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45 救出(徳川秀忠)

 45 救出(徳川秀忠)



 江戸幕府二代将軍秀忠は幕府軍本陣にて、炎上する大坂城を見上げながら、

 物見からの報告を随時待っていた。秀忠の懸念……それは弟である守景の安否である。

 秀忠には弟は大勢いるが、守景には並々ならぬ思いがあった。あれだけ世を翻弄しながらも、

 人々を魅了していく生き様に感銘を受けたのだ。出来る事ならば助け出したい。

 秀忠は本陣にて、居並ぶ諸将達に大声を張り上げた。普段、温厚で思慮深い秀忠の声とは思えない。


「誰か、守景を救いに行く気概のある者はいないのか!?」


 温厚で穏やかな人柄の秀忠であったが、この時ばかりは大声を出した。

 柄にもない大声を出して秀忠自身も驚く。本来の秀忠は常に落ち着いた物腰であり、

 短慮を絶対に起こさない人物であった。守景が秀忠に取っても大事な存在へと変わった瞬間であった。


「決めた。守景を救った者には百万石を与える」


 百万石を与えると言う言葉に諸将は色めき立つ。そんな中、一人の髭面の武者が名乗りを挙げた。

 中年の武者、坂崎出羽守直盛である。坂崎はあの宇喜多秀家の一族であり、守景の事も見知っていた。


「上様……私にお任せあれ。ついでに秀頼様に嫁いだ御息女、千姫様も救出に参る」


 坂崎は短くそれだけ言うと強面の髭面を際立たせて、そのまま走り去っていく。


「……秀頼に嫁いだ我が娘よりも、守景の身を案じてしまうとは儂は一体何がしたいのか」


 秀忠は秀頼に嫁いだ千の事をすっかり忘れていた。守景の事で頭がいっぱいだったことを恥じた。

 守景……不思議な男だ、と秀忠は守景の事が良く分からなかった。

 本当に不思議極まりない。あらゆる人々を魅了し翻弄する。誰もが、守景に注目せざるを得ない。


「守景、全てが終わった時はお主と酒を飲んで語り合いたいものだ」


 秀忠は守景と飲み明かす酒の味を想像して、やれやれと言った表情を見せた。

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