36 会見(徳川家康)
36 会見(徳川家康)
豊臣秀頼と家康の両者の会見は二条城にて執り行われた。
家康は滅ぼすかもしれない相手を何としても把握したいと言う思惑があった。
会見の席に立った家康は小柄な自身より遥かに背が高い、偉丈夫である秀頼を見て唖然とした。
一体、どれぐらい身長があるのか、と雲を付くような大男の秀頼を前に家康は驚愕していた。
――何という偉丈夫……これが秀頼の小僧か。
家康は心の内で唖然としながらも、態度では笑顔で世間話に花を咲かせていた。
傍から見れば両者はすっかり、打ち解けた様子であった。
その場に臨席した豊臣家系大名筆頭、加藤清正も終始安堵の表情をしていた。
それを見て家康は内心、鼻で笑った。何という眼の曇りようだと。
内心では安堵する清正を馬鹿していたが態度には出さなかった。
努めて優しい老人に見えるように演技に徹するだけだ。家康は実は演技力にも定評があった。
「秀頼様におかれましては、壮健で何よりでございます。久方ぶりですな。
まだ秀頼様が幼き頃に出会った頃から、大分ご成長成されて嬉しく思いますぞ」
内心では全然、嬉しくない。子供の死亡率が異常に高かった時代。
上手く育つかも分からない子供が立派に成長したのだ。秀吉は何と悪運の強い男か。
家康の懸念通り、秀頼は立派過ぎる程、成長した。会話をして頷ける。
秀吉譲りの賢い息子だと。これに経験が伴えば手の付けられない怪物に成長してしまう。
徳川の世の安定を脅かす芽は確実に摘んでしまわないといけない。
「家康殿、恐縮でござる」
「秀頼様は賢く聡明でいらっしゃる。これならば豊臣家も永遠に安泰ですな。
豊臣と徳川は手を取り合って共存していけると儂は確信しましたぞ」
家康は作り笑いをしながら、秀頼を煽てて、秀頼にとって気持ちの良い言葉を並び立てる。
しかし、心中では穏やかではなかった。明るい満面の笑顔とは裏腹に家康は焦っていた。
己の寿命が尽きるのと秀頼の成長、どちらが早いかと、目算する有様だった。
秀頼を油断させるために家康は道化に徹し、優しい老人のように振る舞う。
それも長年で培った演技力の賜物だった。伊達に七十年生きてはいない。
――冗談ではない。豊臣家を生かしといたら、徳川は何れ滅亡するわ。
自分が目の黒い内に滅ぼさなければならない。豊臣家は確実に滅ぼす。
その為ならばどんな卑劣で残酷な手段も厭わない……この時、家康は豊臣家を滅ぼす決心を固めた。
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