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4話 ゲームの選択肢は大体間違える

何もない白い空間に私は佇んでいた。

不思議に思いあたりを見渡してみたが何もない。ただただ真っ白だ。

上を見上げると、あの時上空にいた恐ろしく美しい古代ギリシャ人のような薄手の布を纏った人がこちらを見てほほ笑んでいた。

遠目でも分かるくらい美しいと思ったが今はあの時よりも距離が近い。その美しさに恐怖を感じる。

私が動けないでいると、その美しい人は私にゆったりと近づき私の両頬を両手で覆った。


“君がこの世界で一番困ることは何だい?”


そうゆったりと語りかけてきた。

一番困ること…何だろう…

私は幸運なことに優しい人たちに保護してもらった。そして明日役所に行くように言われたがフォンさんを見る限り悪いようにはされないだろう。

だとしたら私が一番困ることは何だろうか?

せっかく異世界に来たのだしたくさん満喫したい。

美しい景色を写真に収めたい。

そう考えると…


「スマホとタブレットが使用不能になること…?」


実際今スマホの方が画面が割れてしまっていて使えないことはないが見にくくて少し困っている。

いや、それだけではないか。他にも困ることがあるだろう。

待てよ…分かったぞ。これは私が答えた何かをこの人がくれるパターンのやつだな?

ゲームとか漫画とかでこういうシーンは見たことがある。

選ばれし者よこの中から一つ武器を選ぶがいい的な。

こういう場合は慎重になった方がいい。


“では君に加護を与えよう”


ほらね。やっぱりそういうパターンだ。私そういうのたくさん読んでるから詳しいんだぞ。

…ん?加護?

私何か頼んだか?

いや、さっきの…

「口に出して言ってた!!!」

しまった!あほか私は!もしかして加護が私自身じゃなくてスマホにいく!?

美しい人は私からするっと手を放し私の額に手を当てた。

「待って今のなし!今のなし!!」

私の声が聞こえていないのか聞いていないのかそのままトンっと額を押した。

その瞬間私の意識が遠くなる。


“―――によろしくね”


最後にそんな声がした気がした。

ちゃんと全部聞き取ることができなかった。誰によろしくすればいいんだ。



はっと目が覚めて一瞬ここはどこだか分からなかった。

そうだ。私は異世界に来ていたんだった。頬をつねってみる。痛い。夢ではなかったんだな。

昨日色んな人にたくさん迷惑をかけてしまった気がする。でもこんな世界に来て興奮してしまうのは仕方ない。

とりあえずお腹すいたしお風呂入りたい。昨日あのまま寝たから汗でべたべただ。

そういえば変な夢を見た。あの美しい人は本当にスマホに加護を与えたのだろうか。

確認しようとゆっくりと起き上がると、目の前に少年が立っていた。

「…ドチラサマデスカ……?」

「起きたのか?」

彼は真っ白だった。肌の色もそうだが髪も真っ白だ。落ち着いた雰囲気だが可愛らしい容姿をしている。

こういうぼんやり系儚げ少年は私大好き。

「ますたぁが様子見てこいと」

マスターとはミソギさんの事だろうか。

「起きたらこれ渡せって」

そう言って私に服を差し出してきた。可愛いワンピースだ。

「お風呂こっち。案内する」

そういって扉を指をさした。


私は彼に案内され風呂に入らせてもらった。風呂は5,6人が同時に入れそうなくらい広い。

ここはギルドと言っていたから利用する人が多いのだろうか。

シャワーのようなものもあったが蛇口が見つからず、その代わりに青い宝石のようなものが埋め込まれていた。

宝石を触ったり押したりしてみたがうんともすんとも言わないので諦めてかけ湯で我慢した。

後で誰かに使い方教わろう。

普通にシャンプーにリンス、そしてボディーソープを借りて体を洗っていて気が付いたのだがお風呂の生活水準が私たちの世界と同じだ。

よく小説とかの異世界トリップした先は、私たちの世界よりも生活水準が低い事が多く、こちらの技術や生活を披露すると周囲の人に賛美される、というものをたくさん見てきた。

でもこの石鹼、柑橘系のいい香りがしてしかも肌つやっつやになるやつだ。

石鹼などもよく披露されるものの一つな気がするが、これは私が使っていたものよりもいいものだ。

この世界の生活水準は私たちと同じくらいなのだろうか。そうだったら暮らすのに苦労しなさそうなのだが。

そういえば昨日あれだけ擦り傷付けたのに回復魔法をかけてもらったおかげか怪我が全くない。こんなにきれいに治るものなんだな。

あんまりゆっくりしすぎるとのぼせそうだ。もう少しあいたら上がろう。


「出たか。あっちでますたぁが待ってる」

風呂を出ると少年が部屋の前で待っていた。そしてくいくいと服をひっぱり別の部屋を指さした。一挙動一挙動が可愛い。

「君名前は?」

「ハクロ」

ハクロきゅんか。覚えた。人の顔と名前を覚えるのが基本苦手だがこの子は絶対忘れないだろう。可愛い。

「私はコハネ。よろしくね」

にやけるのを抑え、なるべく優しく微笑むようにしてみたが出来ただろうか。

ハクロくんは私の名前を聞いて何か考え込んでそして上目遣いで見上げてきた。

「こはね…こはねぇでいいか?」

「ん゛んっ」

あーーーーー可愛いが過ぎる。変な声が出てしまった。あざとい。可愛い。

あれか、コハネとお姉さんを混ぜて“こはねぇ”か?可愛すぎか。こんな可愛い少年存在するのか?天然記念物にしよう。そうしよう。

「い゛い゛よ」

駄目だ。にやけが止まらないし変な声が出る。

ハクロくんは眉間にきゅっと皺をよせていたが一つの部屋を指さしている。

「あんまりますたぁを待たせるな。いくぞ」


ハクロくんに手を引かれ入った部屋は食堂のようだった。

食堂といってもキッチンと食べるところが一緒になっているようだった。

キッチンにはオーブン、あとは電子レンジのような箱と冷蔵庫らしきものまである。

やはり私たちの世界と同じくらいの技術力があるのだろう。

キッチンを見渡すと、ミソギさんが小さい鍋をかき回している。所作が美しい。

ミソギさんは私たちに気が付いたのか、火を止めて微笑んできた。

微笑んだだけでこの人の周りに花が舞ったような幻覚を見る。改めて見ても本当に美しい。

それにしても私がこの世界に来て出会った人物みんな顔面偏差値高すぎではないだろうか。

カシスさんもつり目だがかなり整った容姿をしているし、フォンさんは大人の色気がある魅力的な女性だった。

リョウさんもイケメンだったし、ハクロくんも可愛らしい。

私の容姿はよく言えば化粧映えのする、悪く言えば顔が薄い。ほんとうにその辺にいる平凡な顔つきをしている。

こんな美男美女に囲まれたら少し落ち込むわ。

「コハネ、昨日はよく眠れましたか?」

「はい、おかげさまで。お風呂もありがとうございました」

「昨日何も食べていないからお腹すいたでしょう?おじや作ったんですけど、よかったらいかがですか」

あぁだしと味噌のいい香りがする。というか、この世界だしと味噌あるのか…

香りにそそられたのか私のお腹が盛大になる。

「お腹がすいたのでいただきます」

昨日は部屋に案内してもらった後すぐに寝てしまっていた。そして今、何時か分からないが日が高く昇っているのでだいぶ眠っていたのだろう。

夕飯を食べなかったしかなりお腹がすいている。

ミソギさんは温かいおじやをよそってくれた。それは優しく温かく、今まで食べたおじやの中で一番おいしく感じた。



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