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Different world life  作者: 「」
序章 異世界への片道切符そして、不明
2/12

 虚無感を漂わせる目は、日に日に色彩を無くし、モノクロに見えるようになっていた。

 パソコンに表示される女の子の髪色も、目も、肌の色も、全てがモノクロに見えていた。

 そして、いつからか、オンラインゲームをするのをやめた。モノクロに飽きてしまったから。

 今日は、親の財布から一万円を抜き、コンビニに向かっていた。何も買うものが無いがコンビニに向かった。服装はジーパンに白色の半そでのシャツ。

 家を出る前に両親の寝室から聞こえてきた声。「あいつを施設に送るしかない」。

 俺は、それが嫌でコンビニへ行ったのだ。

 雑誌コーナーで週刊雑誌を見ていた。一ページ目を開く。そこには、「また芸能人が麻薬取締違反で逮捕。今後どうなるのか、芸能界?!」といった自分にとってどうでもいいことだった。

 ペラペラとめくっていく。すると、面白い記事があった。


『痴漢の冤罪の実態 ~お金の為にやる汚い女の世界~』


 俺の人生を狂わせたにした女の顔が映っていた。目にモザイクはあったが、分かる人には分かる写真だった。

 週刊雑誌は、芸能界にとって厄介かもしれないが、こうしてみると悪いものじゃない。

 俺は、週刊雑誌をもとあった所へ戻した。

 隣を向くと、エロ本の袋とじを見ようと苦悩している人がいた。見た感じ若者だった。

 俺は、甘いコーヒーを買おうと、ドリンクコーナーと向かった。しかし、全てモノクロに見える俺にとってどれが、甘いコーヒーか分からなかった。いつもなら、カフェオレと書かれたペットボトルがあるはずなのだが、今日は無かった。仕方がないので適当に取って、レジに向かった。

 若いアルバイトにペットボトルを渡す。レジスターで、 ピっとして値段が表示され、


「一点で、160円になります」


 俺は、ポケットから一万円を取り出して、若いアルバイトに渡す。


「一万円からのお預かりです」


 レジスターのお金が入っている部分が開き、おつりを取り出していた。


「おつりは、9840円となります」


 どうやら、十円玉が無くなったのか、五円が二枚あった。

 ポケットの中に入れるもじゃらじゃらしてうるさかった。だから、9835円を募金箱に入れた。

 五円玉一枚だけをポケットに入れてコンビニを出た。

 俺の人生を狂わせた女が社会的に終わったのだ。何かご縁があればいいな。五円だけにね。

 四月だというのに外はまだ寒かった。俺は、手をポケットに入れた。そして、家に帰らず、小学生の頃よく遊んでいた公園に行った。

 小さい頃は自分がどんな人生を歩むのかどんな将来を生きたいのか考えたことがなかった。未来より今を楽しんでいた。

 中学三年になり、将来のことを考えて、高校に入学した。だが、今は、ニートとなっている。

 俺はベンチに座り、コンビニで買ったコーヒーのペットボトルを開ける。

 そして、モノクロ色のコーヒーが俺の口の中に入る。

 苦味が口の中いっぱいに広がった。だが、表情に出なかった。味覚は感じたとしてもそれを表す表情を忘れていた。

 一年間も無表情でいれば、人間はこうなるのだろう。

 苦味を味わるようにゆっくりと飲んでいた。これが大人の飲み方なのだろう。

 飲み終えて、ペットボトルをゴミ箱に入れ、ベンチに寝転んだ。空を見上げ、無数の星、そして、三日月が見えた。

 例え、世界がモノクロに見えようと星や三日月は分かった。

 昔、死んだばあちゃんが、「死んだ人は星になる」とか教えてくれたな。そして、空から見守っているって。

 あの頃のキラキラしていた俺は、今はどこにもない。虚無感を漂わせる死神のようになっていた。

 空から俺を見守っているなら俺をどんな感じで見ているのかな。

 目の辺りが熱くなった。そして、水が滴り落ちる。泣いているのかな。

 両親に酷い仕打ちにあっても涙なんか出なかった。むしろ、感情が分からなくなって無表情になっていた。

 そんな俺でも、死んだばあちゃんを思い出して泣くなんて変わっているのかな。

 表情は変わってないが、俺は、泣いていた。いや、泣いているというよりかは、涙を流しているだけだった。

 涙しか流せなかった。どう表情にすればいいのか分からなかった。

まだ異世界に転移していない。

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