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ひよっこ魔導技師、金の亡者を目指す~結局一番の才能は財力だよね~  作者: 廃くじら
第二章

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第23話

時は少し遡り作戦会議の終盤。

オブザーバーである犬ジイがウルに対して一つの懸念を口にした。


『作戦の大枠についちゃ異論ないが、お前さんがられるリスクについて認識してるか?』


その言葉の意味を正確に理解できた者は、この場に何人もいなかった。


『……やっぱり、仕掛けてきますかね?』

『まあ確実とは言えんが、仕掛けてくると考えた方がいいだろ。アレは追い詰めたら追い詰めただけ底力を発揮して、不可能じゃなけりゃ何でも実現する理不尽の塊だ』


犬ジイは何か嫌な思い出でもあるのか『あいつら諦めなけりゃ何でも許されると勘違いしてやがるからな』と忌々し気に吐き捨てる。


『あの……リスクってのはどういう意味ですか?』


犬ジイとウルの意味不明なやり取りに挙手して口を挟んだのはカナン。


『戦場に出る以上、殺されるリスクなんてのは今更でしょう。それを態々コイツを名指しで指摘する意味は?』

『そりゃ、コイツを殺ることがゴブリンどもにとって唯一の勝ち筋だからだよ』


犬ジイの言葉にその場にいたほぼ全員が意味が分からず顔を顰めた。例外はウルと──レーツェル。


それに反論したのは弓使いのロットだ。


『……よく分かんないっすね。その坊主が提示した作戦はムカつくことに隙が無い。加えて特別指揮が必要な内容って訳でもない。坊主一人殺したところでひっくり返せるようなモンじゃないでしょう?』

『そりゃ、その遭遇戦に限定しての話だろう』

『……?』


まだ理解が追いつかない者たちに、犬ジイはフンと鼻を鳴らして説明を続けた。


『ゴブリンの立場になって考えてみろ。おかしな道具を使われて味方がドンドン狩られていく。味方を逃がすにしても相当な被害は避けられねぇ。まだ拠点に戦力の余剰があったとしても消耗戦じゃ人間には勝てねぇし、次に備えるにしても、その道具をどうにかしなけりゃジリ貧だ』

『…………』

『じゃあ、その道具はどこから持ってきた? 誰が準備した?』


そこまで言われて幾人かの瞳に理解の光が宿る。


『この状況でピンポイントに作った人間が坊主だと割り出すのは流石に無理がある。だが、これまでゴブリンどもの前で坊主たち以外の人間がこの手の道具を使ったことはない』

『……それだけなら、私やカナン姉、レーツェルも該当するのでは?』


これから行われる討伐作戦は別として、ゴブリン相手に炸裂弾など魔道具を使用したことがあるのはウル、カナン、エイダ、レーツェル。ゴブリンヒーローが魔道具を持ち込んだのがこの四人の内の誰かだと考える可能性は確かに否定できない。


『じゃあ、その四人を並べてみた時、一番狙いやすいのは誰だ?』

『…………あ』


エイダが何かに気づいた様子で目を見開く。


『戦士、呪文遣い、斥候……坊主以外の三人にゃ目で見て分かる特徴がある。だが坊主の動きは素人臭くて戦士や斥候にゃ見えねぇし、呪文を使う様子も無けりゃそれらしい杖も持ってねぇ。精々が荷物持ちってところか』

『…………』


暗に素人くさくて頼りないと言われ、ウルはムスッと口元をへの字に歪めた。


『繰り返すが、坊主が道具の製作者ってとこまで辿り着くのは無理がある。そもそも製作者が戦場に出てくること自体が普通じゃねぇしな。だがゴブリンどもからすれば、魔道具の供給をストップできなくても、何か情報を抜いて対策を取れればそれでいいんだ。その時誰が狙い目かと言うと──』


そこまで言えば全員が犬ジイの言いたいことを理解する。


『見るからに貧弱な荷物運び。ゴブリンどもがその戦いで敗北しても、次に繋がる成果を得て敗走しようと考えるなら、坊主を殺してその荷物を死体ごと掻っ攫おうとするだろうな』


そしてその行動はゴブリンたちにとっては図らずも、冒険者側にとっての致命傷となり得る。


現状この都市にウル以外に追加で必要な魔道具を準備できる者はいない。予めウルに必要量を作らせてから作戦に移ろうにも、ゴブリンたちが魔道具を消耗させようと引き気味に行動した場合どれだけの数が必要となるか分からず、必要量を予想するのは難しい。


そしてウルが戦場で殺されただけならまだ死体を持ち帰り蘇生することも──確実ではないが──できるが、死体ごと持ち去られてしまえばもうお手上げだ。


ゴブリンヒーローが追い詰められた状況でそこまで思考を巡らせ、的確にウルを狙ってくるとは正直考えにくい。だが犬ジイは、だからこそ油断するなと後輩たちに警告を発していた。


しばしの沈黙の後、口を開いたのはロット。


『……色々小難しいこと言ってますけど、要は万一を考えろってことっすよね。その坊主が自分の身を守れねぇってんなら、今回留守番してりゃいいだけの話っしょ。作戦自体はもう聞いたし、道具の準備も済んでる。別に坊主がわざわざ現場で指揮取る必要なんてないわけだし』


敢えて気楽そうに犬ジイの警告を笑い飛ばしたロットの意見は、しかし非常に的を射たものだった。


会議室にいた者の大半は同意するように表情を緩め、犬ジイ自身も『それも一つのやり方だな』と頷いている。


『──いや、それは止めときましょう』


それに異を唱えたのは、安全な場所にいていいと言われ普段なら内心大喜びしているだろうウル本人。


『今、指摘があったのはあくまで比較的俺が狙われやすいって意味で、俺がいなけりゃ結局情報を抜くために他の人間が狙われるだけですよね? 確かに俺に比べりゃ抵抗もできるし攫われるリスクは低いかもしれませんが、アレ相手に確率の高い低いはあんま意味がない』


ウルの言葉に顔を顰めて反論したのはロット。


『いや、他の連中ならまだしもお前が攫われたら替えが効かねぇって話だろ。どのみち、お前がノコノコ戦場に顔出しても出来ることなんて何もねぇ。それとも、自分じゃなけりゃこの作戦の指揮は執れねぇとでも自惚れてやがるのか?』

『まさか。元々現場での指揮はフルウさんにお願いするつもりでしたよ』


アッサリ肩を竦めていうウルに、フルウは初耳だったのか目を丸くする。


『……俺が、か? それ自体は別に構わんが、ならなおのこと、お前が戦場に出る意味がないんじゃないか?』

『意味はありますよ』


ウルは確信に満ちた──しかしとても嫌そうな表情で繰り返した。


『意味はあります……残念ながら』


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


『ギシャァァァッ!!』


ウルたちと目があった直後、ゴブリンヒーローが再び咆哮を上げる。


それは先ほどのような狂奔を促すものではなく、鋭く明確な意思が込められていた。


『グギィィ!!』


反応したのはそのゴブリンの集団でも特に歴戦の戦士と思しき三匹。


彼らは他のゴブリンたちを上手く利用して前線を潜り抜け、後方に控えていたウルとエレオノーレに肉薄する。


「させるか!」


このために護衛として控えていたエレオノーレがウルを庇うように前に出て、槍を振るう。


ゴブリンたちは一匹がそれを受け止め、吹き飛ばされながらももう一匹が身体でエレオノーレの動きを妨害、残るもう一匹が彼女をすり抜けてウルへと接敵した。


「リーダー!?」

「大丈夫だ! 目の前の敵に集中しろ!」


ウルはガーディアンを盾役にしつつ魔導銃で応戦し、エレオノーレを安心させるように叫ぶ。


相手は多少腕は立つようだが、所詮は普通のゴブリン。一匹だけなら恐れるには値しない。問題は──


「──すまん! 見失った!」


前線でゴブリンヒーローの相手をしていたガーヴィーの声が耳に届く。


──来る!!


予感はあった。予想もしていた。


──歯を食いしばれ!


だが目の前のゴブリンを無視できないウルは、それを理解してなお自分の急所を守ることさえできなかった。


『……キヒ』


だからそれは当然の結末。


「──リーダーァァァァアッ!?」


──プシャァァァッ


音もなくウルの背後に忍び寄っていたゴブリンヒーローによってウルの喉笛は切り裂かれ、紅い鮮血が噴き出る。


エレオノーレが絶叫して割って入ろうとするが、決死のゴブリンたちに取りつかれ身動きできない。


カナンたちもゴブリンたちに足止めされそれどころではない。


警告されていた最悪の展開──


「────」


──故に、ウルの唇はニヤリと歪んだ。


『────!?』


それを見たゴブリンヒーローの脳が警告を発するより速く──


──ドグゥォォォォォォォオオオオオオン!!!


かつてないほどの爆炎と衝撃がウルの身体ごとゴブリンヒーローを包み込んだ。

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