3 第三勢力(黒田官兵衛)
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3 第三勢力(黒田官兵衛)
黒田家豊前中津十二万石――。
大阪より、遥か遠く九州の地にて、天下人豊臣秀吉の覇業を支え、
彼に天下を取らせた稀代の軍師、黒田官兵衛は秀吉の死の知らせを聞き、
握り拳に思わず力を込めた。遂に自分を冷遇した愚かな主が世を去った。
官兵衛は最早、豊臣家に忠誠心など持ち合わせていなかった。
それもその筈、一番天下取りに貢献したのに遠い九州の辺境の地で十万石しか与えなかったからだ。
本来ならば百万石を貰っても文句は出ない程、秀吉に貢献したと自負があった。
秀吉は官兵衛の野望を見抜き、また心の底から恐れて辺境の地に飛ばした。
官兵衛は秀吉の予想通り、天下取りの野望を燻らせていた。
「あれだけ元気だった秀吉が死んだのは偶然ではない。
大方、家康が毒を盛ったのだろう。間違いなく毒に違いない。
家康……やはり、殿下に心の底から臣従してはいなかった。
秀吉が死に、また動乱の予兆が見え隠れする。現状、天下取りに一番近いのは家康か。
だが、すんなりと奴に天下を取らせる程、儂は甘くはない」
官兵衛は隠居して、息子の長政に家督を譲ったが、秀吉の死を知り、
燻っていた天下取りの野望が心の内で再熱した。第三勢力として天下を伺おうとしていた。
だが、黒田家は十万石の小大名に過ぎない。豊臣と徳川に割って入れるほどの力は無かった。
「十万石に過ぎない儂が、天下を伺うことは現状では難しかろう。
ならば……遠く南方の国、琉球を秘密裏に攻め取って見せよう。
あの国は平和で戦をする軍事力が乏しい。しかし、内政に力を入れれば、肥沃な地へと化ける。
儂ならば出来る。琉球を攻め取り、肥沃な地へと変え、天下を伺って見せる。
豊臣も徳川も纏めて潰す。その為の布石を打つ。天下を取るのはこの儂だ」
官兵衛は、朝鮮の役に駆り出された息子長政の留守の内に支度を整え、三千余りの兵力と共に忽然と消えた。
全ては黒田家の天下取りの為に。後に第三勢力として君臨することになる。
第三勢力、黒田官兵衛が登場しました。