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-陸- 御霞華山


 慌てて後を追っていると、夜神さんは玄関の所で待っていてくれてた。


「遅い」

「ごっ、ごめんなさい!」

「車で現場に向かうから案内しろ。それと、呪いの鏡で倒れたお前の幼馴染にも会わせろ。(けが)れの状態が見たい」

「穢れの状態?」

「ああ、穢れの状態次第で浄化出来るかもしれないからなぁ」

「それって、つまり海斗が目を覚ますかもしれないって事ですか?」

「目が覚めるかは分からないが、少しはマシになるだろう」


 その言葉に少し安堵する。


「あっ、それと俺の事は燐と呼べ。夜神はこの仕事で呼ばれたくねぇ」

「わっ、分かりました。えっと燐さん」


 燐さんはそう言うなり、自分の車が停めてある場所へと向かった。

 私も靴を履き、燐さんの後ろを追い掛けるのだった。

 車は神社の裏手に停めてあるのか、燐さんは神社の脇道を通って行く。


(神社の裏ってどんな感じだろう?)


 車があるのだから当然車専用の上がる道があるのだろう。

 脇道から段々(ひら)けた場所に出る。開けた先には数台停められる駐車場が現れた。

 そして、私はフッと疑問に思う。正門よりも裏門の方が広い気がすると。それに何故か、こちら側にも賽銭箱や鈴緒(すずお)がある。良く見るとおみくじ売場や御守売場まである。まるで此処が正門の本殿の様に思えてならなかった。


「あの、燐さん」

「何だ?」

「此処って、裏門ですよねぇ?」


 気になり聞いてみる。

 すると燐さんは訝しげな顔をし、答えた。


「此処は正門だぞ」

「へ?」

「お前がいつも通ってる道は裏門でこっちが正門だ。裏門は祓い屋の客専用の通り道にしてる。参拝客と祓い屋の客を区別付けるために、正門と裏門で分けてるんだよ。圭が投稿して広めている『黒猫通れば、祓い屋あり』もそういった意図があるんだよ。

 次いでに言うと、正門の階段は裏門に比べて傾斜がそんなにないから楽だぞ。後、バリアフリー完備でロープウェイもある」


 つまりあんなキツい階段を登らなくても良かったという訳なのだ。


「……それ、もっと早く言ってくださいよ」

「聞かれなかったから答えなかった、以上」


 燐さんはなんも悪びれた様子は無く、さっさと車に乗り込んだ。

 私は頬を膨らませ、燐さんを(にら)み付ける。


「おい、早く乗れ!」


 だが、何も言い返す事が出来ず、大人しく助っ席に乗り込んだ。


「で? お前等が肝試しをしたという廃校は何処だ?」

「えっと、隣町にある御霞華山(みかげやま)という所です」

「御霞華山だな。確か、五十年前に廃校になった学校があったな」

「知ってるんですか?」

「一応、本職は教師だからな。耳にはした事ある」


 教師とは意外だ。祓い屋が本業だと思っていた。


「……教師」

「何だ?」

「あっ、いえ、何でもないです」


 私は誤魔化す為、目を逸らした。

 正直、教師がこんな見た目でいいのだろうか。耳にいくつものピアスが開けられているし、爪にも黒のネイルがされていて、到底教師をしているとは思えない。

 だが、それを口にしてしまったらどうなるか分からなかったので敢えて言わなかった。

 そんなこんなで車は発進し、目的地である御霞華山へと向かった。

 私は助っ席の窓から流れる景色を淡々と眺める。

 段々見覚えのある道へと変わっていく。

 目的地である御霞華山に着き、近くの坂を登って行く。私達の時は自転車でこの坂を登ったが、車だと坂も楽々に進む。

 そして、廃校となる場所へと着いたのだった。



「此処か……」


 車は少し開けた場所に停まる。

 私と燐さんは車から降り、校門の前へと立つ。

 昼間でも薄暗く不気味だ。


「入る前に一つ忠告するぞ。廃校だからと許可も無く勝手に入ったりしたら不法侵入になるからな。気を付けろ。

 ちなみに今回はちゃんと許可貰ってるから安心しろ」

「……それ、警察にも言われ、こっ酷く怒られました。今度からは気を付けます」


 あの時、警察の人達も来て、私とみゆきはめちゃくちゃ怒られたのだ。あまつさえ、親にまで怒られ、大変だった。


「まぁ、いい。取り敢えず入るぞ」


 私と燐さんは校門を抜け、校舎の中へと入った。


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