5話
俺は、気付くと深層世界に居た。
俺が創り上げた世界だというのに、人が立っていた。
「力を欲しますか?」顔を下に俯いたまま俺に問いかける。
そんなものなんか決まっている。
「ああ」
「何のために?」
「俺は……。守りたいんだ。仲間を。平和とか日常をな」
人――"少女"は、微笑みながら俺を見てから俺の身体に触れた。
「じゃあ、あげるね」
触れた途端、少女がいなくなった。
そこで、俺の意識は落ちた。
俺の身体を揺さぶってるのは、誰だろうか。
「――きてっ!」断続的で聞き取れないや。
俺は重たいまぶたを開ける事に成功した。――心配そうな表情をして俺を見つめている紗耶香。
「そうか。負けてしまったのか」
それにしても……。深層世界で力を貰った気がするような。
「それでも。刀祢が生きていてよかった」と紗耶香が安堵の息をついた。
俺は立ち上がり、仕事を再開しようとするが止められる。
「今日はおしまいでいいわ」と言って消えた。
完全に紗耶香の気配が消えた後に、地面に寝転んだ。
「あはは。帰れないわ」乾いた笑い声に響いた。
「刀祢、大丈夫……じゃないね」俺の愛刀である霧夜が人間の姿になって、治癒魔法を掛けてくれた。
「ありがとう」俺は立ち上がろうとするが、よろめく。
「もう、仕方がないんだから」と言いながら霧夜は俺の事を抱えて元の世界に帰ろうとする。
「すまない。それにしてもこうやられるのは久しぶりだなあ」その後に俺は力なく笑った。
「そうね。身体に負担かかっちゃったらごめんね」
俺の身体を労わってくれているのかゆっくりと次元路を歩いてくれている。
身体が限界に達したのかは分からないが、俺の意識はそこで途切れた。