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血の兄弟:見捨てられた皇子たち (Blood Brothers: The Forsaken Princes)   作者: Muhammad Waqas


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第1章:裏切りの聖誕祭 奈落への追放


「深淵を生き抜くために、彼らは世界が恐れた『怪物』にならねばならない」


平和は偽りであり、協定は罠だった。


11年前、人類と魔族を滅亡の危機に追いやった5年間の大戦は、脆い『平和協定ピース・パクト』によって終結した。停戦の証として、伝説の勇者と魔王は互いの妹を妻に迎え、血を交えることで流血のない未来を築こうとした——。


しかし、協定11周年の日、影が動いた。絶対的な権力への渇望に駆られた人間皇帝ヴァルトールと、魔族の簒奪者ザロックが、同時に裏切りを仕掛けたのだ。血に染まった一夜にして、世界の生ける伝説——『測定不能アンランカブル』の勇者と魔王は、我が子の命を救うため、互いを殺し合うことを強要された。


計画は単純だった。古き伝説を葬り去り、その『穢れた』後継者たちを切り捨てること。


銀髪を持つ勇者の息子シンゾウと、角を持つ魔王の王子ケンゾウ。二人は王位を剥奪され、巨大な魔物が跋扈ばっこする古の遺跡の密林——『死のデスバレー』へと投げ落とされた。誰もが彼らの死を確信していた。伝説の血を引きながらも、二人は魔力マナを持たずに生まれた『空っぽの王子エンプティ・プリンス』であり、それぞれの種族にとっての恥さらしだったからだ。


だが、死の谷にはギルドよりも古い秘密が眠っていた。深淵の奥底で見捨てられた二人の兄弟は、自らの魔力の欠如が弱点ではなく、満たされるのを待つ『空っぽの器』であることを知る。


襲い掛かる魔物を生き延び、家族を殺した王たちを狩るために、彼らは禁忌に手を染める。


融合マージ】。

一人の人間、一人の魔族。二つの魂、そして唯一無二の凄まじき復讐心。


世界は彼らに死刑判決を下した。ならば、彼らは世界を崩壊させる**『測定不能の特異点アンランカブル・アノマリー』**として帰還する。


16年前、人間の王たちの底なき強欲により、魔族との間に大戦が勃発した。5年もの長きにわたり続いたその凄惨な戦いは、両種族を絶滅の寸前まで追い込み、ようやく『平和協定ピース・パクト』が結ばれたのである。

この危うい休戦を確かなものにするため、人類の英雄は魔王の妹を、魔王は英雄の妹を妻として迎えた。戦争が終結し、あの歴史的な協定が結ばれてから、ちょうど11年。その婚姻の翌年に産声を上げた二人の少年は、今年で10歳を迎えていた。

平和協定11周年を祝う盛大な式典の日。今年の主催は人間の領土『セントラルランド』である。王都は華やかな装飾に彩られ、魔族の使節団を迎え入れる活気に満ちていた。魔族の領土『アンブラコア』でも同様の祝祭が準備されていた。

しかし、この煌びやかな祭典の裏側では、血も凍るような陰謀が牙を剥いていた。


セントラルランドの壮麗な王宮。廊下を歩くのは、伝説の英雄エリオン、その妻で魔族の王女ザイリア、そして彼らの後ろを静かに歩く10歳の息子、シンゾウであった。

すれ違う貴族やエリート戦士たちは、冷ややかな視線で彼らを一瞥し、毒に満ちた囁きを交わす。

「あれがゼニトール家の血を引く者か?」ある貴族が嘲笑う。「両親は『測定不能アンランカブル』だというのに、あのガキには魔力マナが欠片もない。初歩的な魔法すら使えぬとは、王家の恥さらしめ」

この世界では、平民ですら微量の魔力を持つ。しかし、シンゾウと、魔族の領土にいる従兄弟のケンゾウは特異だった。彼らは「ゼロ」の状態で生まれてきたのである。

突然、人類唯一の皇帝であり、エリオンの従兄弟でもあるヴァルトールの近衛兵たちが現れた。密談の名目で一家を薄暗い謁見の間に案内した。

中に入った瞬間、鉄の扉が重い音を立てて閉ざされた。部屋は皇帝が誇る最強の兵士たちで埋め尽くされている。瞬きする間に、二人の兵士が10歳のシンゾウを拘束し、その喉元に呪われた刃を突きつけた。

「ヴァルトール! 何の真似だ!」エリオンの咆哮と共に、凄まじいオーラが部屋を震わせた。

玉座のヴァルトールは、歪んだ笑みを浮かべる。ザイリアは冷や汗を流した。目の前の兵士たちが放つ、異常な圧力に気づいたからだ。彼らはただの兵士ではない。

【世界観解説:ギルドランクと階級の格差】 この世界は、冷酷なランクシステムによって支配されている。 ・サポート部門(E, D, Cランク): 戦闘力を持たぬ平民や後方支援。 ・前線戦闘員(B, A, Sランク): 都市の守護者。Sランクは人類の至宝とされる。 ・頂点(SSSランク): Sランクとの間には絶望的な断絶がある。単独で国家を滅ぼす「歩く災厄」。この部屋の守護兵たちは皆、このランクだ。 ・測定不能アンランカブル: 英雄や魔王、そしてその直系の血族。ギルドの測定水晶ですら、その魔力に耐えきれず砕け散る。

「エリオン……貴様とあの忌々しい魔王のせいで、我ら人間は領土を分かち合う屈辱を味わった」ヴァルトールは狂気を孕んだ目で語る。「私はこの11年、準備を進めてきた。魔王を殺すための兵器をな。だがその前に、お前たち二人には消えてもらわねばならん。お前たちの死こそが、新たな戦争の幕開けとなるのだ」

「貴様のSSSランク如きで、我らに傷を負わせるつもりか」ザイリアが鋭い眼光で射抜く。

「その通りだ。奴らではお前たちを殺せぬ。だが……お前たち自身ならどうだ?」ヴァルトールは笑い声を上げた。「今すぐ互いの心臓を貫け。さもなくば、このガキの首を撥ねる。自害しろ。そうすれば、シンゾウの命だけは助けてやろう」

エリオンとザイリアは、逃げ場のない悪夢に突き落とされた。神に等しい力も、息子の命の前では無力だった。震えながら、二人は涙を流すシンゾウを見つめる。

「我が息子よ……」エリオンは最期の言葉を残した。「幸せに生きろ。復讐など忘れてな。生きてさえいればいい。我らのことは案ずるな」

次の瞬間、暴走した魔力の波動が爆発した。エリオンとザイリアは全力を解放し 互いの胸を貫いた。鈍い音と共に、二人は互いの鼓動する心臓を握り潰した。

人類最強の伝説が、自らの血の海に沈んだ。シンゾウの絶叫は、冷たい石壁に虚しく吸い込まれていった。

「魔力なしの混血児め。王家の血を汚しおって」ヴァルトールは吐き捨てる。「連れて行け。生きたまま『死のデスバレー』へ放り込め。魔物の餌にしろ」


同時刻、魔族の領土アンブラコアでも、同じ惨劇が起きていた。

魔王ザイロスと、人間の妻エリア、そして10歳の息子ケンゾウは、玉座の間で包囲されていた。首謀者はザイロスの従兄弟、ザロック。

【血統の法則】 人間は「直系」にのみ力が受け継がれるが、魔族は親族全体に力が拡散する。ゆえに、従兄弟であるザロックもまた、魔王に匹敵する『測定不能』の力を持っていた。

「人間との和平だと? 反吐が出る!」ザロックが咆哮する。「あの時、人間を根絶やしにしていれば! この人間の女が、我ら高貴な魔族の血を汚したのだ!」

ザロックの爪が、無防備なザイロスとエリアの胸を容易く貫いた。息子を人質に取られた魔王は、一切の抵抗ができなかった。

「今日から血の川が流れる! 領内の人間を一人残らず狩り尽くせ!」血に染まったザロックが叫ぶ。その憎悪に満ちた目が、ケンゾウを捉えた。「魔力すら持たぬ欠陥品め。死の谷の底で、獣に食われながら朽ち果てろ」

________________________________________

数時間後。断崖から、二人の少年 シンゾウとケンゾウが、漆黒の深淵へと投げ落とされた。

彼らは、愛する両親が無惨に殺される光景を網膜に焼き付けた。

魔力も力もない。しかし、奈落へと落ちていく彼らの瞳には、涙に代わって「絶望」を燃料とした暗黒の業火が灯っていた。それは、この世界の全て ランクも、血統も、支配者も 全てを焼き尽くすための復讐の誓いであった。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


全てを失ったシンゾウとケンゾウが、絶望の淵で見つけた禁忌の力【融合マージ】。魔力を持たぬ二人が、いかにして世界を揺るがす『測定不能の特異点』へと成長していくのか……。


二人の凄まじき復讐劇を、ぜひ最後まで見届けてください。


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