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乙女ゲーのメインキャラでもモブでもない鍛冶屋の看板娘に転生した私は、悪役令嬢にハッピーエンドを迎えさせたい  作者: 坂東太郎
『第一章 うわ、私のステータス……高すぎ……? さすが、「単なる鍛冶屋の看板娘」じゃないだけある!』
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第一話


「おはよー、お父さん」


「おはよう」


 リオナディア王国の王都。

 私とお父さんが暮らす家は職人街の片隅にある。

 表から入るとすぐ木製のカウンターがあって、そこが商品を渡すスペースだ。

 カウンターのうしろ、店員側に数打ちの剣や短剣、槍、盾なんかが雑然と置かれてる。


 カウンターの内側には扉がふたつ。

 ひとつはお父さんの鍛治工房につながってる。

 まだ6歳の私には店番を任せてくれないけど、いずれは私がカウンターに立って、お父さんを鍛治に専念させてあげたい。

 乙女ゲー『ファイブ・エレメンタル』の世界ではそうだった。


 ウチは「一見さんはなかなかたどり着けない場所にある、知る人ぞ知る武器防具屋」らしい。

 ご近所さんの金物を修理したりしてるけど、それはご近所付き合いということで。


「今日もお仕事?」


「ああ」


 カウンターの内側から行けるもうひとつの場所がここだ。

 小さなキッチンとダイニング。それと、お父さんと私、それぞれの部屋がある2DKの我が家。

 正直、鍛治工房の方が広い。

 でも不満はない。

 私を育てると決めたお父さんが、「女の子だから」ってわざわざ私の部屋を用意してくれたんだもん。

 ご近所さんの家は、たいてい大きなひと間だけだ。

 中には工房と分かれてなくて、本当に「ひと間だけ」の家も珍しくない。

 お父さんの愛がすごい。


 そのお父さんは今日も口数少なく、もそもそと朝ご飯を食べている。

 昨日のスープの残りとパンって簡単な食事だけど。

 鍛冶場で汗をかくお父さんの方には塩を足して、しっかり塩分補給できるようにしてる。


 凄腕のお父さんに集中してほしくて、家事は私の仕事だ。


「洗濯が終わったら、今日はちょっと遊びに行ってくるね」


「近くで」


「うん、裏の庭で遊んでる!」


「ああ」


 お父さんはちょっと心配そうだ。

 ほとんど表情が変わらないから、ほかの誰かが見てもわからないだろうけど。

 でも、OKはもらった。


 これで行動できる!




 洗濯して、お父さんの鍛冶場の片隅に干して。


「いってきまーす!」


 カーン、カーン、って槌音に見送られて私が来たのは裏庭だ。

 ここは通りに面してなくて、いろんな工房とその住居に囲まれたご近所さんの共有スペースになってる。

 共有井戸は別にあるから、ここは職人や奥さんたちの休憩場所兼子供たちの遊び場だ。

 午前中だからか、私のほかに人はない。


「よし! はじめるぞー!」


 ここが『ファイブ・エレメンタル』の世界なら、悪役令嬢であるエリアーヌ・フラメリアを助けるって決めた。

 6歳の私には、まだできることは少ない。


 けど私は、最初の一歩を踏み出した。


「ステータス、オープン!」


 びしっと拳を突き上げて叫ぶと、目の前に半透明のスクリーンが表示された。

 よかった。

 ゲームの中ではクリックすれば見られるけど、こっちではどうすればいいかわからなかった。

 こんなに気合い入れて叫んで、何も反応なかったら恥ずかしすぎるところだった。


 神父さまは教会で、「職業(クラス)判別の儀」のあとにステータスが見られるようになるって教えてくれた。

 けど、見方は「念じれば現れます」って言うだけで。

 不親切すぎない? できたからいいけども!


 勢いで叫んじゃったことを反省して、でもワクワクしながら覗き込む。



名前:マノン・フォルジュ

種族:人族

職業:商人

レベル:1

HP:86(-72)

MP:43(-36)

筋力:19(-12)

耐久:14(-12)

敏捷:20(-12)

知力:12

器用:15(-6)

スキル:なし

称号:なし



「うわっ……私のステータス、高すぎ…………?」


 名前はそのまんま、私の名前。フォルジュはお父さんの家名です。というかウチはフォルジュ鍛治工房です。みんな知らなくて、ゲームの中でも「武器防具屋」としか言われなかったけどね!


 種族は人族。

 うん。お父さんはドワーフだけど、私は人族です。ここも別に普通だ。


 職業(クラス)は『商人』。

 『ファイブ・エレメンタル』の世界では、主人公や攻略キャラ、サポートキャラたちはみんなもっとすごそうな職業(クラス)だった。

 主人公・アンリエットの職業(クラス)は『聖女』で、回復や浄化の『聖魔法』への補正があった。ほかにも全属性の魔法と近接武器が使える『万能勇士(オールラウンダー)』や、高威力の物理攻撃を誇る『豪剣士』なんかもいたなあ。

 でも商人だって悪くない。

 なんたって、実務面でお父さんの仕事をサポートできるしね!

 さすがゲーム公認の看板娘!


 で、問題のステータスだ。

 何度も周回して、公式設定集も読み込んだから覚えてる。

 前世の自分のことは覚えてないのに。これ、産まれてすぐの飢餓状態だけのせいじゃないのかもなあ。過去の自分を忘れることで、今世を精一杯生きるように、みたいな? 神の思し召し?的な?

 考えてもわからないことは置いておいて。


 設定集によると、HP(体力)とMP(魔力)の人族平均は50。主要キャラの平均は75。

 私の「HP:86」はだいぶ高い。マイナス表記は年齢のせいかな? 6歳で大人以上に体力あったらおかしいもんね!

 一方、「MP:43」は主要キャラどころか人族の平均以下。まあだいたい人並み、ってことだろう。


 そして、筋力、耐久、敏捷、知力、器用。

 筋力は物理攻撃力、耐久は物理・魔法防御力、敏捷は回避率、知力は魔法攻撃力、器用は命中率・クリティカル率のもとになる数値だ。

 これも設定集によると、人族平均はなんと驚異の10! 主要キャラでも15で、強力な主要キャラでも初期値のMAXは20!


 つまり、私はHPが高く、筋力と敏捷は人族最強クラス!(初期値では)

 器用も主要キャラの平均ぐらいはあって、耐久と知力はイマイチ。


 ……あれ? 私、ひょっとして脳筋キャラ?

 攻撃なんて当たらなければいいのだぁ! な回避アタッカー?


「か、考えない考えない! 目標を考えたら、これだけステータス高いのはいいこといいこと! やったー!」


 あとは、レベルが上がったときに上昇する固定数値、通称「成長値」がどうなのか次第だなー。レベルアップするにはモンスター倒さないとだからまだ確かめられないけど。


「これ、成長値の結果次第では、私、『最強』を目指せる? さすが非公式チートキャラ! これならエリアーヌを救えそう! ひゃっほう!」


 思った以上のステータスで、ちょっと小躍りしてみる。

 なんだか楽しくなってステップを踏んだり走ったりジャンプしたりしてみる。

 なにこれ「敏捷」やばい! めっちゃ動ける楽しい!


 我を忘れてきゃっきゃと一人駆けまわることしばし。

 息が切れて足が止まって我に返って。

 ふと思った。


 ……ステータスもそうだけど、これ、精神が年齢に引っ張られてない?

 あんまり前世覚えてないって言っても、私、社会人だったはずだよ?

 うれしいことがあったってこんな小躍りする?


 ……。

 …………。

 ………………うん、考えてもわからないことは考えない! 仕方ないね、私、知力:12だもんね!


 それはいいとして、こんなところを誰かに見られてたら恥ずかしいよなー、いくら裏庭に誰もいないからってはしゃぎすぎたなー、と思ってキョロキョロしたところで。


「あっ」


 木陰で座ってる女の子と、目が合った。


 私と同じ歳の女の子は、ニコニコ笑ってた。

 私の醜態が面白い、じゃなくて、ほんと純粋にニコニコと。


「マノンちゃん、こんにちわぁ」


「あっうん。こんにちは、オレリア」


 ご近所さんで、私と似た境遇のオレリアは、今日もニコニコぽわぽわしていた。

 なんだろ、オレリアに見られても恥ずかしさを感じない。

 きっと、オレリアなら私の奇行を受け入れてニコニコしてくれるって信頼だ。

 ちょっとぼーっとしてるけど、オレリアは優しくて純粋で素直だから。



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[一言] 彼女の知力は12 人族平均は10 んん…?
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