20 革命の炎
美しい淑女の一撃を合図として、ラインハルト王国王都に存在する王国軍施設にはレジスタンスが次々に押し寄せた。
武器を持ったレジスタンスと鬱憤と不満の溜まった一般人達が王国を倒せと息巻く。
その数は圧倒的で王族と貴族が集まっている王城に人数を割いている王国軍は、軍施設の防衛に対して十分な人員を配置していなかった。
「我々は屈しない!」
「これは革命だ!」
魔石爆弾。火炎瓶。殺傷性のある投げ物を軍の宿舎や詰め所に投擲して革命の炎をあげる。
次々と破壊されていく軍施設。それを見て同調し、魔法銃を手に取る新たな参加者。
リーズレット、もしくはアイアン・レディに所属していた者達が見たら「あの時」と同じだと言うだろう。
元は帝国と名乗っていた王国が迎えた結末。この地で再び歪んだ思想が破壊される革命の歴史が作られた。
彼等の勢いは止まらない。国の象徴たる城の一部が爆発して黒煙が上がる頃には、殺到するレジスタンスと国民に王国兵も恐れを抱いて逃げ出しつつあった。
決定打となった城の爆発。これを演出したのは勿論、彼女だ。
「おーっほっほっほ! さぁ! 各階にある部屋を片っ端から吹き飛ばしなさい!」
城の玄関口にあるロビーで王国兵を片っ端から殺すリーズレットは、城の中へ突入して来たレジスタンス達に叫んだ。
「宝物庫に手を付けてはいけませんわよ! あれは私が頂きますわ! 横取りした者は殺しますわよォ!」
王国兵の頭部を銃で吹き飛ばしまくる彼女の言葉を聞いた者達は敵味方問わずぶるりと体を震わせた。
誰もが彼女の言葉に集中する。当然だ。
王国兵や貴族は死にたくないと叫びながら、リーズレットの放つ銃弾が当たらないよう身を隠す為に。
レジスタンスは目の前で王国兵や貴族の頭部を片っ端からぶっ壊していく淑女のご機嫌を損ねない為に。
「たかが女一人止められんのか! 撃て! 撃たんかァァァッ!!」
王城を警備していた軍の指揮官が半狂乱気味に叫ぶ。恐れ戸惑う王国兵達は魔法、もしくは魔法銃による攻撃をリーズレットに集中する。
だが、リーズレットはサリィと共に近くにあった大理石の受付カウンターの上をゴロリと転がって、カウンターを遮蔽物にして身を隠した。
フラググレネードをドレスの裏側にあるポケットから取り出して王国兵へと投擲。
「サリィ、撃ちまくりますわよ!」
「はいですぅ!」
フラググレネードの爆発音が聞こえた瞬間、2人は身を隠していたカウンターから半身を露出させて銃を向ける。
リーズレットはアイアン・レディを。サリィはアサルトライフルを。
それぞれ王国兵に向かって連射した。
対魔法防御が主流な王国製防具を容易く貫く実弾。防具ごと人体を穴だらけにして、城のロビーは爆発で吹き飛んだ残骸と死んだ兵士の死体が転がる地獄に早変わり。
「おーっほっほっほ! ファァァック!」
「ふぁぁぁっくですぅ!」
的確に頭部を撃ち抜くリーズレット。腰溜め撃ちで乱射しながら王国兵の体にケツの穴を量産するサリィ。
生き残った豚共を全て殺害すると、魔法銃を持ったナンシーがリーズレットへ告げる。
「リーズレットさん! 王族と貴族は3階にいます!」
「よろしくてよ。貴方達は2階を制圧なさい! 私は3階に参りますわ!」
ロビーを制圧したリーズレットはサリィと共に階段を駆け上がっていく。
途中、道を塞ぐ王国兵をケツの穴だらけになった肉塊に変えてあっという間に3階に到達。
廊下の左右をサリィと共にクリアリングし、待ち構えていた王国兵を揃って殺す。
「左右どちらでしょう~?」
王国兵の死体が散乱する廊下の左右をキョロキョロと見るサリィ。
「きっとこちらですわよ。豚の臭いがしますわ」
リーズレットは右を選択。彼女の本能が豚共の臭いを感じ取った。
3階にある部屋に潜んだ王国兵が飛び出してくれば驚異的な瞬発力で頭を吹き飛ばし、恐怖した貴族が部屋の中でガタガタ震えていればグレネードを放り込んで爆殺。
彼女が歩いた後には死体が次々と量産されていき、後方から追って来た王国兵は背中を守るサリィが銃殺して死体の数を足していく。
「お嬢様! コツが掴めてきました!」
いつの間にか覚えたタップ撃ちで王国兵の頭部と胴にケツの穴を作ったサリィがひまわりのように笑う。
「おーっほっほっほ! それでこそ、私の侍女ですわよ!」
今世でも淑女と侍女は息ピッタリだった。
「きっとここですわ」
廊下を進むリーズレットがピタリと足を止める。
ドアノブ部分を銃で吹っ飛ばし、扉を蹴飛ばして開けると中には装飾マシマシな服を着た光る豚共が揃っているじゃありませんか。
「やれ! 殺せええ!」
一番奥にいた老人が彼等を守る王国兵達に叫ぶ。目を血走らせて、唾を撒き散らしながら必死に叫んだ。
が、ダメ。
もう既に銃を握っているリーズレット相手に「これから撃ちます」など問題外。
王族と貴族を守る4人の精鋭の頭部は一瞬で無くなった。飛び散った血飛沫が飛び散って、体を赤く染めた自称高貴な豚共の発狂する声が室内を満たす。
「き、貴様は……。やはり悪魔……!」
「んふふ」
もう自分達を守る者は誰もいない。絶望する王を見てリーズレットはニンマリと笑った。
「貴方に聞きたい事がございましてよ? 私の質問に答えて下さいましね? さもないと――」
リーズレットは王の隣にいた第一王子に銃口を向ける。向けられた第一王子が目を見開いて「え」と口から言葉を漏らした瞬間、彼の頭が吹き飛んだ。
壁にぶつけられたトマトのように弾けた第一王子の頭部は中身をぶちまけ、隣にいた王の顔の半分が息子の血で赤く染まる。
「こうなってしまいますわよ?」
銃口から漂う硝煙を「ふぅ」と息で消したリーズレットは、王の顔を見下すように見た。
「あ、ああ……く、う……」
息子の惨い死に方を見て、王は尻餅をつきながら口をパクパクと開け閉めするばかり。
次代の王になる予定だった第一王子はたった今死んだ。これにて王国の後継ぎは全員死亡。王家断絶確定。
だが、淑女を前にして王と貴族達はそんな事を気にしている暇もない。何たって、自分達もこうなるんじゃないかと見せつけられたからだ。
貴族達は「王族に聞きたいことがある」と言ったリーズレットの見せた恐怖に一瞬で支配された。
王に「さっさと吐け」と思ってしまうくらいには。吐かせたヤツは生かすと言えば、誰もが率先して王の首を絞めるだろう。
「な、何が、聞きたい……?」
王の問いにゴクリと喉を鳴らす貴族達。
「王国が手に入れた魔法銃の原型。それの現物と入手場所を聞きたくて、私はこのような汚らしい豚小屋にわざわざ足を運びましたのよ?」
まったく、面倒ですわね。とため息を吐くリーズレット。
「魔法銃の原型……。レリックか」
そう返す王。頷くリーズレット。頼むから素直に吐けと心の中で懇願しながら王を睨みつける貴族達。
「リーズレット!」
しかもレジスタンスまで到着してしまった。リーリャ達が慌ただしく室内に入って来ると、魔法銃を王と貴族に向けて睨みつける。
「さて、早くして下さると助かりますわ」
リーズレットに催促される王は奥歯を噛み締めながら俯いた。
銃口を向けられている時点で拒否権は無い。そんな事は王もわかっている。
「いいだろう、着いて来るといい……」
力なく項垂れた王はゆっくりと立ち上がり、彼女を自室へと案内するのであった。
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