園の健康に関して余計な心配をする。


”少しは野菜も食べて下さいね、美容に悪いですよ。あ、コールスローも食べてたんですか”

『災害の爪痕は大きいです、尽力はしていますが』

『ご心配なく。エトワールさんが手伝ってくれますよ、彼はベテランで敏腕なので新神の赤井さんでも安心です』


 そうだろう、ベテランぽかったもんな、と赤井は期待する。

 下積み時代も長いのだろう。


『エトワールさんと私って、神と天使という関係になるんです?』

『そうです。赤井さんは神様ですから、天使には毅然とした態度で接して下さい。エトワールさんもそこは心得て演じてくれるわけですし』

『うーん。そういう役柄なんですか』


 赤井は宗教系には疎いので、神と天使の関係がどのようなものか、想像できなかった。

 基本的には神様の言うことを民に伝えて、神様の代わりに奇跡を起こすのが天使、要するにパシリ、ぐらいの認識でいる。


”でも私、先輩をパシらせるとかできないっすよ。いえいえ私がやります先輩は座って休んでて下さい、とか、コーラ買ってきます! になりそう。コーラないけど”

『で、エトワール先輩の就任日ログインはいつです?』


 それでも赤井はブリリアント、改めエトワールの再降臨を心待ちにしていた。

 彼は甲種二級といっても経験値が違うので、構築士として赤井が彼から学ぶことはたくさんあるのだ。

 彼は赤井とは異なる構築ツールが使えるようだ。


 何より、早く現実世界の相棒が欲しいというのもあった。

 仮想世界で四六時中演技をしてると疲れる。

 たまには愚痴も聞いてもらいたいし、現実世界の世間話もしたいのだ。


 西園はエトワール(本名ジェレミー=シャンクス:Jeremy Shanks)のプロフィールを赤井のインフォメーションボードに送る。

 しっかり目を通してください、と言い添えて。


”立場的には私の部下になる人だからね、きちんと読み込まなきゃ”


 神様役以外の構築士のプロフィールは公表しても差し支えないようだった。


”にしても先輩の芸名、ブリリアント(輝く)の次はエトワール(星)ですか。うん、いいよ。いい名前だと思う。いいんだけどさ”


 若干ナルシストなのかもしれない、と赤井は微笑ましく思う。


 現実世界のエトワールは、医者だったようだ。

 失業内科医。

 現実世界では内科医があぶれ、就職難だ。

 特に万能薬が普及してからは医者は外科医や整形外科、脳外科にしか需要がない。

 コンビニで万能薬飲めば大抵の病は治るご時世だ。

 怪我をしない限り、人々は病院にも行かなくなった。

 内科系や看護系職は軒並み失業者続出だ。

 内科医から外科医への転科はハードルが高いようで……。

 同じ理由で歯科も倒産が相次いだ、虫歯・歯槽膿漏予防歯磨きが開発され、誰も虫歯にならない。

 行くとしても噛み合わせの問題程度だ。


 エトワールも医師も失職の煽りをくらってか、構築士になって四年目。

 二十九歳らしい。働き盛りだ。

 ともかく。

 現実世界では何かと大変そうなエトワールも、仮想世界では頼もしい助っ人。

 鉱毒の対処法も教えてほしいところだった。

 西園はコールスローを飲み込んで口をハンカチで拭いながら、


『あ、ログインは今日ですね。そちらの時間では今夜です! もうすぐログインですね』


 それから三時間あまり。

 赤井は草原に寝そべって一人、時間を忘れ模造の宇宙を見上げる。

 人工的な投影であるので、プラネタリウムそのものだ。


 社会人天文サークルに所属していた赤井は、もともと星を見上げるのが好きだ。

 東京の空は星がよく見えなかったが、アガルタの星はずっと鮮やかだ。

 アガルタの星は地上に真っ直ぐ光を届け、瞬かない。

 何光年もの彼方から届いた光、という宇宙のロマンはないが、それでもアガルタに月と星を置いた開発者には感謝したかった。

 監禁されている赤井にも見上げる空と大気がある。

 この事実に癒されている。


 二十七管区の星々は左から右に流れ、現実世界の北極星のように同心円状に回らないが、規則的に異なる星座を映している。

 この世界は平坦で、地球のように球体をしていないようだ。

 グランダの城壁から磔になった赤井が毎夜見上げた夜空。

 することもなく暇だった彼は、いくつか目立った星々に名を付けた。

 あれに見えるは、赤井が最初に名付けた星座、コテ座だ。

 モンジャ焼きのコテに似ているから、ということらしい。

 日没後一時間すると天頂に見える星座だ。


 草原の草が頬に触れながら、風にあたり寝そべって空に目をこらしていると。

 不意に空がボッと明るくなった。

 天頂から炎が立ち上ったかと思うと、長く青い尾を引いて流れ星、と同時に待機させていたインフォメーションボードが明滅。


【甲種二級構築士 エトワール(Canada/ID:CAN203)がログインしました。……確認】


 赤井は慌てて跳ね起き、確認ボタンを押す。

 エトワールのログインの瞬間は、流星の大気圏突入のようだった。

 記憶がないけど、私もあんな風にログインしてきたのかな、と思いを馳せる赤井。

 夜空が明るくなり民は驚いてしまうだろうが、それがまた神々しい演出だったりする。


『本当にエトワールみたいですよ先輩、輝いてます!』


 長い尾を引いていた星は光を失い……そしてふわりと赤井の目の前に舞い降りたのは。


 甲種二級構築士、エトワール。

 あいも変わらず、金髪碧眼の童顔。

 今日は堂々と顔出しだ。

 純白の衣を纏い、金色の帯を締めて長いローブを着ていた。

 赤井はてろんとした白いワンピースだが、彼の衣装はキリスト教の司祭服のようだ。

 こっちの衣装の方が粗末じゃないか、と、赤井は若干ショックを受けつつエトワールの純白の翼に目を奪われる、長い翼はきれいに羽づくろいされ、自在に動くようだ。

 美しすぎる天使だった。 


”なにこの神々しさ、百パー私が引き立て役になりそう”


 しかしそれでも表情には出さず、まずは後輩から挨拶。

 挨拶は社会人、いや社会神の基本だ。


『ようこそお越しくださいました、エトワール先輩。これからよろしくお願いします。美しい翼ですね、純白がまぶしいです』

『やあ赤井君、また会えたね。今度はエトワールとして君と一緒に仕事ができて嬉しいよ。ちなみにこの翼、カラーバリエーションが12色あるんだ。飽きたら他の色にするよ』


 エトワールはぴろんと翼を持って嬉しそうにしていた。


”カラーバリエーション12色?! いいなー楽しそう。せめて私の髪色とか後光もカラーチェンジできたらいいのに”


 カラーバリエーションどころか、純白衣装しか許されない赤井は羨ましかった。


『先日は私、先輩に申し訳ないことをしてしまいました。卑怯な方法で先輩をログアウトさせてしまい……どうしてこんな失態を犯した私のところに再び来てくださったのかと、不思議に思っています』


 ずっと心に引っかかっていたことを、謝罪する。


『ああ、あれはいいよ。私も昇進できたし、目的は果たせた』


 エトワールは竹を割ったようなあっさりとした性格だった。


『ここに来た理由だけど。君へのオファー、一件しかなかっただろ?』

『え、はい。エトワール先輩だけでしたけどそれが何か。もっと何件もオファー来るもんなんですか?』

『君のエリアは構築が遅れているから、天使役の甲種構築士たちに人気がなくてね。誰も手を挙げなかったので、君には使徒がつかない予定だった。でも公害汚染をした地区を残してきたし、君一人では対処法も分からず苦労するだろうと不憫になってね。私は既に移籍先が決っていたのだけれど、それを蹴って君のエリアにオファーを出したのさ』

 

 エトワールがここに来たのはお情けだったと知り、そんなに遅れているのかと赤井は慌てる。


”そりゃ深刻に受け止めないといけないな”


 その割には西園からは急かされないが、何か理由があるのだろうか。

 何にしても、エトワールにはお世話になりそうだ。

 エトワールは表情を引き締め、片手を差し出す。

 ハンデのある地区に来た彼も、色々と覚悟を決めてきたようだ。


『とにかく構築を進めよう、寄り道をしすぎて遅れをとっているぞ。私も最大限に力を貸すから』


 赤井は両手でエトワールの手を握る。

 甲種一級構築士と甲種二級構築士の間で、固い握手が交わされた。


『本当にお世話になります。先輩、今年のお中元の品、送りたいんですが何がいいです?』

『うーん。お中元の心配をしている場合ではないと思うぞ?』

”あ、えーと、仕事の話。仕事の話ね。ちょっと真面目な話しないと怒られるな”


 赤井はハズしてしまった。


『鉱毒の対処法、教えていただけますか。私にはお手上げなんです』


 正直、聞きたいのはそこだった。

 赤井の持てる対処能力の限界を超えている。

 鉱毒におかされた民をどう癒せばよいものか。

 万能薬を完成させるにも数年はかかる。

 その間にグランダの病んだ民をどうするか……。


『ああ、それは大丈夫だよ。私は生体構築バイオコンストラクトを使えるからね。有害元素だけを生体から略取することができるのさ』

『生体構築ってまさか、生物個体を構築するってことですか!?』


 てかもうそれ、神じゃん! 

 と思ってしまった赤井(神様役)だった。


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