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ひよっこ魔導技師、金の亡者を目指す~結局一番の才能は財力だよね~  作者: 廃くじら
第二章

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第24話

魔術師ウィザードが使う【火球ファイアボール】十数発分の爆発の直撃を受け、ゴブリンヒーローの肉体がボロカスのように宙を舞う。


いや、ゴブリンヒーローだけではない。後ろの二人を狙って襲い掛かってきた他三匹のゴブリンたちも爆発の効果範囲に収まっており、全身焼け焦げ四肢は千切れ原型を留めていない。


そしてその爆発の中心にいたウルは──


「リーダーァァァァッ!!」


邪魔するゴブリンがいなくなったエレオノーレがウルに駆け寄る。


ウルはゴブリンヒーローに喉笛を切り裂かれ、頸動脈から血を流して意識はないが、不思議なことに爆発によるダメージはほとんど見られない。いや、彼だけでなく同様に爆発の効果範囲内に収まっていたエレオノーレも爆発によるダメージは皆無だった。




二人に爆発のダメージが見られない理由。

それは二人が使い捨ての属性耐性の護符アミュレットにより、瞬間的に火属性に対する完全耐性を獲得していたからだ。


モノとしては以前カナンがエレオノーレ救出の際に使用したものと同じだが、今回はギルドがスポンサーについているということで、材料費を惜しむことなく最上級の精石を素材に使用しており、性能は以前より上。


そしてこの爆発の正体はウルがその全身に大量に仕込んでいた炸裂弾──彼がその身を囮に仕掛けたトラップだ。


追い詰められたゴブリンヒーローがウルを攫おうとする可能性については予め警告されていた。安全策を採るならば、ウルは地上で留守番しておくべきだったのだ。


だがウルはその選択肢を採らなかった。

理由は二つ。一つはその場合、ウル以外の人間が狙われるリスクが高まること。そしてもう一つは、その状況こそがゴブリンヒーローを仕留める好機だから。


ゴブリンヒーローの狙いはウルたちが持つ得体の知れない魔道具の情報を抜き取ること。だとすれば、ただウルを襲うだけではなく、その所持品ごと身柄を攫わなければならない。


それはつまり、必ずウルに接近してくるということだ。


そこまで分かっていれば後は簡単。

属性耐性の護符アミュレットで身を守りつつ、ゴブリンヒーローが近づいてきたところを大量の炸裂弾による自爆で吹き飛ばす。ただそれだけの単純な罠。例えウルが殺されても死体さえ回収できれば蘇生はできるし、万一に備えてエレオノーレが控えていた。彼女の役割はウルの命を守ることではなく、彼が自爆する間もなく即死した場合、代わりに彼が隠し持つ大量の炸裂弾を起爆させること。




「リーダー! しっかりしろ!!」

「…………」


地面に倒れ伏すウルの身体を抱き起し、エレオノーレは必死の形相で呼びかける。


意識はない。呼吸は──喉が潰れて分からない。脈──頸動脈から血が溢れ続けている。これは──どっちだ!?


──パシャッ!!


エレオノーレは生死判断をすぐに諦め、預かっていた高級霊薬ハイ・ポーションをウルの首元に振りかける。流石一本金貨一〇枚の高級品と言うべきか、霊薬が傷口に触れた瞬間、白い煙と共に瞬く間に外傷が修復されていった。


「リーダー! 生きているか!?」

「…………」


しかしウルの意識は戻らず、復活した呼吸も脈も弱弱しい。

エレオノーレはもう一本、高級霊薬ハイ・ポーションの瓶を取り出すとその中身を口に含み、躊躇なく口移しでウルに飲ませた。


「────リー、ダー……?」


自分にできる処置をやり尽くし、エレオノーレは不安げな表情でウルの顔を覗き込む。


死体さえ回収できれば蘇生できるとは言われているが、それも絶対ではない。死なずに済むならそれに越したことはなかった。


「…………ぅ」

「~~っっ!」


ウルの口から漏れた微かな呻き声。

霊薬は失った血液まで即座に補填するものではなく、まだ顔は青白いが呼吸や脈はしっかりしている。峠は越えたとエレオノーレは深々と安堵の息を吐き、全身脱力した。




「──まだだ! 油断せず確実に全滅させろ!」


一方で冒険者と残されたゴブリンたちの戦闘はまだ終わっていなかった。


ゴブリンヒーローを失ってゴブリンたちは酷い混乱状態にあったが、冒険者側も予め聞いていたとは言え想像以上の爆発の威力に驚き動きが硬直。またウルやゴブリンヒーローがどうなったかに気を取られ、ゴブリンたちほどではないが混乱していた。


前線指揮を任されたフルウが檄を飛ばして場の空気をなんとか立て直す。もはや勝利自体は確定的だが、数が多く戦意を失ったゴブリンたちを逃がさないように仕留めるのは意外に骨だ。


──クソッ! 本当ならゴブリンヒーローの死体を確実に確認したいんだが……!


包囲網の穴を潰しながらフルウは内心で毒づく。

あの爆発の直撃を受け息があるとは流石に考えにくいが、相手が相手だ。出来るなら確実に止めを刺しておきたいが、その余裕がない。


本音ではエレオノーレにウルの治療など後回しにして止めを刺しに行けと叫びたかったが、流石にこの戦いの殊勲者相手にその発言はマズいことぐらい分かる。


結果、フルウはゴブリンヒーローが生きているはずがないと自分に言い聞かせ、仲間を指揮して残ったゴブリンの殲滅に意識を注いだ。



フルウの判断自体は決して間違っていなかった。


だがゴブリンヒーローの生死に気を取られ、彼だけでなくその場の全員、やや目の前のゴブリンたちに対する意識が散漫となっていたことは否定できない。



「────っ!?」


最初にそれに気づいたのはエイダだった。


「後方! 一匹死んでない!!」


その叫び声に、一瞬冒険者たちはゴブリンヒーローが生きていたのかと視線をそちらに向けるが、ゴブリンヒーローの身体はピクリとも動かず地面に横たわっていた。


「──違う! その手前!」


その声に反応して、死んだフリをしてコソコソこちらの包囲網から抜け出していたゴブリンがダッと駆けだす。しかもその先には──ゴブリンヒーローが転がっている。


──マズい!!!


フルウは大音量で仲間に指示を飛ばす。


「そいつを、止めろぉぉぉっ!!」

『──ギャヒィィ!!!』


しかしフルウの叫びに反応したのは冒険者だけではなかった。


それまで怯えて逃げ出そうとしていたのは何だったのやら。既に狂奔状態が解けた筈のゴブリンたちは、その眼に別の意思の光を宿して一斉に襲い掛かってきた。


『グギィィッ!!』

『ギィィィッ!!』


意味するところは明らか──足止めだ。


「クソッ! 邪魔じゃ! どけぃ!」

「ああもう、纏わりついてくるんじゃないよ!?」


包囲網から抜け出したそのゴブリンは、仲間たちの援護もあってゴブリンヒーローのところまで辿り着くと、その身体を担ぎ上げ任せろとでも言うかのように残る仲間に一鳴き。


『ギィィッ!!』


そしてその小さな体のどこにそれほどの力と体力が残っていたのかと驚くような速さでゴブリンヒーローを担いで走り去っていった。

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