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30 在るべき様(守景)

 30 在るべき様(守景)



 守景の心中は穏やかではなかった。豪に辛く当たってしまったという罪悪感が胸に去来するのを感じた。

 そんな折、江戸城にある伝説の軍師、竹中半兵衛重治が守景に会いたいと言って来た。

 守景は面会室に半兵衛を通し、密会した。半兵衛は以前会った時と同様に死に装束を着ていた。


「竹中殿……これは御足労をおかけ申した。長旅で疲れたでしょう。

 お茶をご用意します。おい、茶を用意しろ」


「竹中半兵衛重治にござる。守景殿にはお久しゅう」


 女中にお茶の用意を手配させて、半兵衛の予言に耳を傾ける事にした。

 竹中半兵衛は齢三十六の若さで病死したと伝われているが、実は生きており、

 異国の地を放浪し、預言の力を身に着けたことで知られる。預言が聞きたい。

 守景は早く半兵衛の予言が知りたかった。良い予言を聞きたい。


「早速で恐縮でござるが、早く預言を賜りたく存じます」


 半兵衛は厳かな佇まいをして預言の力を披露する準備に取り掛かっている。

 聞いた話しによると、預言の力は使用者の体力を極限まで酷使すると後で聞いた。


「守景様と豪様は近々戦にて敵同士で相まみえるでしょう。

 そして……もう一つ。守景様は最終的には豊臣家を見限ることは出来ない。

 在るべき様になるでしょう。貴方の存在は歴史に大きな流れを変える要因となる。

 ゆめゆめ、忘れないで下され」


「大きな流れ……」


 半兵衛の予言は実に的確なものだった。豪との仲直りは果たして出来るのか。

 それよりも自分が豊臣家を見限ることは出来ない事に守景は忘れかけていた大事なものに気付きだした。

 守景は不安に駆られつつも半兵衛に頭を下げて、密会は終わりを告げた。

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