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24 策士策に溺れる(黒田官兵衛)

 24 策士策に溺れる(黒田官兵衛)



 官兵衛は勝利を確信し有頂天で軍を進めていた。やがて谷底に差し掛かる。

 このような谷底には策を仕掛けるのに打ってつけだったが、今の官兵衛は浮かれて無警戒であった。

 それを促したのは側近である栗山利安……官兵衛は自分を乗せるのが上手い利安を愉快に見つめていた。

 しかし、栗山利安はさっきから思いつめた様子を見せている。何故だろうか。


「官兵衛様、ご覚悟を!」


「何!?」


 官兵衛は栗山利安の様子がおかしいのを察知し、馬を走らせて谷底から脱出する。

 その時だった。官兵衛の眼下で谷底を進ませている軍勢が、

 突如起爆した地雷によって、瞬く間に谷底は炎の渦となり、一瞬にして九万人全てが焼き殺された。

 燃えさかる業火が、精強な軍勢をあっと言う間に灰燼に帰した。

 それを見て官兵衛は、してやられたとばかりに栗山利安を見る。


「官兵衛様、貴方の負けです。恐れながら申し上げます。

 貴方の軍略は太閤殿下が亡くなられたことで錆びついてしまった。

 それがこの結果にござります。潔く負けを認めて御自害なされよ」


 対岸の栗山利安は迷いを振り払うかのような面持ちで官兵衛に自害を進める。

 聡しい切れ者の官兵衛は察した。全て家康に仕掛けられていたのだと言う事を。

 自分の策略が全て、あの家康には筒抜けだったのだ。栗山利安と内通し、

 官兵衛の情報は家康に漏れていた。家康は教養が深く藤甲鎧の弱点も見抜いていた。


「儂が軍略で敗れるとは……まだだ、まだ儂は終わってはいない。

 逃げおおせてやるぞ! この儂を策略で嵌めたことを家康に思い知らせてやる」


 官兵衛は必死の形相で馬を走らせて近くの民家に駆け込んだ。必死で走らせたから喉も乾いてしまった。

 馬から降りて、民家の戸をドンドンと叩いた。すると民家の主が姿を現した。


「儂は黒田官兵衛である。儂に水を振る舞え」


 官兵衛は尊大に民家の主に水を所望したが、民家の主人は怒りの様相で瓶に入った水をぶちまけた。


「武士の戦争の為に働き手も、食料も根こそぎ取られた。お前ら武士に与えるものはない」


 官兵衛は落胆し、全てを諦めて民家の主に申し訳ないと言い。自らの詰みを悟った。


「儂の運命もこれまでか……」


 そう言い残し、一滴の悔し涙を滲ませ、潔く民家の裏で自害して果てた。

 黒田官兵衛……太閤秀吉を支えた稀代の天才策士は策に溺れて、その最期を迎えた。

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