-捌- 浄化
御霞華山を後にした私達は海斗が入院する病院へと向かった。
病院はここからそう遠くない所にあり、十分で着いた。
私達は車から降り、病院の中へ入る。
私は受付を済ませ、海斗の病室へと案内をした。
受付の看護師曰く、まだ海斗の目が覚めてないので長くは面会が出来ないらしい。本来は親族以外は面会出来ないのだが、海斗の母親の配慮により、少しの時間なら面会してもいいと許可をくれたのだ。
暫く病棟を歩いていると、海斗が眠る病室に着いた。
私はノックをして中へ入る。燐さんも私の後に続き、中へ入った。
中は完全個室で閑散としていた。
海斗の眠るベッドへ近付く。
「来たよ、海斗。今日ねぇ、海斗を助けてくれる人連れて来たんだ」
聞こえてるかも分からないのに、私は海斗に話し掛ける。例え返事が帰って来なくても、話し掛けるといいと聞いた事があるからだ。
「海斗、少し布団捲るね」
私は燐さんに例の痣を見せる為、布団を捲った。
「……痣、濃くなってる……」
痣はこの前の時よりも濃くなっており、赤黒くなっていた肌が真っ黒に変色していた。
「やはり呪いだな」
燐さんは痣の方に指を二本立てて翳す。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、前、行!」
呪文を唱え終えると、先程と同じように痣周りから光が放たれた。光は強弱しながら呪いを少しずつ浄化していく。
燐さんの額に汗が流れる。
そして浄化が終わったのか、光が少しずつ消えていった。
「これで少しはマシだろう……」
燐さんは横にある椅子に腰掛ける。
「大丈夫ですか?」
燐さんの疲れ切った様子を見て、心配になる。
「……ああ、少し休めば大丈夫だ……」
呪いの浄化は身体に負担が掛かる様で、暫く燐さんは項垂れていた。
「……呪いは下手をしたら自分に返ってくる時がある。その所為か神経を集中させ、慎重にやっていかないといけない。取り敢えず上手くいったが、完全に呪いを浄化させたいなら先ず、呪いを掛けたモノを祓うしかない」
海斗の痣は薄まっているが、まだ完全に呪いが消えた訳では無いと言う。海斗にとって少し楽になったと思うが、それでも目を覚ます程までには至らないらしい。
「取り敢えず、今日はここまでにする。噂に関してももっと情報が欲しいからな」
私は海斗の顔を見て、もう少し頑張る様伝えてから、燐さんと一緒に神社の方へと戻った。