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第五章 射〇魔法は攻撃魔法?

◆ 登場人物 ◆


姫。

 十四才。

 わずか十才で痴女であることがバレて、ずっと男に近寄ることを禁止されていたヒト族の少女。

 男に飢えているが『容姿』と『性的な能力』にしか興味がなく、好みから外れている者には、とことん冷たい。


ミナヅキ(水無月)

 姫の侍女の一人。 魔法人形。

 命令に忠実で、とても気が利くが、常識が欠落していて、何をしでかすか分からない。

 それでも姫よりは、少しだけまとも。


サツキ(皐月)

 姫の侍女の一人。 魔法人形。

 ドジでのろまだが、真面目で従順。

 姫とミナヅキの奇行にも、けなげに付いて行こうと努力している。


スイショウ(水晶)

 メイド長。 魔法人形。

 姫を上回る痴女で、性的な知識が豊富。

 集められた男たちに手を出す機会がないか、隙をうかがっている。


姫の結婚相手の候補となる男たち。

 十六才から二十三才のヒト族の貴族。

 結婚対象から外された瞬間に、チリとなって消える魔法がかけられている。

 最初は十人だったが、すでに三人がチリになって、一人が墜落死したので、現在は六人。




◆ これまでのあらすじ ◆


「ハァ…………姫さまが、また一人チリにしてしまったので、残る男は六人になってしまいまシタ……」


「そんなふうに言わないでよ、ミナヅキ。あなただって、結婚相手に妥協はしたくないっていう私の気持ちは、理解できるでしょう?」


「ソレは理解できますが……もうあの男たち以外に、姫さまが結婚できる相手は残っていないのですよ…………魔王との戦争で発動された最終攻撃魔法のせいで、この屋敷の外にいた生き物は、全て死滅してしまいましたから……」


「ああ、もちろん、それは分かっているんだけど……あの男たちは、私が結婚したくないって思った瞬間にチリになる魔法がかけられているでしょう? 自分の心にウソは吐けないから、どうしようもないのよ…………」


「ひ、ひ、姫さま……お、男たちの『性的な能力』なんか調べるのは、もう止めて、ふ、普通の会話などで、気の合う相手を選んだ方がいいのでは……」


「あら、サツキ。そんなの嫌だわ。私が男に求めているのは『容姿』と『性的な能力』だけなんだから。いま残っている男たちの『容姿』に文句はないから、あとは『性的な能力』をハッキリさせるだけよ」


「で、で、ですが、チ〇コの【体積】や【吊り上げ力】や【ストレス耐性】を調べたりするのは、さ、さすがに、やりすぎだと……」


「ニャ! 何を甘いことを言ってるのニャ、サツキ! そういうことを知らニャいまま結婚して、幸せになれるわけニャいだろ!」


「まあまあ、スイショウ。サツキはあなたと違って、男性経験がないから、結婚前に『性的な能力』を調べることの重要性を分かってないのよ…………とは言っても、私も十才から今まで、ずっと男に近寄ることを禁止されていたから、経験は何もないんだけど……でも、まぁ、お父さまたちは、千年後の世界を再生するために、魔法で冬眠しちゃって、私にうるさく言う人は誰もいないから、この後も好きにさせてもらうわよ」


「ひ、ひ、姫さま。お手柔らかに……」




◆ 本編 ◆


 我慢くらべという名目で、メチャクチャな幻覚を見せられた全裸の男たちは、それが終わって、気が抜けたように椅子の上でぐったりしている。


 そんな男たちの肢体を、立体投影魔法の映像で見ながらよだれを垂らしている姫の、春の日差しを浴びた桜のように染まったほおを、指でぷにっと押したくなるのを我慢して、ミナヅキが言う。


「ソレでは、姫さま! 男たちのチ〇コの【ストレス耐性】も問題ないと分かったわけですし、いよいよ試着を始められますヨネ!」


「そうね、ミナヅキ……じゅる…………ついに、あの男たちのチ〇コを堪能す……」


 だが、その時、姫の言葉をかき消すように、部屋の中に謎の声が響き渡る。


「オホホホホホ。お待ちになってほしいザマス、姫さま。結婚相手を決める前に試着をするのは、たいへん結構でございますが、まだ調べおかなければいけないことがあるザマス」


 それを聞いて、ギョっとなる姫。


「うわ…………その声は、家政婦長のツキヨ……面倒なのに見付かっちゃったわ…………」


 姫がそう言いながら周りを見回すと、カーテンが揺れて、ツキヨと呼ばれた魔法人形が姿を現す。


 どうやらこの部屋のどこかに、姫たちにも知らされてない隠し扉があるらしい。


「……聞こえているザマスよ、姫さま。それはともかく、姫さまの現在の使命は、どんなことをしてでも子孫を残すことザマス。であれば、試着する前に、相手となる男の【射〇の飛距離】を調べる必要があるザマス」


 ツキヨのその言葉に、すかさずスイショウが突っ込む。


「ニャ! 【射〇の飛距離】ニャんて、妊娠する確率とは何も関係ニャいって……」


 しかしツキヨは、下の者からのそんな突っ込みを、おとなしく聞くような性格ではない。


「黙らっしゃい、スイショウ! メイド長の分際で、お城に仕えて八百年を超える、このツキヨの言うことが間違っているとでも言うザマスか!」


 ここで働く女の中で最も偉い家政婦長にそう言われては、スイショウも黙るしかなく、代わりに姫がツキヨをなだめる。


「あらあら、ツキヨ。あなたの言う【射〇の飛距離】も、後でちゃんと調べるから、そんなに怒らないで…………ただ、それを調べるよりも先に、試着を……」


 けれどツキヨは、姫のその言葉すら遮ぎってしまう。


「だめザマス! 先に試着してしまって、気に入った男ができたら、その後で【射〇の飛距離】が短いと分かった時に、もめるザマス! 試着など後回しザマス!」


 調べても意味がない【射〇の飛距離】なんかのために、試着に待ったをかけられて、姫はウっとなるが、どうにか堪える。


 王さまが魔法で冬眠している今、この屋敷で働く女たちを束ねる家政婦長と衝突してしまっては、面倒なことになるのは必至だからだ。


 それで姫は目をつむり、心を静めて小さくつぶやく。


「…………ふぅ……こんな調子じゃ、いつまで経っても試着なんてできないわ…………まずは、ツキヨをどうにかしないと……」


「何でしょうか、姫さま? 問題があるなら、ハッキリおっしゃってほしいザマス!」


「……あら、独り言よ。気にしないで…………それよりツキヨ。男たちの【射〇の飛距離】なんて、どうやって調べるつもりなの? 頭ごなしに命令して、あの男たちが反抗的になってしまうと、結婚相手を選びにくくなるから、こちらの意図は悟られないように調べてほしいのだけど……」


「分かってるザマス、姫さま! ちゃんと男たちには気取られない方法で調べるザマスから、このツキヨにお任せください! オホホホホホホホ」




 ツキヨのその高笑いに、姫が不安でいっぱいになっているのと同じころ……。


 これまでの試練をどうにか生き延びた男たちは、全裸のまま部屋の中央に集まって、いつも『ギャハハ』と笑っていた男について話していた。


「押忍! とうとう、あの四番チェーンソーもチリになって、残るは六人でありますが……一体、姫さまは、どのような基準で、結婚相手を決めようとしているのでありましょうか…………確か四番の男は、チリになる直前に、姫さまは自分たちのチ〇コを調べているのではないかと言ってましたが……」


 傷だらけの身体の、胸と背中に三の番号と握りこぶしのマークが浮かび上がったカラテの男がそう言うと、日に焼けた野性的な身体の五番金属バットの男が大声を出す。


「バカっっっ! あの四番チェンソーの言葉を真に受けるんじゃねえっっっ! 姫さまとその子孫は、王さまたちが冬眠している間、この世界を見張るっていう重要な役目を託されているんだぞっっっ! そんな立場で結婚相手を選ぶのに、チ〇コなんか調べるわけねえだろっっっ!」


 だが、その言葉に対して、小柄だが均整のとれた身体の六番ブーメランの男が異を唱える。


「ぐす……待ってください…………ボクだってちょっと前までは、重い責任を担っている姫さまが、チ〇コを調べるなんてあり得ないと思っていました……ですが、さっきの我慢くらべや、これまでに受けた体力測定や度胸だめしのことを考えたら、そういう可能性もあるんじゃないかと思えてきたんです…………ぐす」


 すると、それを聞いて、ネコ科の獣のようなしなやかな身体をした七番カタナの男が微笑む。


「ふふふふ……そういえば、わたしたちは全裸のまま、水を張ったバスタブの上で腕立て伏せをさせられたり、屋敷の上空から自由落下をさせられたりしたんだったね…………それらのことを思い返せば、四番チェーンソーが言っていたことも本当かもしれないと思えてきてしまう気持ちは分かるよ…………でも、さすがに姫さまがチ〇コを調べているっていうのはどうかな……まあ、わたしはそれでも別に構わないけどね…………ふふふふふ」


 さらに、彫刻のような完璧な身体をした八番ハルバードの男が言う。


「ふん……これまでに我らがやらされてきた意味不明な行為のことを考えれば、姫さまがチ〇コを調べている可能性があることも否定はできん…………ただ、それがもしも本当ならば、王さまが冬眠している間にこの世界がどうなってしまうか、少し心配だな……」


 しかし、その言葉とは裏腹に、八番ハルバードが何かを心配しているような様子は微塵もなく、少女のような美しい肌をした十番チャクラムはあきれる。


「ふぅ…………あなた、本当はそんなこと、ぜんぜん心配していないでしょう? ぼくは、ちゃんと分かっていますからね……それはともかく、たとえ姫さまが、本当にぼくたちのチ〇コを調べているのだとしても、それには深い事情があるからに決まっています! 姫さまは、きっとこの世界のことを考えて、涙を流しながらチ〇コを調べているんですよ!」


「押忍! なるほど、姫さまに深い事情があるというのなら、チ〇コを調べるというのも仕方がないことであります! 押忍!」


「ふざけんなっっっ! チ〇コを調べないといけないような深い事情って、どういう事情だよっっっ! 具体的に言ってみろっっっ!」


「ぐす……姫さまは、どうあっても子孫を残さなければいけませんから、やっぱり、ちゃんと子供ができるかどうかを調べているんでしょうか…………ぐす」


「ふふふふ……もしもそうだとしたら、チ〇コではなくて、精○を調べるんじゃないのかい? だけどわたしたちは、これまでそういうものを調べられたことはないじゃないか」


「ふむ…………どうやら、姫さまの考えを推し量るには、まだまだ情報が足りないようだな……まぁ、この後、さらに何人かがチリになれば、いろいろと分かってくるだろうから、それまで待てばいいだろう…………」


「…………もう慣れましたけど、次はあなたがチリになるかもしれないのに、その余裕はさすがですよ……」


 とか何とか、男たちが話していると、いつものように、ミナヅキの声が部屋の中に響き渡る。


『ヨシ、キサマら! おしゃべりは、そこまでだ! これから、キサマらの魔法に対する耐性を調べさせてもらう! メイドたちの案内に従って、屋敷の裏庭に出るノダ!』


 という言葉と同時に、部屋に入ってきたメイドたちによって、男たちが連れて行かれると、離れた部屋から立体投影魔法でその様子を見ていたツキヨがつぶやく。


「不思議ザマス……この男たちは、全員が伯爵の位を相続しているのに、全裸にされて、身体に番号まで振られて、性奴隷のような扱いをされながら、何でこんなにおとなしいのザマスか…………ミナヅキ?」


「……モチろん、普通の貴族なら、こんな扱いをされたら怒るでしょう…………ですが、彼らはみんな、士官学校の生徒か軍人ですので、軍での生活によって、理不尽な扱いをされることに慣れてしまっているのでありマス!」


「まあ! 軍とは恐ろしいところザマス! そう言えば、国王陛下や王太子殿下も士官学校を卒業していますが、あの方々は無事だったのザマスか!」


「シッ……王太子さまのことは、ここではなるべく話さないでください。姫さまの機嫌が悪くなりますので…………あと、さすがに王族の者は、士官学校でも理不尽な扱いを受けることはないです……ここに集められた男たちは、しょせんは伯爵で、この国の軍隊では大尉までしかなれない身分ですから、きっといろいろあったと思いますケド…………」


 ツキヨとミナヅキがそう話していると、それを横目に見ながら、姫がサツキとスイショウを手招きして、二人に小声で言う。


「……ねえ、あなたたち。私は早く試着がしたいのだけど、あのツキヨを何とかして、ここから遠ざけられないかしら?」


「そ、そ、そう言われましても、わ、私たちの言葉など、か、家政婦長は聞いてくれませんし…………」


「ニャ! この屋敷のどこかで火事でも起こせば、あの女も姫さまから離れると思いますが、ここのメイドたちは全員が消火魔法を使えるので、それをやっても、男一人と試着する時間を稼げるかどうか、といったところですニャ!」


「はぁ…………面倒ね……」


 この状況にうんざりした姫が、ため息を吐くと、スイショウが後ろを向いて小さくつぶやく。


「……でも、ニャんとかして、ツキヨを利用することができれば、姫さまに見付からずに男たちとイイコトができる機会を、作れるかもしれないニャ…………」


「なにか言った、スイショウ?」


「ニャニャ! 何でもニャいですニャ!」


 そして、姫たちがそんなことを話しているうちに、屋敷の裏庭に出た男たちは、メイドたちの手で、そこに並んでいる石像の台座に、太い鎖で縛られていき、そんな中で三番カラテが不安そうな顔をする。


「押忍! 今回は、魔法に対する耐性を調べると言われましたが、やはりそれは見せかけで、本当はチ〇コを調べるのでありましょうか! 押忍!」


「だから、そんなわけねえって、さっきから言ってるだろっっっ! どんな事情があっても、結婚相手をチ〇コで選ぶヤツなんかいねえよっっっ!」


「ぐす……それよりも、魔法に対する耐性を調べるって、ものすごく危険なことをされる気がするんですけど…………ぐす」


「ふふふふ……確かに、これから、いろいろな攻撃魔法を受けさせられそうだね…………二つ前にやった度胸だめしの時は、事故で二番クサリガマが死んでしまったけど、今回もきっと容赦ないだろうなあ……ふふふふふふ」


「やれやれ……どうせやるなら、いっそ一人しか生き残れないくらい徹底的にやって、ここで結婚相手を決めてしまってほしいんだが……」


「なに恐いことを言ってるんですか! いくら何でも、いっぺんに五人も死ぬようなことをされたら困ります!」


 とか何とか話す男たちの姿を、立体投影魔法の映像で見ている姫は、試着できないことを苦々しく思いつつ、それを顔に出さずにツキヨに尋ねる。


「…………それで、魔法に対する耐性を調べるって言うからには、あの男たちに何らかの攻撃魔法をかけていくのよね? そんな状況でどうやって【射〇の飛距離】を測るつもりなの?」


 そう聞かれて胸を張るツキヨ。


「オホホホホホ。実はわたくし、究極の攻撃魔法である、射〇魔法が使えるのザマス!」


 その言葉を聞いて姫たちがギョっとする中、何も分かっていないサツキが、首を傾げる。


「ど、ど、どういうことですか? な、なんで射〇させる魔法が、きゅ、究極の攻撃魔法になるんですか?」


「おや、サツキ。あなたは、そんなことも知らないのザマスか。いいでしょう。わたくしが教えてあげるザマス」


 ツキヨはそう言うと、サツキの方へ歩きながら言葉を続ける。


「多くの魔法には、『炎』『氷』『雷』などの属性があるザマスが、攻撃魔法を防御するには、その属性ごとの防御力を別々に鍛えて、耐性を上げなければいけないザマス。そのくらいは分かるザマスね?」


「は、は、はい。それは分かりますが……」


「ところが射〇魔法は、分類される属性がなく、どんな属性の防御力を鍛えても耐性を上げることができないのザマス! それで、あらゆる男に間違いなく効果があることから、究極の攻撃魔法と言われるのザマスよ!」


「え? で、で、でも、そもそも射〇させるだけの魔法なんて、こ、攻撃魔法でも何でもないのでは?」


 サツキのそのとぼけた発言に、ツキヨが怒る。


「なに寝ぼけたことを言っているザマスか! 強制的に射〇させる魔法を連続でかけられて、無理やり何度も射〇させられたら、どんな男だって心臓マヒで死んでしまうザマス! これが攻撃魔法でなくて、何が攻撃魔法ザマスか!」


 と怒鳴られて、サツキが涙目になって縮こまると、ミナヅキがその説明を補足する。


「モトもと射〇魔法は、魔王軍が開発したもので、初めてこの魔法が使われた時は、あらゆる耐性に優れた兵士が次々と死んで、前線はパニックになったという話だ。ただ、この魔法は習得するのが難しく、魔王軍にも使える者は少なかったので、精力が絶倫な者を集めることで、どうにか対処したらシイ」


「ニャ! そう言えば、今の王さまが、まだ王位を継承してニャかったころに暗殺されそうにニャった時も、その魔法で攻撃されたらしいニャ! そうですよね、姫さま!」


「ええ、そうよ、スイショウ。その時は、護衛の騎士たちがその魔法を五~六回くらっただけで死んだのに、お父さまは十回以上も耐えて、返り討ちにしたんだって!」


 そう誇らしげに語る姫の言葉で、その状況を頭の中に思い浮かべたらしいサツキは、目を泳がせながら相づちを打つ。


「さ、さ、さすがは王さまですね…………」


「オホホホホホホホ。とてもすばらしいお話ザマス! それはともかく、今からわたくしは、あの男たちにいろいろな攻撃魔法をかけていって、最後に射〇魔法をかけようと思っているザマス! これなら、あの男たちも、それが【射〇の飛距離】を測るためとは気が付かないはずザマス! よろしいですね、姫さま?」


 などと聞かれても、そもそも姫は【射〇の飛距離】なんかに興味はなく、早く試着を始めたいとしか思ってないので、その返事は適当だ。


「何でもいいから、さっさと始めてちょうだい」


 ともあれ、その言葉で姫の承認は得られたわけで、ツキヨがニタリと笑うと同時に、裏庭で全裸のまま縛られていた男たちは、攻撃魔法に包まれて、燃やされたり凍らせられたり感電させられたりするのを、ただひたすら耐えるはめになる。


 それでも男たちの魔法に対する耐性は、かなり高かったようで、それからいくつかの攻撃魔法をくらっても、みんなしばらくは無傷だった。


 だが、ついに射〇魔法がかけられ始めると、その様子は一変する。


「押忍! まさか、わが軍の中でも習得した者が極めて少ない、この魔法を使える者が、この屋敷にいるとは思わなかったであります! 押忍!」


「くそっっっ! これは反則だろっっっ! この魔法は耐性とか上げても防げねえんだからっっっ!」


「ぐす…………まさか異世界に転移してきて、こんなセクハラ魔法をかけられるなんて……酷いです…………ぐす」


「ふふふふ……こんな魔法、最前線では何度もくらったことがあるよ…………これで怯む男は、姫さまと結婚する資格なんかないんじゃないかなぁ……ふふふふふ」


「ふむ……この魔法で、ここにいる者がごっそり減ってくれるといいのだが…………」


「むぅううう……この余裕がある二人が、ちゃんと姫さまを敬っているのなら、何も問題はないのですがぁ…………ぬぬぬ……ぼくだって、この魔法でさえなければ、ちょっとは耐えられるのですけどぉ……ぐぎぎぎ…………」


 と、男たちの反応には多少の差があるものの、ほどなくして結果が出始め、それを見ながらツキヨが言う。


「オホホホホホ。どうやら【射〇の飛距離】六位は、少女のような肌をした十番チャクラムの男ザマスね。まぁ、最下位とはいえ、あれだけ飛ぶなら平均以上ザマス。姫さまの結婚相手の候補として残してあげてもいいでしょう。オホホホホホホホ」


「ニャ……だから【射〇の飛距離】は短くても問題ニャいと……」


「あぁん? 何か言ったザマスか、スイショウ!」


「いえ、ニャんでもニャいです…………」


 ちなみに、五位から一位までの順位は以下のとおりだ。


 五位。異世界から転移してきたと主張して、泣いてばかりいる、小柄だが均整のとれた身体の、六番ブーメラン。


 四位。『押忍』が口癖で、傷だらけの身体の、三番カラテ。


 三位。常に怒りをみなぎらせて、語尾に『っっっ』を付けてしゃべる、日に焼けた野性的な身体の、五番金属バット。


 二位。感情を表に出さない、彫刻みたいな身体の、八番ハルバード。


 一位。いつも余裕の笑みを浮かべている、ネコ科の獣のような身体の、七番カタナ。


 ところが、その結果について、ミナヅキが、


「マァ、ほぼ見た目どおりの、順当な結果ですヨネ……」


 と口にした瞬間、四位だった三番カラテがハジけてチリになる。


 バン!


「あぁあぁぁぁ! なんザマスか、姫さま! わたくしが最下位だった六位の男も残していいと言ったのに、どうして四位の男をチリにしてしまうザマスか!」


「え? ああ、ごめんなさい。うっかり、またやっちゃったわ……」


 そう謝る姫を、この事態にもう慣れっこになったミナヅキが、ジトっとした目で見る。


「…………ソレで、姫さま……あの三番カラテの、何が気に入らなかったのでございまスカ?」


「ああ、射○の時の表情が、ちょっと……」


「ムキー! 射○の時の表情くらい、我慢してほしいザマス!」


「あら、ツキヨ。私だって、自分も気持ちよくなっている時なら、相手の表情くらい大目に見るわよ。でも、こんな冷めた気分でいる時に、微妙な表情を見せられたら、厳しい評価になっても仕方がないじゃない」


 と言ってプイっと顔をそむける姫に、ツキヨはなおも詰め寄るが、その後ろにいるミナヅキとスイショウはやれやれと肩をすくめ、サツキ一人だけが唖然としている。


 こうして五人目の脱落者が出たことで、男たちの数は、ついに半分になってしまった。


 まさか姫の結婚相手選びが、こんな事態になっているとは、冬眠している王さまたちも夢にも思ってもいないだろう……。


 そして、男たちの悪夢は、まだまだ続くのだ…………。




◆ 次回予告 ◆


「さてと。【射〇の飛距離】も問題ないと分かったことだし、さっそく試着を始めましょうか」


「あああっ! だめザマス、姫さま! 試着する前に調べなければいけないことは、まだ残っているザマス! 次は【連続で射〇できる限界数】を……」


「嫌よ、ツキヨ。私は今すぐ、あの男たち全員と試着するわ。何か調べるなら、その後で勝手にやってちょうだい」


「そんなことは、たとえ姫さまでも許さないザマス! 前にも申し上げたとおり、先に試着して、特定の男を気に入ってしまったら、後でその男に問題が見付かった時に、もめるザマス!」


「後でもめようが知ったことじゃ……」


「ラララ ♪ ずいぶん、にぎやかですね ♪ 姫さま ♪」


「その歌声は、家庭教師のヒイラギ先生!」


「なんザマスか! 姫さまの周りには、こんなおかしな者しかいないのザマスか!」


「…………ニャ……お前が言うニャ……」


「ラララ ♪ 事情は全て聞かせてもらいました ♪ でも、試着はやめた方がいいですよ、姫さま ♪」


「なぜですか、ヒイラギ先生!」


「ラララ ♪ なぜなら男は、相手の女によって射○の量が変わるからです ♪ 全員と試着なんかして、変な女と思われたら、きっと射○の量が減って、子供ができにくくなります ♪」


「なんですって…………いわゆる、身体はウソを吐かない、というやつですね……しまった! それじゃ試着ができないわ!」


 次回、第六章 『男なら死ぬまで射○しろ!』 お楽しみに。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 設計年数の古いツキヨが、射○の飛距離という迷信にこだわっているのが、なんとなくツボです。 お局様ですね。 「どんな事情があっても結婚相手を○○で選ぶやつなんかいねえ」・・・か、可哀想っ!…
[良い点] >恋愛シミュレーションゲームで、選ばなかった相手が死ぬルールだったらスゴい事になるだろうなぁ  もう、ここを見た瞬間、天才かと。  わたしは最近各所で「アンハピエンは苦手です」とぼやいて…
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