禁断症状
地震のせいでエレベーター内に閉じ込められた。
向かい側には若い女がうずくまるように座り込んでいる。
俺はヘビースモーカーなので、一本だけ吸ってもいいか? と声をかけたら、
私はあの煙と臭いが大嫌いです、と拒否された。ちくしょう。
ああ、どうにも吸いたくてたまらない。
だが相手はこちらの方を、血走ったかのような鋭い目つきでずっと睨み続けている。
一体いつまで我慢すればいいのか。
駄目だもう我慢の限界だ! 相手の女が何を言おうと知ったことか。
俺はライターに火をつけ、むさぼるようにタバコの煙を吸い込んだ。ああ美味い。
天にも昇る心地とはまさにこのことだと実感した。
……たちまち全部吸いつくしてしまった。もう残っていない。
次に吸えるのは一体いつになるのか。
早く救助隊員が来てほしい。
(本文終わり。解説は下↓)
※解説
一番目と三番目は「俺」の、二番目と四番目は若い女の言葉。
「俺」が吸いたかったのはタバコ、女が吸いたかったのは「俺」(と救助隊員)の血。
つまり、女は吸血鬼。
そして「俺」の最後の台詞「天にも昇る心地――」とは、正にその言葉通りの意味。
自分の体内の血液を「全部吸いつくして(吸いつくされて)」「もう(一滴も)残っていない」状態にされたら、そりゃあそうなるわなー、というお話。
〈END〉




