lal(ラル)第7話:幽霊の線引き(前編)
第7話:幽霊の線引き(前編)
ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
病室に良くあるピッピッと鳴る機械の音がが静寂のこの部屋に響く。
なぎさは未だに目を覚まさない。真っ白なベッドに身を包み、ゆっくりと呼吸をする。その寝姿には安らぎすら感じた。あんなに血だらけだったのに今は手術のお陰で少しはまともになった。
ガラララ…
扉を開ける音が聞こえる。
「なぎさ…」
この病室にそう呟き入ってきたのは陸斗だった。皆は覚えてるだろうか…なぎさの過去を。なぎさは一応彼氏である陸斗の手術代を払うためにラルの隊員として危険な怪物と戦っている。
陸斗はなぎさのベッドまで行き近くの椅子に座る。
「僕が…しっかりしていれば…なぎさはこんな危険な仕事をせずに済むのに…」
「僕が…弱くなければ…!僕が…!僕がぁ!」
「………」
陸斗は黙り込んだ。
だが、
「………なんで」
「なんで…」
「なんで…!シフトギアが現れないんぅだよぉ!」
「シフトギアは精神の現れ!何か覚悟を決めたら発現する!………そーゆーもんじゃあないのかよぉ…!」
陸斗はただ、自分の無力さに咽び泣く。
「僕は………なぎさを幸せにしなくちゃあならない。だから!」
「力がっ!欲しいッ!」
その時どこからものなく謎の声が聞こえだした。
”欲しいのかい…チカラ?”
若干ノイズの走った機械のような声が周囲に響く。
「誰だ…」
陸斗は立ち上がり辺りを見回す。
”そうだな……ワタシの名前は『HR-1(エイチアールワン)』…とでも言おうかな。別に覚えなくてもいいけどね。”
”それと…探してもムダだよ。私はどこにでもいて、どこにも居ない。そーゆー存在。”
”………”
”さて本題に戻ろうか。キミはさっきチカラが欲しいと言っただろう。だからワタシはキミにチカラをあげようと言うんだ。”
「ほ…本当なのか?」
”モチロン。ただ条件がある。”
陸斗は息をのみHR1の言葉を待ちわびる。
”その条件は…”
”蜍?寉繧呈カ医☆莠九□縲”
………!?
当然驚いた。何故力をくれる条件がそんな事なのかと。
だが断る理由は無い。
「わかった。それで僕に力をくれるのなら…やってみせる…!」
陸斗は覚悟を決めた。なぎさを守る為に自分が戦うと。心から決めた。
”だが。それを実行するに当たって、蜍?寉縺ォ繝舌Ξ縺ヲ縺ッ縺?¢縺ェ縺??
”そこの所は、ワタシがどうにかしよう。”
”………”
”さぁ...ユクんだキミの目的を果たすために。”
そこから数日後リナとカイ、岬に千弦は無事完治したのだが、未だになぎさは目を覚まさず、蘇芳もベッドで眠っている。
「はぁ…」
ため息をついたのは1番最初に回復したリナだった。人々が落ち着いてきる夜中、缶ジュース片手にラル本部にある休憩スペースで休んでいる。
「なぎさと蘇芳さん、まだ目、覚まさないって…」
リナは隣に座っているカイにそう呟いた。
「確か…寝たっきりだったんだっけ?」
カイも気の抜けた声色で呟いた。
「うん。だから私の治癒能力で治そうとしたんだけど…医者いわく、私の治癒は回復自体はするものの肉体的負荷が掛かって危ないらしいの……」
「………でも...私………今まで沢山の人治療してきたよ……だからっ…その人達…今頃大丈夫…かな…?」
カイはしばらく考えた後、口を開く。
「そーは言うがお前が治療したおかげで助かった命もある…!だから…気にするな。お前らしくない。」
「そうかな?………そうかも………そうだね………!」
カイの言葉にリナな笑顔を取り戻す。命を救えただけマシだと。世の中には救えるはずの命が救えない時だってある。だからリナは決意を固めた。
リナは1呼吸おいて缶ジュースを飲み始める。その時カイが何かを思い出した
「あっ…そういえばなぎさの彼氏の…リクトだったかぁ?あいつ1回なぎさの元に来たけどそれっきりだな…」
「まぁ……なぎさがあんな事になってるんだからそーとー思い詰めてるんでしょ…」
「そうだといいんだがな………」
含みのある言い方にリナは疑問を抱く。
「ん?どーゆー事?」
「いや…なっ…あいつが帰る時の顔に違和感を感じたんだ。あの時の顔は明らかに心配でお見舞いに来た時の顔じゃあないんだ。」
「あの時の顔は………絶望と希望の感情が入り交じった、どす黒い顔をしていた…!」
「どす黒い顔…?」
その時、深夜にも関わらず辺りからサイレンが鳴り響く。
”リゲイン出現!”
”リゲイン出現!”
”北方向にリゲイン確認!”
”既に被害甚大!直ぐに出動してください!”
「行ってくる!リナはここで待っててくれ。」
カイは立ち上がり缶ジュースを一気に飲み干した。
「え?私も行くよ!」
「ダメだ。リナはここで待ってろ。それに身体だって回復したばっかだろぉ」
「それを言うならカイだってそーだよ!てか私はただ気絶してただけだし!カイの方がボロボロだったじゃん!」
その言葉にカイは一瞬考える。
「そうか?………そうかも………そうだな………!」
「まぁ良い!一緒に行くぞ!」
「うん!」
そして2人は無線で出動を知らせた後現場へと向かい出す。
「今向かってる所って北の方角だったよね。あそこにはどこの部隊の人達が住んでるの?」
「えーと…確か、第8部隊と第11部隊の人らだったかな?」
2人は1つのバイクで現場に向かいながらも会話をしていた。カイはリナの質問に少し眉をひそめながら答える。
「第8部隊は変なヤツらしか居ないから気をつけろぉ。それと第11部隊はッ…」
カイは何かを思い出したのか突如会話を止めた。その直後リナに今何時かを聞く。
「リナ!今何時だ?」
「えっ!あっ!えーと…」
袖をまくり腕時計で時間を確認する。
「9時半だよ!」
リナは大きめの声でカイに伝えた。
「クソッ!マズったなぁ!」
リナは状況が理解出来ず困惑する。
「どーゆー事?」
「多分現場には『ゴーストライン』っつー部隊の人間がいる。」
「ゴースト…ライン…?」
「あぁ、ヤツらは夜9時から朝5時の間に現れたリゲインを殲滅する夜間限定の特殊部隊なんだ………クソっ!しばらく深夜に戦闘が無かったから完全に忘れていたっ!」
「それで…その…ゴーストラインがいる事の何が悪いの?」
「ただ単純に夜間戦闘が得意という訳では無い!ヤツらは!」
「凶悪犯罪者だ!」
目を丸くしリナは驚く。
「犯罪者ぁ!?」
「そうだ…正式には終身刑のはずだった連中を、戦力不足やとても強力なシフトギアを持ってるだとかで無理やり戦場に引きずり出してる。条件付き釈放ってヤツだな。」
カイの声にはいつになく重みがあった。
「それ、色々と大丈夫なの?」
リナは不安そうにカイの背中にしがみつきながら問いかけた。
「いや、危ないな。正直な話味方のフリして何するかわからねぇ。けど…」
バイクがカーブを曲がり、目的地が近づいてきた。
「何故だかリゲインは倒してくれる。」
その言葉の直後、遠くで爆発音が響いた。赤く光る煙と、砕けた瓦礫の音。現場はすでに修羅場となっていた。
「うわっ…すご…!」
2人はバイクから降りた。リナが目の前の光景に息を呑んだ時、前方の建物の影から、猫背の人影が現れた。
黒ずくめのスーツを身にまとい、顔を赤と黒が混色していてカマキリがモチーフのような仮面で隠している。
「その仮面は…確か…楼火だな…?」
カイが低く呟くと、人影はこちらに気付きゆっくりと2人に顔を向けた。
「むぅ?初めまして…かなぁ…?君達はぁ…確か…えぇぇと…」
ゆっくりだが妙に明るい声に2人は緊張を身にまとう。
「第四部隊所属のカイとリナだ。」
警戒しながらも、自分の部隊と名前を告げる。
「そうかそうか。カイとリナね。よろしく。」
楼火と呼ばれた彼は猫背でにじり寄るように歩きながら、ひときわ柔らかな笑みを仮面越しに浮かべているかのようだった。
「あまり近付くな。」
カイが手を伸ばし静止させようとする。
「む。ごめんごめん。お近付きの挨拶として握手をしようと思ったのだがね。ちぃと怖がらせちゃったかな?」
「それよりリゲインとの戦闘はどうなってる?」
楼火は肩をすくめるように首を傾げ、黒い仮面の奥で目を細めたような気配を見せた。
「リゲイン?……あぁいたよ。ここに居た数は…確か……んー、七体?いや八体だったかなぁ……ま、どっちでもいいか。」
「で、倒したのか?」
カイの声が一層鋭さを帯びる。
楼火は両手をひょいと上げた。まるで、そんなことは当然だ、とでも言いたげに軽く笑った。
「でも…奥の方はまだ何体か残ってるよぉ…それにリーダーリゲインもまだ出てきてないしね…」
「けどぉ…君達はそこで見てるといいよ。僕達に巻き込まれちゃうからね。」
そう言葉を残した楼火は背中をこちらに向け奥へと歩き出す。
そして赤い煙が舞う空を眺め、
「スモークパレード…」
と、呟くと楼火はさらに猫背になり、背骨から黒ずんだパイプのようなものが何本も生えて来た。
「あれが…楼火のシフトギア…」
離れた所からカイとリナは息を飲み込み、眺めている。パイプからは赤煙がゆっくりと漏れ出し、まるで生き物のように空中を漂い始める。
それはやがてねっとりとした靄となって地面を這い、建物の隙間や割れ目に吸い込まれていく。そして…
「……来たかぁ」
楼火がぴたりと立ち止まると廃ビルの瓦礫を突き破って一体のリゲインが姿を現した。
獣のような四肢に通常のリゲインとは違う異形の顔をしている。それを見ても、楼火はまるで友人にでも会ったかのような穏やかな声で笑う。
「む。パレードのお客さんだねぇ。嬉しいなあ。……でも、開幕前に舞台に立つのはちょっとルール違反じゃないかな?」
そう呟いた次の瞬間、楼火の背から伸びた黒いパイプが…
ゴオオオオッ……
爆音と共に、先端から炎を孕んだ濃煙が噴き上がる。それは煙というより、圧縮された灼熱のガス。視界を奪い、皮膚を焼く黒いブレスのようだった。
リゲインが呻くように身をよじり視界の中で形が崩れていく。
「ははっ…踊ろうよ!君も、僕も、みーんな一緒にぃ!」
楼火の動きが一変する。猫背だった身体がバネのように跳ね上がり、黒煙のカーテンをすり抜けるようにしてリゲインに肉薄する。
そして仮面の口がにぃ…と大きく裂けたように笑った気がした。
「第一楽章…開幕の嘘火!」
楼火の叫びと同時に、リゲインの身体が煙と共に爆ぜた。
「こわぁぁぁ…」
遠くから見ているリナがドン引きしながらそう呟いた。
「むぅぅぅ…?なんだいお客さん?」
リナから10メートル以上離れてるはずなのに言葉を聞き取った楼火は聞き返してきた。
「いやっ!なんでもないっ!」
裏返った声でリナは楼火に言葉を返す。
「………む…そうだ…あっちの方角でまだ戦ってる人達が居るから挨拶してきはどうだい?」
「今後…会う事があるかもしれないからねぇ…」
楼火の含みのある言い方にカイは少し怪訝な表情をしながらも頷き、2人は歩き出した。
少しだけ歩いて着いた場所は荒れていた。楼火の仕業なのか辺りは瓦礫と砂煙にまみれ、ところどころに焦げた匂いが漂っていた。
建物の陰から、バキィンッという激しい金属音が響く。
「……いた。」
カイが目を細めた先で、黒服を纏った少年のような…少女のような…子どもが尻尾を巧みに使いリゲインと交戦していた。
「あれが楼火と同じ、凶悪犯罪者…?…まだ子どもじゃん…」
リナが低く呟く。
その時だった。
「ヤァ!キミ達はだーれ?」
突如遠くで戦っていたはずの子供が空から降りてきた。
猿モチーフのような仮面を付けているこの子は、可愛らしいお団子ヘアーをしており、低身長で声も幼い。
その様はどこか、千弦の無邪気さを彷彿とさせる。
そして、かれのッ_
かのじょッ_
...
この子のシフトギアは『レッド・テール』
と言い尾てい骨辺りに機械チックな尻尾をはやす事が出来る。その尻尾は伸び縮みが可能であり第3の手として運用が可能。また先っぽに毒針があり指すことができる。
そしてこの子は2人に自分の名前を伝えようとする。
「あっ!僕から教えるのがフツーだよね!」
「僕は、ユン!…ユンって言うんだ!よろしく!」
ユンはそう言いながら手を差し伸べて来た。
カイはその純粋で無邪気な振る舞いに先程の楼火と違い握手に応じた。
「俺は…カイだ。よろしく。」
カイが手を伸ばし、ユンの小さな手を軽く握った。その瞬間、カイは背筋にひやりと冷たいものが走るのを感じた。この子の手は暖かい。確かに暖かい。幼子特有の温もりを感じるのだが、どこか冷たさも感じる。
ユンは仮面の中で、にぱっと無邪気に笑ったあとリナにも顔を向けた。
「お姉ちゃんはぁ?握手してくれるぅ?」
「え、ええ……私も……」
リナが戸惑う間に、ユンはぴょん、と一歩踏み出した。
「ん」
手を差し伸ばしてきたユンに対してリナはそっと手を握る。その時、リナも感じた。暖かさの中にある冷たさを。
「わ…私はリナ。よろしくね…」
「うん!よろしく!」
「あれ?キミ達もしかしてシフトギアの力持ってるの?」
「え!う…うん。そうだよ。」
「やっぱり!てことわぁ…さっき、カンセーカンが言ってたゾーエン(増援)ってキミ達の事なのか!」
「多分…そうだと…思う…よ」
リナはたどたどしい返事をする。
「なら!一緒に戦お!」
ユンは嬉しそうに手をぱんっと叩いた。
「うん。」
リナは戸惑いながらも頷いた。無邪気なユンの声色に、妙な警戒心も一瞬、和らいでしまった。
「じゃあ!あっちでまだぁ…ジンエー(仁瑛)って言う男の人とぉ…ハリ(玻璃)って言う女の人がリゲインとドンパチやってるから行こ!」
ユンはくるりと身を翻し、瓦礫の向こうへと駆け出していく。リナとカイは顔を見合わせ、慌ててその後を追った。
そして。
瓦礫を越えた先に広がる戦場で二人はすぐに目を奪われた。
先程までの荒れた街並みとは打って変わってとても…静かで綺麗だった。異様なまでに。
遠くを見ると玻璃と思われる人物が戦ってるのは見えた。2人は目を凝らし戦闘の様子を見る。彼女もまた仮面をつけており、見た目は全体的に白いが縁が赤い狐モチーフの仮面だ。
「あれがハリね!まずは、よく見といて!」
ユンが2人に説明する。
「ハリのシフトギアは『ピアッサー』って言ってね。」
「両手の指全部をぉ注射器みたいな物に変える事が出来るんだ。」
「それでね。その注射器の効果はそれぞれ違ってね。純粋に細胞を破壊する毒液だったり、脳を活性化させる液体だったりするの。」
二人はユンの説明を聞きながら玻璃の戦闘を見る。
玻璃は機敏に動き避けながら体格の良いリゲインに接近し、左手の人差し指の針を刺し液体を注入し蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたリゲインは毒にもがき苦しむ。刺された場所である胸が毒々しい紫色に変色し徐々に萎縮し始め、ピクピクと全身痙攣をおこす。
そのままリゲインは体を震わしながらその場に留まる。
だが他のリゲインらはそれを気にせず玻璃に攻撃を仕掛ける。その中赤いリゲインが後ろから飛び掛ろうとしたその時。
痙攣していたリゲインが赤いリゲイン目掛けて凄まじい勢いで飛びかかる。
虚を突かれた赤いリゲインは抵抗する間もなく味方のはずのリゲインに押し倒され、鋭い爪で胸元を引き裂かれる。紫の毒が混じった体液が飛び散る。
「洗脳でもしてるの?」
リナが質問する。
「あれわね、相手を毒で犯し一時的に脳を混乱させ敵味方を区別出来なくしてるんだよ!」
ユンが口元に手を添えて笑う。
玻璃は次の目標に目を向け動き出す。走りかかってくる相手に対して跳躍し、空中で一回転すると今度は右手の中指を突き立てる。針が鋭くリゲインの首筋に刺さり、青白い液体が注入された。
刺されたリゲインは数秒の沈黙ののち、目を見開き全身をビクリと震わせる。脳を無理やり活性化されたのだ。だが処理しきれない情報が神経を焼き、目からは血が滲み出す。
「今度わね。脳を活性化させる液体を入れたんだけど、限度を超えちゃうと脳が壊れちゃうんだ。」
静かな戦場。静寂の中に、破壊と毒と混乱がじわじわと広がっていく。
玻璃は仮面の下で何を思うか。計10種の液を使い、再び音もなく次の敵へとにじり寄っていた。
「ところで…もう1人の…仁瑛...さんって人はどこにいるの?」
「ん?………ジンエーならそこにいるじゃん…!」
ユンはそう言いながら指を差した。
だがそこには何も無く。ただの暗闇だった。だが真っ暗で何も見えないわけじゃあないッ。本当に何もないッ。物体もッ何もッ無い…。ただの…影だ。いや...
『影』はある………『影』がッ…あるッ!
上手く表せないが言葉にするのなら…
『見る影も無い。』これが今の状況にベストでジャストだろう………
ユンが指を指した場所には影がある。とても黒く禍々しい影が。
その時その影が動き出した。
「え!なんか動いてない!?」
リナが取り乱す。
影は段々と大きくなり盛り上がってきた。
その影は徐々に人影へとなって行き。1人の男が現れた。
「…」
その男にも仮面はついていた。
滑らかな黒の鉄面に丸い二重の目穴で中央には小さな嘴の突起がある、おそらく烏モチーフだ。
彼はジッとこちらを見つめている。黒い仮面の目穴からは真っ赤な瞳が輝く。
そしてカイは以前にも増して緊張感を身に纏っており、ゆっくりと、慎重に、口を開く。
「あんたが…仁瑛...だな。俺はカイでこいつがリナだ…」
仁瑛は返事もせずじっとコチラを赤い瞳で見つめる。
「………それで…俺らは増援として来た。だから_」
その時仁瑛がカイの言葉を遮った。
「名前だけで十分だ。お前らの事はここで観察していた。」
低く感情の籠っていない声で仁瑛は喋る。
「カイ。お前は、いくつもの修羅場を乗り越えて来た。そう見えるが合ってるか?」
「...ッ!………あぁ自分でも…そう思ってる……」
カイが驚きと共に返事をすると仁瑛は一歩、影の中から出るように前へ踏み出す。
「カイは一緒に戦う事を許可しよう。だがリナはダメだ。お前はここでユンの子守りでもしてろ。」
その言葉にリナはムッとし、ユンも仮面のしたでしかめっ面をする。
「わ…私だって戦えるし!」
リナは反論するが仁瑛は聞く耳を持たない。
「………カイ。まずは玻璃と合流だ。」
リナは無視を決め込んだ仁瑛を呼び止めようとする。
「まっ…待って_」
その時ユンがリナの目の前に飛び出し静止させる。
「ムダだよお姉ちゃん。ジンエーは自分の信念を曲げるつもりわないんだよ。」
それに納得したのかどうかは分からないが
、リナは仁瑛の事を諦めた様子だった。
そしてカイは仁瑛の後について行く。
二人は何も話す事も無く、黙々と歩いてた。
「………」
カイは仁瑛のただならぬオーラ…もとい立ち振る舞いに少し気圧される。
するとさっきまで黙っていた仁瑛が口を開く。
「なんだ?カイ…」
当然カイはなんの事か分からず首を傾げる。
「何か言いたい事があるんじゃないのか…」
さっきから自分の事を見透かされている事に疑問を抱く。
「………あぁ…そうだ…」
「…所でなんで分かったんだ…?」
それに仁瑛は、
「………勘だ」
と、適当な事を言う。
その返しに眉をひそめながらも質問をしようとしたカイだが、突如仁瑛が何かを見つける。
「む。リーダーリゲインを見つけた。先にアイツを叩こう。」
カイも黒闇の中、目を凝らし遠くを眺める。
「何故こんな所に…」
カイは疑問を抱くが仁瑛は気にもせず、歩きながらシフトギアを発動させる。
「SOS」
そう呟くと仁瑛の手足はどす黒い色に染まり獣を彷彿とさせる鋭い爪の付いた義肢ユニットに変化する。
そして仁瑛はある程度リゲインに近付いた時、月光の当たらない完全な影の中へと沈んでいった。
まるで水の中へと潜るかの様に軽々と。
仁瑛のシフトギアはただ四肢を変えるだけでは無い。本当の能力は『影の中に潜る。』これなのだ。
話を戻して仁瑛の姿は、まるで墨のように黒く、地面の影へと溶けて消えていた。
「……消えた……!」
カイは息を呑むがすぐに自身のシフトギア『ファイアブレイザー』を発動しリゲインに備える。
リゲインは金属を軋ませながらゆっくりと歩いてくる。
そいつはリーダーリゲインにしちゃあ巨体で背中に異様な数のアームを持ち、先端には銃口のような突起と刃が蠢いていた。
「...」
リーダーリゲインは何かを感知したかのように立ち止まり、首をかしげるように周囲を見渡した。
だが、その行動は遅かった。
ズズ……ッ!
足元の影から音も無く仁瑛が現れ、背後から一撃。
影の中から飛び上がり鋭く長い爪がリゲインの背中に突き刺さる。
ギシャアアァアアア!
と。機械的な悲鳴とともにリーダーリゲインが咄嗟に腕を振るうが、それすらも仁瑛は既に影へと戻って回避していた。
「……一撃では仕留めきれなかったか。」
仁瑛の声がどこからともなく響く。
リーダーリゲインは怒りに任せて周囲へ銃撃と刃を乱射する。だがすべて空振り。
「俺も行くか。」
カイは敵の注意が逸れている今を逃さず、真正面から突撃する。
「おらあああッ!」
飛び上がったカイの右手が点火、灼熱の火線をまとった拳が、リーダーリゲインの胸部に炸裂する。
ドォォン!!
爆風が吹き荒れ、リーダーリゲインの巨体が後方に吹き飛ぶ。
仁瑛の声が再び響く。
「やるな。カイ。」
「だろ、さっさと終わらせて_」
だがその瞬間。
リーダーリゲインの体が、異常にうねる。
「……!?」
崩れたかに見えた胴体が、数秒で再構築されていく。背中のアームがさらに増殖し、装甲も強化されている。
「再生した?……いつものリゲインと違うな…」
仁瑛が影から出て、ゆっくりと地面に現れる。
「おそらく…アトラスの実験個体だろう…」
「フゥゥ……ム……神崎の言っていたヤツか…」
彼の瞳が仮面越しに赤く、月明かりに反射して光る。
どう対処するか考えてる二人の後ろから突然女性の声が聴こえた。
「何あれぇ?リーダーリゲイン?」
カイは後ろを振り向く。そこには玻璃とユン、楼火。そして、リナの4人が歩いてくる姿があった。
「ん?あんたがカイ君?結構良い男じゃああん!」
ニヤリと笑って手を振る。
思ってたよりフランクというか…気の抜けていると言うか…
そんな彼女にカイは目を丸くする。
「カイ君を合わせると10人目になるのかぁ…あっでも…両手はもう満タンだから次は足かなぁぁぁ………」
「でもぉ…カイ君はリナちゃんの物だもんねぇ~」
不気味な事を言う玻璃にカイとリナはまたもや眉をひそめる。
「リナ。何故来た?」
リゲインを見続けながらも気配を感じ取った仁瑛は、来るなと言ったはずのリナに対して質問をした。
「確かに私は、カイに比べて弱いかもしれないけれど、それなりの『覚悟』はしているよ。」
「なら。行動で示せ。」
リナは真剣の顔付きで頷く。
どうこうしているうちに再構築されたリゲインさ復活を果たしこちらを睨みつける。
この場にやって来た四人もシフトギアを発動し戦闘態勢を取る。
こうして全員揃ったゴーストラインの不気味なメンバーに警戒しつつもリナとカイは戦いの決意を固めるのであった。
続く--
ここまで読んでくださりありがとうございます。今回ここで喋る事は2つ。1つは、この回の序盤にあった文字化け。
ちょっと怖いねあれ。詳しくはネタバレになるから言えないけど、この”lal”。言わば『記録』みたいな物なんです。記録って言われて”はぁ?”ってなるかもしれないけどこれ以上は言えない。ネタバレは良くないからね。そもそも今言った”lal”については、もっと回が進んでから言うつもりだったんだが...
さて。話を戻して文字化けの事だけど、あれは僕が意図してやったものじゃあ無い。だからこの回を投稿する寸前、毎回軽く目を通すんだけど文字化けの所見た時はちょっとゾっとしたね。
だから修正しようとしたんだ。だけど…
無理だった。
何回も何回も修正してもいつの間にか勝手に文字化けしてる。ここで僕は閃いた。天才的な考えを。
「この文字化け…伏線にしよう!」と!
よくピンチはチャンスって言うでしょ。
普通に考えて文字化けはピンチだ。読者が読めないからね。でも僕はそれを伏線にする!例えばあの文字化けを喋ったHR1の正体は幽霊である。だから人間に上手く干渉する事が出来ず言葉が文字化けした...みたいな?
………
てかこれ言ったら伏線にならないじゃん!
………
まぁいい。別に他にも色々な発想はあるからね。
でもあの文字化け。やっぱりおかしい。
そうだ。この文章を書いている時に思いついた事なんだけど、文字化けをある程度復元できるサイトを見つけたんすよね。だからあの文字化けした言葉を修繕したんだ。だけど僕が本来書いた文と全く違ったんだよ。
文字化け
「蜍?寉繧呈カ医☆莠九□縲」
↓
復元後(”?”は復元不可の文字)
「????を消す事だ?」
こうなった。僕は本来「リゲインを1体ここに連れてきてくれ。」と書いたんだよ。なのに全く違う文になっている。そしてもうひとつの文字化けは…
文字化け
「蜍?寉縺ォ繝舌Ξ縺ヲ縺ッ縺?¢縺ェ縺??」
↓
復元後
「????にバレては????な???」
こう。僕が本来書いた分は「他の誰かにバレてはいけない。」と書いた。これに関しては若干あってる気がするけど…なんか違う気がするんだよね。
………
全く分からんな。
そしてもう1つは、
息抜きとして書いてるもう1つの作品が進まない事。
一応更新頻度は遅いと書いておいたし、あまり見てる人もいない。
だけども1人でも居るのなら。最後まで書き通したい。
てことで頑張ります。:)