15 最高にイケてる淑女と侍女
王国兵を全員ファックしたリーズレットが車を停めると、ナンシーは横転した荷台に駆け寄った。
「みんな、大丈夫!?」
彼女は横転した荷台の中にいた仲間を外に引っ張り出して拘束を解いた。
拘束された者達は助かった事に安堵しつつ、体に少し痛みがある事を漏らす。だが、ナンシーはイカれた真実を言えずに苦笑いと乾いた笑いを漏らすだけだった。
「一体、何があったの?」
「それが……」
レジスタンスに所属する女性によると、突如王国軍がやって来てアジトを襲撃。魔法銃と魔法使いの一斉射で反撃も空しく制圧されてしまったと言う。
この組織には男女共に所属しているようだが、男は皆殺し。女は敵の拠点に連れて行かれる途中だったそうだ。
リーズレットが半壊したアジトの中を覗けば、確かに男達の死体が転がっていた。
「どうしてアジトの場所が?」
「どうやら捕虜になった仲間が拷問されて口を割ったみたいね。王国兵が笑いながら言っていたわ……」
別の場所で捕まったレジスタンス兵が拷問の末にアジトの場所を吐いてしまったようだ。
このアジトはメインが地下なようで、地上にある建物は偽装。王国軍は周囲を制圧したら迷わず地下の入り口を見つけて突入してきたと女性が語った。
「地下にあった武器も押収されてしまったわ。それにリーリャも連行されて……」
レジスタンスにとって最大の痛手はリーダーであるリーリャという名の女性が捕まってしまった事。
皆は彼女の考えに賛同し、今まで引っ張ってもらっていたようだ。
リーダーを失った群れは脆い。行く末を明確に指し示す人物がいなくなれば、地盤の固まっていない組織なんぞ制御不能になってすぐに崩壊するだろう。
話を聞いていたリーズレットにはレジスタンスを率いるリーリャという人物の苦労が少し理解できた。
自分達を導いていたリーダーを失い、武器を失ったレジスタンスの女性達は「これからどうすれば」と悲嘆に暮れる。
「リーリャを助けに行こうよ!」
仲間達を鼓舞しようとナンシーが行動しようと促すが、仲間達は首を横に振った。
「襲撃して来たのは王国軍の第一軍。第二王子率いる部隊だったの」
ラインハルト王家の次期国王候補である長男以外の男児、成人している第二王子と第三王子は軍に所属。
彼等は王族特有の才能を持ってして超一流の魔法使いとして君臨している。最強の部隊を率いて国防の要となり、国内外の脅威を抑え込んでいる実力者だ。
そんな最強部隊を率いる王子がいる王国の砦にレジスタンスのリーダーは連行されたと言う。
敵対する相手も最強であれば、連れて行かれた場所も堅牢。数少ない今のレジスタンスでは歯が立たない相手である。
グズグズしていればリーリャは処刑されてしまうだろう。そうなれば完全にレジスタンスという組織は崩壊する。
しかし、彼女達は非常に運が良い。人生において使える運を全て放出したくらいにはナイスタイミングなラッキーデイである。
「今、相手が王族と言いまして?」
そう、この場にはリーズレットがいる。
彼女は王国が得たレリックについて知りたい。それは王族に聞くのが一番だ。
詳細を聞く相手は現王に限らず、次男坊でも詳しく聞ける可能性は大いにある。現在抱えている悩みの種が早々に1つ解消されるかもしれない。
故に彼女はニコリと笑った。
「彼女が連行された場所に案内して下さる? 今回は私が特別に手を貸してあげますわよ」
ナンシーの心情としては心強い……が、先ほどの暴走行為を体験した身としては嫌な予感しかしなかった。
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アジトから西へ進み、王国王都へと続く道を真っ直ぐ進んだ場所に目的地はあった。
「あれが第二王子のいる豚小屋ですわね」
移動に半日以上を費やし、翌日の昼前に王国軍が拠点として使う『豚小屋』に到着した。地図上での位置としては王都の東側にある。
豚小屋の正体は前時代に存在していた帝国が建設した砦だった。
分厚いコンクリートで作られた壁、敷地の中には遠くまで見渡せる背の高い監視塔。中央には地下室も備えた指令室がある場所だ。
この場所になぜこんなにも詳しいのか。それはリーズレットにとって少々懐かしい場所だったからだ。
彼女は敷地を囲む壁に開いた穴を指差してサリィに言った。
「サリィ、あの崩れた壁が見えまして? あそこは昔、私がRPGでぶっ壊した穴ですわ。当時はあそこから火炎放射器を持った見習い淑女達が突撃して中で焼肉パーティを開催しましたのよ」
「わぁ! すごいですぅ!」
フロントガラス越しに一部崩壊している壁を指差すリーズレットを称賛するサリィ。
前時代の壁は修復せず、壁の向こう側に新しい壁をもう一枚建造して塞いだようだがリーズレットにとっては懐かしい思い出の一幕を思い出すには十分だった。
「当時……?」
大昔の思い出を語るリーズレットを見てナンシーは首を傾げたがすぐに本題へと話題を変える。
「それより、どうするんですか? こんな近くにいたら発見されちゃいますよ! というか、もう発見されてますよ!?」
現在、リーズレットが運転するキャンピングカーは砦の500メートル前方でポツンと停車している状態だ。
その身は隠れもしてない。荒れた大地の上にポツンと出現した魔導車があればアホウな王国兵でも気付くだろう。
その証拠にナンシーが双眼鏡を覗けば監視塔の上から仲間を呼ぶ王国兵の姿が見えた。
「イージーですわよ」
またこの言葉。
ナンシーは凄く嫌な予感がした。
リーズレットはハンドルの右下にあったボタンを押した。
すると、タイヤの部分が稼働して車体が上昇、車体両側面の下からロケットランチャーが2門出現。
運転席のフロントガラスが一瞬だけ真っ黒に染まると、再び外の景色を映しながらも右にある運転席側に照準が表示された。
ハンドルの中央からはトリガー付きのグリップがニョキリと生えて、グリップの動きと連動して表示された照準が動く仕組みになっていた。
「お嬢様! 私もお嬢様のお役に立ちたいです!」
目をキラキラさせながらそう言ったサリィにリーズレットは微笑んだ。
「まぁ。よくってよ。では、これはサリィが撃ちなさい」
リーズレットは運転席から降りてサリィに譲る。
撃ち方を説明し終えたリーズレットは、キャンピングカーの後方を開けてロビィにオーダーを告げた。
「ビッグ・ガンを出して下さいまし。あのファッキンタワーをゴミの山に変えられるやつですわよ」
『ウィ、レディ』
オーダーを受けたロビィが取り出したのは大きな縦長のケース。
中身は4連装ロケットランチャー。それを手に取って再び外へ。
彼女は肩にロケットランチャーを「よいしょ」と担いで車と並行して少し離れた位置へ移動。
「サリィ、一緒に撃ちますわよ! 貴方はあのバカみたいに大きな監視塔を狙いなさい!」
「はいですぅ!」
リーズレットの指示に笑顔で頷くサリィ。
「えっえっ」
馬鹿みたいにゴツイ銃器を肩に担いで言うリーズレットと頷くサリィ。前方にある仲間が囚われている建物と彼女らを交互に見るナンシー。
「ファッキュゥゥ!! サノバビィィィッチッ!!」
「ふぁっきゅーさのばびーっちですぅ!」
カチ。
同時にトリガーを引いた淑女と侍女。
連動して発射されるロケットランチャー。
シュバッと飛んで行く弾は見事に命中。背の高い監視塔は爆発と共に崩れ落ち、他の建物もクソの塊に早変わり。
「あああああッ!?」
ぶっ壊れていく砦を見て悲鳴を上げるナンシーだった。
「あ、あ、あ、あそこにリーダーがいるんですよォォォ!?」
絶望したような顔でリーズレット達に叫ぶナンシー。だが、言われた本人達はスッキリしたような顔で彼女を見た。
「大丈夫でしてよ。全く問題ございませんわ」
ニコリと笑うリーズレット。
大丈夫と言う根拠が見つからないナンシーは頭を抱えて「嘘だぁぁ!」と叫んだ。
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