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第4章 月光の剣⑤

第五部「夜明けの予感」


水面から白い光が立ち上り、シルバーマウントの町を包んでいた闇が薄れていく。神殿を覆っていた結界も、まるでガラスが砕けるように音を立てて消えていった。


「あれを見て!」


館の窓辺に立つグレイが声を上げる。湖の中心から、二つの人影が浮かび上がってくる。アカネとユイの手に、銀色に輝く剣が握られていた。


「やり遂げたのね」イリスが安堵の表情を浮かべる。


町の人々が次々と目を覚まし、窓辺に集まってくる。七つの家の水晶が、まるで喜びを表すかのように瞬いている。


「無事だったの?」織物屋の少女が、アカネたちの元へ駆け寄る。


アカネは頷いた。だが、その表情には深い物思いが浮かんでいる。湖底で見た光景、そして巫女たちの言葉が、まだ心に重く残っている。


「どうしたの?」イリスが近寄ってきた。


「巫女たちに...会いました」アカネが静かに語り始める。「百年前の、七人の巫女たちに」


室内が静まり返る。


「そうだったのか」ドリアンが古い巻物を広げる。「かつての記録にある通り、月鏡の湖には彼女たちの想いが残されていたのだな」


「でも」アカネは月光の剣を見つめる。「これは、まだ始まりに過ぎないんです。巫女たちが言っていました。光の道は、まだ遠いって」


「ああ」グレイが窓の外を見やる。「敵はまだ去っていない。シャドウの気配が、町の外に集まっている」


「次は何処へ?」ユイがイリスに問いかける。「この剣は、三つの神器の一つ。まだ、二つ残っている」


イリスは古い地図を広げた。その上に、不思議な印が浮かび上がる。


「西の果て、"真なる世界樹"。そして東の谷、"宵闇の宝玉"」彼女が二つの場所を指さす。「どちらも、危険な場所よ」


「世界樹か...」ドリアンが呟く。「エルフたちの古い遺跡がある場所だ。だが今は、魔物の巣窟と化している」


「宵闇の谷も同じね」イリスが付け加える。「かつて精霊たちが住んでいた聖地。でも今は...」


「決めました」アカネが前に出る。「世界樹へ向かいます」


「アカネ...」ユイが親友の顔を見つめる。


「あそこなら、きっと...」アカネは月光の剣を掲げる。「この剣の力を、もっと理解できるはず」


その時、突然の風が吹き抜け、窓の外に黒い影が現れる。


「おまえたちの旅は、ここまでだ」シャドウの声が響く。


全員が身構える中、シャドウは続ける。


「月光の剣は手に入れた。だがそれがどれほどの意味を持つか...」彼の目が鋭く光る。「世界樹で待っている。その時、お前たちの光が何の価値も持たないことを教えてやろう」


影が消え、声だけが残る。


「闇の深さを、思い知るがいい」


緊張が解けた部屋に、七つの家の人々が集まってくる。


「私たちにできることは、全てさせていただきます」織物屋の老婆が進み出る。「これからの旅路の加護を」


「ありがとうございます」アカネが深々と頭を下げる。「皆さんの想いは、必ず...」


「行くのね」イリスがアカネとユイを見つめる。「気をつけて。西の地は、シャドウの影響が強い。特に世界樹の周りは」


「でも、大丈夫」アカネは月光の剣を胸に抱く。「この剣が教えてくれたんです。光は影を生み、影は光を映す。その両方を受け入れることで、初めて見える景色があるって」


ユイもまた、強い決意を秘めた表情でアカネを見つめていた。


「準備を整えましょう」グレイが言う。「明日の夜明けと共に、出発だ」


窓の外で朝日が昇り始めていた。それは新たな旅立ちの予感と共に、シルバーマウントの町を、そっと照らし始めていた。


[第五部 完]


[第四章 完]

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