106 連邦首都制圧作戦 2
首都上空に侵入したリリィガーデン王国航空機隊に向かって、大統領官邸付近にて準備していたドラゴンライダー隊が一斉に飛び立った。
連邦軍は空を飛ぶ物には空を飛ぶ部隊を、と制空権を奪うべく空の王者たる兵器と兵科による新旧の対決が始まる。
ナイト・ホークとイーグルに相対するは嘗ての東部戦線でリリィガーデン王国軍を苦しめたレッドドラゴン隊。
大きさで言えばイーグルよりも大きく、体には爆撃装置やライダーが使用するやや大型の魔法銃に使用する魔石ポーチが装着されていた。
搭乗しているライダーの数は1匹に対して3人。
巨大な翼を羽ばたかせて空を舞うレッドドラゴン10匹が、首都上空で侵入して来た航空機を睨みつけた。
10匹のドラゴンは一斉に口を開け、口の中に炎を溜める。ドラゴン特有のドラゴンブレスで敵軍航空機を撃墜しようという考えだろう。
口の中でチャージされた魔法の火球が先頭を飛ぶナイト・ホーク5機に向かって一斉に吐き出される。
「回避!」
ただ、ドラゴンブレスは直線的だ。火力は魔導兵器に匹敵するが、ナイト・ホークのような機動力に優れた敵に対して命中率が下がる事が欠点か。
「撃ち落せ!」
ドラゴンブレスを回避したナイト・ホーク隊へドラゴンに騎乗した連邦兵は魔法銃を連射した。
それに対しても旋回しながら回避を行うが、ナイト・ホークの装甲にカカカと魔法の銃弾が命中。しかし、装甲を貫くまでには至らなかった。
「勝てるぞ! 以前とは違う!」
「イーグルは首都内に部隊を降ろせ!」
「ランチャーで援護しろ!」
嘗てのリリィガーデン王国は東部戦線でドラゴン1匹に戦線を壊滅されかけた。
だが、今は違う。こちらにはドラゴンライダーに代わって時代の空を制した兵器があるのだ。
ナイト・ホーク隊は機敏な動きでドラゴンを翻弄。横っ腹にロケットランチャーをお見舞いすると、悲鳴を上げたドラゴンは搭乗者であるライダーと共に地上へ落下した。
落下したドラゴンは地上にあった首都の家屋を下敷きにして、ヨロヨロと立ち上がろうとするが空から機銃による追い打ちで絶命した。
他にも別のドラゴンは2機のナイト・ホークによって挟まれ、偏差攻撃を回避できずに被弾。空中で暴れた末に搭乗者である連邦兵士を振り落とす。
「うわあああ!?」
落下した連邦兵を救おうともしないドラゴンはダメージによる悲鳴を上げて、急上昇した後にどこかへ立ち去ってしまう。
残り8匹となったところで、ようやく首都に配備された対空兵器がナイト・ホークを狙い始めた。
ナイト・ホーク隊はフレアを撒いて対空兵器の攻撃を回避しつつ、ドラゴンの相手をせねばならないが……。
「――!?」
「なんだ!?」
突如、ドラゴンの1匹が空中で爆発するようにバラバラになった。木っ端微塵になったドラゴンは血肉を地上に降らせ、仲間のドラゴンライダー達は突然の出来事に動揺を隠せない。
ドラゴン1匹を一瞬で葬ったのは地上にいるサリィであった。
彼女は第一主砲を空に向け、拡散弾をぶっ放したようだ。その攻撃を回避できなかったドラゴンが呆気なく死亡したというわけである。
『邪魔くせえですぅ』
ミサイルランチャーを2門起動して、首都の北側奥に配備されていた対空兵器をマルチロック。
小型ミサイルを発射して対空兵器のほとんどを撃滅してみせる。
その後、サリィは「あとはよろしく」とでも言うようにドラゴンには手を出さず直進を開始。
首都にあった家や商店を破壊して、残骸を踏み潰しながら連邦地上部隊へ主砲を撃ち込みながら狩りを再開した。
「援護するぞ!」
去って行くサリィの代わりに地上部隊を降ろしたイーグルが対ドラゴンライダー戦に参戦。
ナイト・ホークによる牽制、やや後方に控えたイーグルによる機銃とロケットランチャーの猛攻を受けてドラゴンは次々に撃墜されて地上へ落下していった。
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一方、地上の歩兵部隊はブラックチームとグリーンチームが先頭となって、サリィがぶち破った連邦防衛ライン押し上げを後押しする形になっていた。
サリィが突破した防衛ラインの穴を広げるように、リリィガーデン王国軍歩兵隊が身も心も崩れかけの連邦兵を容赦なく食い破る。
西側から侵入し、首都の丁度半分にあたるメインストリートまで押し上げるとグリーンチームに独自の動きが見え始めた。
「ブライアン殿。ご武運を」
「ああ。そちらも」
グリーンチームリーダーのガウインはブラックチームリーダーであるブライアンへ敬礼すると、1個小隊を連れてリリィガーデン王国軍歩兵隊の群れから離れていった。
「このまま大統領官邸まで押し上げる! 続けッ!」
ブラックチームは魔導車隊の支援を得ながら押し上げを再開。メインストリートを北に向かい、まだ正気を保っている連邦軍と対峙する。
連邦軍は崩れかけの家屋やサリィに破壊された魔導車の残骸を盾にして応戦するが、リリィガーデン王国軍に比べて数が少ない。
「他の者達はどうしたァ!?」
「そ、それが! 恐慌状態になった者が多く……!」
連邦兵の多くがサリィの突撃を見て、仲間達が爆発と共に宙を舞うのを見て正気を保てなくなった。
感じた恐怖が何倍にも増幅して、その場で失禁する者さえいた。何故こうなったのか理由は明白である。
連邦軍人を汚染していた麻薬だ。あれは心が弱かった者が手を出していたが、摂取した事でジャンキー共は更に心を弱くした。
夢の中にいるようなフワフワした感覚は人の理性や節度・我慢するといった感情を失わせる。
開放的になって、テンションが上がって、嫌な事を忘れさせてくれる……その裏では、人の心を弱らせていたのだ。快楽主義に思考を偏らせると言えば良いだろうか。
負の感情、嫌な事、辛い現実を薬で封じた結果、心が目の前の巨大な恐怖に耐えられなくなってしまっていた。
祖国の事などどうでもよい。家族や仲間などどうでもよい。自分さえ助かれば良い。誰かがどうにかしてくれるはず。
そう考えた連邦兵は震えながら丸まって、戦闘を放棄したのだ。
「クソ! クソ! 後退だ! 後退ッ!」
彼等の皺寄せは「まとも」な兵士へ生じてしまう。
まともな兵士が必死で防衛ラインを守ろうとするが、リリィガーデン王国軍の歩兵隊と兵器にどんどん殺されていく。
次第に首都を守る連邦兵の中には「まとも」な兵士が消えるだろう。残ったのは使い物にならない「汚染者」だけだ。
「防衛ラインを――」
連邦軍の士官がそう叫んだ瞬間、脳天に穴が開いた。
「連邦を撃滅せよ! 突撃! 1人も逃すなッ!」
士官の脳天に新しいケツの穴を作ったのはマチルダであった。
先行していたブラックチームを援護するように、彼女は新兵で構成された歩兵隊と共に連邦軍の防衛ラインへ攻撃を仕掛ける。
嵐のように銃弾が飛び交う中、マチルダは屋根を駆ける影の正体に気付く。
「ブライアンッ! コスモスに合わせろッ!」
マチルダがブライアンの背中に叫び声をぶつけると同時に、屋根の上から敵陣ど真ん中へ飛び込むコスモスの姿が空中に見えた。
「了解ッ!」
マガジンを交換したブライアンはコスモスの着地地点から左にいる敵の塊へ向けて射撃を開始。
同じく、マチルダは右側へ向かって射撃を繰り返す。
空中を舞うコスモスはアサルトライフルを連射しながら着地して、着地地点にいた敵兵半数を銃殺。
着地後はすぐに駆け出して蹴りや銃のストック部分で相手をぶん殴るといった、バリエーション豊かな体術にゼロ距離射撃を組み合わせてリーズレットに似た殲滅術を見せる。
この辺りは彼女の教えを受けたコスモスらしい戦い方だろうか。
ただ、コスモスはまだ見習い淑女。師匠の動きには追いつけていない。
彼女の背に銃口を向ける連邦兵がいて、コスモスはまだその存在に気付いていなかった。
鬼気迫る表情を浮かべた連邦兵が魔法銃のトリガーを引こうとした瞬間、首元がスパッと斬れて血が噴出した。
「ハッ。大口叩いた割には詰めが甘いよね」
コスモスを狙う連邦兵を殺したのはラムダだった。首都突入後、彼は彼で好き勝手に連邦兵を狩っていたのだが。
「なッ!? 邪魔しないで下さい!」
「邪魔ァ? ボクはボクの思うがままにやってるだけだしぃ~? そっちが殺すの遅いだけじゃ~ん?」
コスモスが手を止めてラムダに文句を言っている間、ラムダは敵の間をスルスルとすり抜けながらも相手の首を狩っていく。
この会話の間、ラムダは10人もの連邦兵を殺害した。
「ざぁ~こ! ざぁ~こ! ぷぷぷ~!」
ラムダは心の底からコスモスを馬鹿にするような、憎たらしい笑顔と共に煽り散らす。
この煽っている間、コスモスが1回瞬きする間に連邦兵の首が3つ飛んだ。
「くッ! このッ!」
言い合っている間に負けてしまう。そう感じたのか、コスモスは顔を奥歯を噛み締めながらラムダとは別の方向に再び駆け出した。
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