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森深くで出会った美少女リリスと異世界転移者、神薙 相馬は、リリスから教えてもらった『召喚』した。
そして、相馬が召喚した獣は、首が八つ生えた大蛇だった。
「あ、あなた、一体何者?」
リリスは、驚いた表情で相馬を見つめた。
「さぁ、一体何者なんでしょうか?」
相馬はリリスをからかうように言った。今思えば、リリスからは賢者一族の子孫ということしか知らない。
「オマエか、ワレを呼ぶものは」
首の八つ生えた大蛇、八岐大蛇は、相馬を見る。
「そうだけど」
「なら、オマエのとなりオナゴは、生け贄か?」
「リリスの事を言ってんのか?」
「知らん。ワレはオマエのとなりにいるオナゴのことを言っているのだ」
何言ってんのこいつ。俺の隣には、リリスしかいないっての。幽霊ですかね。幽霊がいるのか。
「わ、私はリリス・ピオーネ。高貴な賢者一族の子孫よ」
「コウキなケンジャイチゾクのシソン?そんなの知らんわ!」
八岐大蛇は、リリスに怒鳴った。そして、
「ワレには、エサにしか見えない」
と、言い放った。
リリスを見ると、目が死んでいた。面倒くせぇ。異世界に転移して面倒事にしか絡まれない相馬。悪運というスパイスが効きすぎていて、刺激的だ。
そんな時、ごつい鎧を着た勇者が現れた。
「砂煙が起こった方へ向かってみれば……やはり、リリスはそこにいたのか!」
「あ、」
リリスは勇者を見ると、俺の上のジャージ裾を掴んで怯えていた。
よく見れば、リリスの小さな手には斑点のようなのがあった。
「面倒事。さらに増えた」
相馬は小言を言った。
「さぁ、リリス。勇者の俺と一緒にくるんだ!」
勇者は無理やり、リリスの手を引っ張ている。
「ゲミンが!ワレをほおっておくとは何事だ!」
八岐大蛇は、吠える。怒鳴るのではない吠えるのだ。
面倒が増えていく。異世界に転移した瞬間これですか。面倒だ。面倒くさい。面倒くせぇ。
相馬の心は黒くなっていく。
「お前は、リリスの何なんだ」
相馬は、勇者を睨む。
「リリスは俺の仲間だ。勇者のパーティーには、賢者がテンプレだろ」
ドヤ顔で言う勇者。
「おい、オマエら」
「おい、蛇」
「ワレには、名前が」
「ちょっと黙ってろ」
相馬は、いきなり喋りだした八岐大蛇を睨む。
八岐大蛇は、相馬の姿を見て黙った。
相馬の身体の右半分が、黒い炎、黒炎を纏っていた。
「なんだ、その見掛け倒しっぽい姿は、勇者の俺に敵うものなどいない!」
勇者は、相馬に切りかかった。
相馬は、勇者の胸元に右手を当てる。
勇者は、動きを止めた。
「何がしたい。俺の身体はこの神聖なる鎧で守らている。無駄だ」
勇者は、不敵な笑みを浮かべた。これは、完全に勝ったと思ったとき、油断して出る下等種族の人間の行動だ。
元・人間の相馬だからこそわかったのだ。
相馬は、静かに告げた。
「削除」
黒炎が勇者を包む。
「な、なんだこれ」
勇者は、焦り始めた。やっと焦り始めたのだ。
勇者が焦り始めた時には、もう体全体に黒炎が回っていた。
「ぐぁぁーーーーー」
勇者は叫ぶ。そして、
「タスケテ、クダサイ。タスケテ、クダサイ」
と、連呼を始めた。
相馬は、勇者を見てこう言った。
「リリスが助けてくださいって言ってたから無理」
リリスが相馬のジャージの裾を持った震えた手。怖かったのだろう。多分、助けて欲しかったんだ。
相馬は、そう解釈してやったのだ。
そして、深呼吸をして、ゆっくりと述べ始めた。
「リリスの身体に斑点があった。あざだろう。数日すれば綺麗に無くなる。でもな、心の傷は一生消えない。どれだけ、忘れたくても忘れることはできない。人間の心ってのは、そんなもんだ。だから、それを戒めとして、一度犯してしまった過ちを二度と繰り返さないためにするんだ。そして、お前みたいな都合が悪くなれば助けを求めるのも人間だ」
そう告げて、リリスの手を握る。
「お前は、今日から俺だけの女だ」
少女漫画の展開。ご都合主義なのはわかっている。それでもここまでしないとダメなのだ。
相馬は、リリスの柔らかなぷっくりとした唇に、自分の唇を当てた。
リリスの顔色は段々と赤くなっていく。
「勇者。言い忘れたけど、その魔法の止め方は知らん」
そう勇者に言った時には、勇者の姿が無く、まだ、燃え続けている鎧だけが残っていた。
そして、地面には足跡がくっきりと残っていた。
マジで、こんな展開になるとは、思っていなかったです。作者でもこの先の予定は未だ未定でございます。