運命の一冊、開いてみまshow!
インタビュアー「今日はよろしくお願いします」
冒険者A「よろしくな」
インタビュアー「あなたにとって冒険者になることを決めた運命の一冊があるというお話を聞きました。今日はそのお話を伺いたいのですが」
冒険者A「ああ」
インタビュアー「あなたのようなすごい冒険者になりたいという新人のみなさんがどんな本なのか気になっているようです。あなたは駆け出しの人たちにとっては神様みたいな存在ですからね。そんなすごい人が読んでいた本ですから参考にしたいという声が沢山届いているんです。よろしければ、タイトルを教えていただけますか?」
冒険者A「タイトル、か……」
インタビュアー「もしかして、タイトルを覚えていらっしゃらないんですか。もしかして、あまりに子どもの頃に読んだから、ですか?」
冒険者A「うーん」
インタビュアー「あ、もしかして、ど忘れですか? ゆっくり思い出していただいて構いませんよ。Aさんが冒険者になるきっかけになった本なんですから、時間が掛かっても聞かせていただけるとありがたいです。話していたら思い出すかもしれませんよね」
冒険者A「そうだなあ」
インタビュアー「もしかして、顔に似合わず絵本とかだったりします? でも、子どもの頃に読んだ冒険の絵本とかわくわくしますよね」
冒険者A「いや、そうじゃなくてだな」
インタビュアー「あ、難しい本でタイトルまで覚えていないとかですか?」
冒険者A「違う違う。そういうのじゃないんだ」
インタビュアー「え、じゃあ、どういうのですか?」
冒険者A「その本はもう無いんだよ」
インタビュアー「無い?」
冒険者A「その代わりに似たようなヤツを持ってきたんだ」
インタビュアー「似たような? 内容が、ですか? 見せてもらってもいいですか?」
冒険者A「おう。ちょっと待ってな」
インタビュアー「楽しみですねー」
冒険者A「これだよ」
インタビュアー「開いてみてもいいですか?」
冒険者A「もちろん!」
インタビュアー「では、さっそく中を……」
冒険者A「気を付けろよ」
インタビュアー「気を付ける? なにをです? って! う、うわーーーーーー! あの! これ! 噛み付いてきたんですけどーーーーー! なんで本に牙がっ!?」
冒険者A「いやー、懐かしいなぁ」
インタビュアー「痛っ! いたたたたた! なんですか、これ! えっ!? ページ開いたら口って!! ちょ、し、死ぬっ! 痛いって!!」
冒険者A「俺も初めてそいつに出会ったときはそんな感じだったなぁ」
インタビュアー「えっ、ちょっ! なにをひたってるんですか!? た、助けてっ! 取って! 取ってくださいーーーーーー!」
冒険者A「お、そうだな。おらっ、離れろ」
インタビュアー「はあっ。はあっ。びっくりした……。な、なんですかそれはーーーーーー!」
冒険者A「なにって、運命の一冊だろ? こらこら、じっとしてろって。よーしよーし。俺があの日に出会ったのも、こいつみたいな本型のモンスターだったんだ。世界にはこんなヤツがいるかと思うとワクワクするだろ? 本棚からこんなのが出てくるんだぜ?」
インタビュアー「……」
冒険者A「俺はこういうわくわくに出会いたくて冒険者になったんだ。死にそうにもなるけどな。最初に出会った本型モンスターは子どもながらになんとかがんばって倒したんだ。だから、もうこの世には無くってな。火事場の馬鹿力ってすごいよなー。こんなの今の俺には子どもの遊び相手みたいなもんだけどよ。あの頃の俺には強敵に見えたもんよ。本当に懐かしいなぁ。あっはっは」
インタビュアー「は、はははははは……。って、運命の一冊ってそういうことじゃありませーーーーーん!」