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青春物語  作者: 髙林 将大
10/21

第十話 結局いつも通り


「夢だとしたらまだ起こさないでよ」

何度も何度もフラッシュバックする。さやのロマンチックな発言。同時に目眩が起きた事が重なって本当に映画のワンシーンのようだった。

土曜日なのに今日は珍しく泰希たちを連れてこなかった。休日はみんなでどこか泊まってたりするのだが、さやと会えた余韻に浸りたくて、カラオケで俺の家に泊まる話が出たけど断った。

この部屋も意外と静かなもんだな。玲音のいびきも聞こえないし、いつもよりベッドが広く感じる。今はきっと十時くらいだろう。まだ寝ていたい。

あの時ああ言えばもっと好印象だったのかな。 昨日の復習をしたり、違うストーリーを妄想の中で描く。時計の針がゆっくりと音を立て時を進めている。なんだかロマンチックだ。

これといった大きな夢もなくて平凡で毎日友達と遊び呆けている男子高校生が、謎が多くて無邪気に笑う女の子に二年ぶりに恋をする。

やっぱり二年ぶりっていうのがロマンチックだよな。もし俺の人生が映画化されたら絶対売れるな。結末はどうだろうな……ハッピーエンドか? バッドエンドか? 恋愛映画はやっぱりバッドエンドの方が好きなんだよなー。読み応えあるし、ベタな終わり方は嫌だな。なんか俺らにしかない、俺らなりのストーリーがいいな。

バッドエンドか……ていうか俺将来どうなってるんだろうな。普通に幸せな家庭持ちたいし、好きな車やバイク乗ってたいし、でも和真たちと一生遊んで暮らしたいな。岸和田少年愚連隊みたいな喧嘩と遊びばっかの中高時代を歩んでみたかったな。

やっぱ昭和の方がなにもかも楽しかったかもしれない。友達と遊ぶ時はスマホなんかじゃなくて、外で体を動かして遊んだり、恋愛だってLINEとかインスタとかじゃなくて、直接話しかけたりとかだったし。親父から聞いた話だと、公衆電話から彼女の家に電話をかけて彼女と電話してたって。めちゃくちゃロマンチックだな。もしかしたら彼女の親が出るっていうドキドキや、受話器から聞こえる彼女の声。想像するだけで心がときめく。昭和に中高時代を歩みたかったな。

ゴロゴロしながら色んなこと考えてた時、LINEの通知が鳴った。こんな朝っぱらから誰だよと思って見てみたら、さやからだった。

「昨日はありがとうね。体調はどう?」

さやの文書から読み取れるこの優しさと安心感が好きだ。すぐに返信しないでおこうと思ったけど、喋りたいという想いが出て返信してしまった。

「こちらこそありがとう。体調は普通!」

返信を送ってスマホの電源を消し、またさやの事を考えた。

さやの将来の夢ってなんだろう。絵を描いてたから、画家とかになりたいのかな。さやの趣味って他に何があるんだろう。もっとさやについて知りたい。そう思っているとまた通知が鳴った。さやからだ。そう思いスマホを取り見てみると

「グッドモーニング」

和真からだった。和真かよと思いながら、どしたー? と返信したら和真から電話がきた。和真にLINEの返信をすると大体電話で返ってくる。

「グッドモーニング」

「おはよ」

陽気に喋る和真と裏腹に俺は陰気な気分で返事した。

「どうしたの豊くん。もしかして振られちゃったー?」嘲笑いながら喋る。

「いいや、寝起きなだけだよ」

「なんだよ。飯が美味くなると思ったのに」

「んで? なんやった?」

「あーそうそう。スケボーやりてーなって思ってさ。豊も堤防行こうぜ」

「えぇー。外寒いしなー」

今の気分的に外で遊ぶテンションじゃない。なんだかゆっくりしたい気分なのだ。

「まぁまぁ。どうせ夕方とかにでもなれば、外で遊びたくなるよ。俺らAB型の気分屋じゃん?」

「ま、まぁそうだけど。じゃあまた遊びたくなったら連絡するわ」

「んー。良い返事お待ちしております」ビジネスマンの様な電話の切り方だな……。

電話の切れた音が少し虚しく心に響いた。やっぱり友達と遊びたいな。まぁでももう少しゆっくしてよう。そう思いながらスマホの電源を消し、毛布にくるまり目を瞑った。


ベット中に響くバイブレーションと着信音で目を覚ました。人が気持ちよく寝てたのに誰だよ……一定のリズムで震えるスマホを見てみると和真からだった。

また和真かよ……電話を出ずに二度寝しようとしたが、時計を見てみると二時を過ぎていたので体を起こすことにした。

立ち上がると目の前がスローモーションに感じて、足がふらつく。最近ほんとに立ちくらみがひどい。特に学校がある日の朝は頭痛がひどい。

秋バテかなと思い返していると、今年の夏休みの終わりに毎年恒例の長島スパーランドに行ったのだが、例年とは異なり乗り物酔いが酷く、何回か絶叫系をパスした。夏バテなんてそうそうしなかったのに。今年はあまり体調が優れない年なんだな。きっとさやと会えた代償だろう。逆にさやと会えたなら死ぬ以外の事なら何が起きても屁の河童だ。

そう自分に言い聞かせ、顔を洗い、昼飯の用意をした。パンをトースターに入れてる間に卵とベーコンを焼いた。お察しの良い方には俺が今何を作ってるかがわかる。逆にここまで聞いてわからないなら幼稚園からやり直した方が良い。そう、俺は今サンドウィッチを作っている。味付けは塩コショウと、マヨネーズとケチャップ。至ってシンプル。男はやはりシンプルに作るべし。独り言を言ってる間にサンドウィッチは完成した。

食べながら和真に折り返しの電話を入れようとしたらさやからLINEが来ていた。

「体調が良くなったのならよかった。今日は何してるの?」

何してるって、今日はサンドウィッチ作った事以外何もしてないな……

「今日は俺がサンドウィッチを作って友達と公園で食べてる!」

食事を作れる事と、普段から友達と遊んでる優良少年なんだなと好感度を少し上げる作戦だ。この文章だけだとオシャレで休日らしい過ごし方をしてるように思える。実際のところは寝て、適当なサンドウィッチを作っただけだけど。そう思いながら和真に電話をかけた。

グラデーションのかかった黄金色の空。いつ見ても綺麗だ。堤防から見る空は心が落ち着く。鮮やかな景色をさらに彩るようにエモい音楽を流す。この情景を絵に描けたらすごい価値になるだろうと思いながらGコードを弾いた。

「なぁ和真。風景画描ける人っていいよな。今見てるこの景色を描きたくなるな。もう少しすれば紅葉とか綺麗だし、見に行くか」

「紅葉を見に行こうよう」

「ダジャレええて」

「写真撮ってインスタにあげよ」

朝のゆっくりしたい気持ちは変わり、結局外で遊びたい気分になって堤防に来た。

「スマホを逆さにして、明るさを少し下げて、スケボーをちょいと入れて撮ると…… ほら! 綺麗に撮れるんすよ〜」

「お前は写真家か」

「写真家が落としたものはシャー芯か?」

「ダジャレええて」

「俺が撮った写真はオシャレ」

「もうええわ」

くだらない会話をしながら二人で笑っていた。そのまま暗くなるまで外で遊んだ後、玲音の家に行った。

いつも通りスマブラをしたり、スマホゲームをやったり、今度の給料日の話をしていた。

気づけば十一時を回っていて、「そろそろ帰るか」と言ったら、和真も「じゃあ俺も帰る」と言って玲音の家を後にした。

玲音の家からの帰り道は和真と途中まで一緒なので、チャリで二人で雑談しながら走っていた。

「和真って死ぬ時はどんな死に方がいい?」

「えー、死ぬ時かー。痛くない死に方がいいな。病気とかで苦しむのはごめんだな」

「癌とか嫌だよな。老衰とか良いよな。痛くなさそう」

「でも豊はみんなに見守られて死にそう。てか早死にしてそう」

「不謹慎なこと言うなよ。ちょっと怖いじゃんか」

「なんか豊は色んな将来が考えれる。例えばサラリーマンで幸せな家庭持ってたりね」

「他には? サラリーマンだけ?」

「他にはなんかテレビとかに出てそう。有名人っぽいのも考えれるな」

「うわ。それめっちゃええやん。テレビ出たら和真も出したるわ」

「おう。頼むわ。俺ここ真っ直ぐだからじゃあね」

「うん。またなー」

今日も一日が終わる。友達と別れた後、胸が少し痛くなる。あっという間に終わった土曜日。振り返ればあっという間だが、未来は長く感じる。来週の金曜日なんか、まだまだ先の話すぎてさやと会える気がしない。早くさやと会いたいな。そう思いながらイヤホンをして曲を聴く。最近のマイブームはやっぱMOROHAだ。HIPHOPやラップが流行ってるけど、メッセージ性のあるリリックを力強く歌う姿と一本のギターで奏でられる世界観が俺の心を刺した。

和真たちにもおすすめしたけど、「なんやその叫んでるだけの曲」とバカにされて終わった。音楽は人によって感じ方は違うけど、MOROHAを初めて聴いた時は歌声に心打たれた。

さやにおすすめしたらどんな反応するのだろうか。ていうかさやは最近音楽とか聴いてるのかな。

二年前は確かRADWIMPSをよく聴くと言ってた気がする。話したい事が次から次へと思い浮かぶ。

「あぁー! 早く会いたいな!」そう心の中で叫びながらチャリのペダルを強く踏み、19号線の天神橋を駆け上がった。

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