9話
お待たせしました!!
よいお年をお迎えください。
清く澄んだ青空と爽やかな風を感じられる屋上に俺は来たが、先客がいるみたいだ。
「貴方も来たのね」風のように透き通る声がした。
「うっ、お久しぶりです先輩」
「あら、あからさまな嫌がり方なのね。――刀祢くんはそんなに私の事が嫌いなの?」
「苦手ってだけですよ。第一その原因を作ったのは朱梨先輩じゃないですか……」
「あらそうだったかしら?」
「忘れたとは言わせませんよ。――貴女と組んだ時の事を」
数年前、俺は朱梨先輩と組んだ事があった。その時の潜入時に朱梨先輩が俺に女装をするように強要してきたのだ。
「ええ、勿論覚えているわよ。でもあれじゃ仕方がなかったでしょ?」
「くっ……。でもだからって女装をしなくても良かったはずです」
「半分以上は私欲かしら。またやる?」朱梨先輩は魅了するような微笑みを浮かべた。
「いえ、遠慮しておきます。それに昔の俺とは違いますから」
俺は、右手に火焔球を出現させて投げた。
そして火焔球は朱梨先輩にぶつかって爆発した。
「刀祢くんの焔は暖かくて優しいのね。もしかして火力制御しちゃった?」
「煩いですよ、朱梨先輩」虚空から短刀――紫雨を出し、切っ先を先輩に向けて放った。
「……さすが、ね。でもそれだと私は倒せないわ」先輩は片手だけを俺に向けていて気付けば俺は吹き飛ばされていた。
やっぱり紫雨だけじゃダメか。こんなことならしなきゃよかった。
「動きが悪くなったわね。前より少し弱くなったんじゃない?」
「たしかにそうかもしれないな」実際にこの数年で俺は弱くなった。
「私と一緒に来なさい」なんの脈拍もなく朱梨先輩はそう持ち出した。
「俺がですか? 無理ですよ今の俺じゃ役に立ちませんから」
「ふふ。今の貴方だからこそよ」いつの間に俺の後ろに来たのだろうか。気づけば後ろから抱きしめられていた。
抱きしめられるということは当然密着してるわけで、朱梨先輩の膨らんでいて柔らかいものが背中に当たっていることを感じる。
「朱梨先輩っ!」
「何のことかしら?」この、確信犯め……。
「分かりましたよ、組めばいいんでしょ! ていうか離れてください」
「むっ……。まあいいわ」数秒悩んで俺を離してくれた。