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第三章 重要なのは【吊り上げ力】?

◆ 登場人物 ◆


姫。

 十四才。

 わずか十才で痴女であることがバレて、ずっと男に近寄ることを禁止されていたヒト族の少女。

 男に飢えているが『容姿』と『性的な能力』にしか興味がなく、好みから外れている者には、ひたすら冷たい。


ミナヅキ(水無月)

 姫の侍女の一人。 魔法人形。

 命令に忠実で、とても気が利くが、常識が欠落していて、何をしでかすか分からない。

 それでも姫よりは、少しだけまとも。


サツキ(皐月)

 姫の侍女の一人。 魔法人形。

 ドジでのろまだが、真面目で従順。

 姫とミナヅキの奇行にも、けなげに付いて行こうと努力している。


姫の結婚相手の候補となる男たち。

 十六才から二十三才のヒト族の貴族。

 結婚対象から外された瞬間に、チリとなって消える魔法がかけられている。

 最初は十人だったが、すでに二人がチリになって、現在は八人。




◆ これまでのあらすじ ◆


「…………ソレでは、姫さま……今の状況を、もう一度おさらいしましょウカ……」


「そんなに難しい顔をしないでよ、ミナヅキ。チ〇コの体積が同じというだけで、一人の男をチリにしちゃったのは、よくよく考えてみれば、酷かったかなぁ…………って、思いなおしたところなんだから」


「ひ、ひ、姫さま……よくよく考えなくても、ひ、酷すぎです…………」


「あら、サツキ。そう言うあなただって、靴の試着をする時に、同じサイズのものを二回も試すなんて、無駄だと思うでしょう?」


「お、お、男たちは、く、靴とは違います……」


「フゥ…………いいですか、姫さま。魔王との戦争で発動された最終攻撃魔法のせいで、この屋敷の外では、あらゆる生き物が生存できなくなって、もとの環境に戻るまでに千年はかかルト……」


「分かっているわよ、ミナヅキ。それで、お父さまたちが魔法で冬眠している間、この世界で、さらなる問題が起きないか見張る役目を、私とその子孫が託されたんでしょう?」


「ソノとおりです、姫さま! そして、このような状況ですから、残された資源をできるだけ節約しなければならず、姫さまの結婚相手として集められた男たちも、一人しか生かしておくことができません! そのため男たちには、姫さまから結婚しないと思われた瞬間に、チリとなって消える魔法がかけらレテ……」


「だから私は、一時の感情なんかで男たちをチリにしてしまわないように、気を付けないといけないのよね…………もちろん、ちゃんと理解はしているんだけど……」


「お、お、お願いします、姫さま。つ、次こそは、くれぐれも慎重に…………」


「もう! そんなこと言ったって、私が結婚する相手なんだから、どんなふうに選んだって、私の勝手でしょう!」




◆ 本編 ◆


 水を張ったバスタブの上で、全裸で腕立て伏せをさせられた男たちは、短い時間のうちに二人がチリとなって消えたせいか、もとの部屋に戻ってから、椅子の上でぐったりしている。


 魔法で立体投影された男たちのその姿を、離れた部屋にいる姫が飽きもせずに眺めていると、後ろに控えていたミナヅキが、何かをあきらめたように言葉をしぼり出す。


「……ヒメさま、分かりました…………チリになってしまった男のことは、もう私も気にしないことにします……チ〇コの体積が同じなら試着しても意味がないという、姫さまのお言葉には、つい私もうろたえてしまいましたが…………結婚相手をどのように選ぶかは、姫さまの自由デス……」


「ようやく分かってくれたのね、ミナヅキ」


 そう言われた侍女は、振り向いた姫の、朝露に煌めく花のような、あどけない笑顔を見て、心がトロけてしまいそうなるのを懸命にこらえながら苦言を呈する。


「シカし、姫さま! チリになって消えた男は、もう二度と戻ってきません! 後になって、あの時チリにした男を、やっぱり残しておけばよかったなどと後悔しないよう、十分にお気を付けくだサイ!」


「大丈夫よ! ちゃんと、よーく考えて、最高の男を残すから、期待していて!」


 本当にちゃんと考えているのか、どうにも怪しい姫が、のんきにそう答えると、ミナヅキのとなりに立っているサツキが、おずおずと尋ねる。


「と、と、ところで姫さま……チ、チ〇コの体積が同じだった二人の男ですが、チ、チリになってしまった九番ハンマーは、い、生き残った二番クサリガマと比べて、な、何が劣っていたのですか?」


「あら、サツキ。私に男の優劣なんて、分かるわけがないでしょう。だから、『どちらにしようかな』って、適当に決めたわ」


「や、や、やっぱり、適当に決めたのですね…………」


 と、うなだれるサツキに、姫はあわてて言い訳をする。


「ちょっと待ってよ、サツキ。私は自分の結婚相手を『容姿』と『性的な能力』だけで決めるって、最初から言っているでしょう。いま残っている男たちは、どれも容姿に文句はないし、あとは性的な能力で決めるしかないんだけど、それは試着してみるまで分からないんだから、今は適当に決めたって仕方がないじゃない」


 ぬけぬけと、そんなことを言う姫に、サツキもミナヅキも二の句が継げない。


 そして姫は、黙り込んだ二人のことなど気にも留めずに、全裸の男たちを見つめて、よだれを垂らす。


「じゅる…………じゃあ、男たちのチ〇コの体積も測れて、順位も分かったことだし、さっさと試着を始めましょうか……」


 そう言いながら、姫が椅子から腰を上げると、どこからか、それを止める声がする。


「待つですニャ、姫さま! 試着の順番は、チ〇コのサイズだけで決めてはダメですニャ! もっと重要ニャことを、忘れていますニャ!」


 その言葉を聞いて、動きを止める姫。


「あ……その声は、メイド長のスイショウ?」


「そうですニャ! 姫さまの侍女のミナヅキが、私にニャいしょで、メイドたちにバスタブを運ばせていたので、失礼とは思いましたが、こっそり様子を覗かせてもらいましたニャ!」


 姫が声のする方に目をやると、いつの間にか部屋の隅に、サツキとミナヅキとは別の魔法人形が立っている。


 それを見て、姫は椅子に座りなおし、ひじ掛けに、ほおづえをつく。


「……それで、スイショウ。チ○コにおいて、サイズよりも重要なものって何なの?」


「それは【吊り上げ力】ですニャ」


「ん……っと、チ○コの【吊り上げ力】って、上へ向かって、そそり○つ力、ってこと?」


「そのとおりですニャ! そもそも、チ○コを○○○○に○○されると気持ちがいいのは、クリ〇〇スを内側から刺激されるからですニャ! その刺激に重要なのが【吊り上げ力】ですニャ!」


「ちょっと待って、スイショウ。そんなに伏字だらけだと、何を言っているのか、読者が分からないわよ」


「そんニャことは、ないですニャ! この小説はR15ですが、十五才以上ニャら、この程度の伏字は、分かって当然ですニャ!」


「そうかしら? …………ねえ、サツキ。クリ〇〇スって、何のことか分かる?」


「え、え、えーと…………ク、クリスマスでしょうか?」


「ニャ! 何でこの流れで、クリ〇〇スと書いてあるのを、クリスマスと読むのニャ! だいたい、クリスマスを内側から刺激されると気持ちいいって、どういう現象ニャ! 説明してみろニャ!」


 メイド長であるスイショウが、そう怒鳴ると、サツキは、ヒっと言って小さくなる。


 ちなみにクリスマスというのは、大昔に異世界から転移してきた者が広めた、キリスト教という名の宗教に関連する行事だ。


 ただし、異世界から転移してきた者が実在することは、この世界でも、ごく一部の者にしか知られておらず、ほとんどの者は、キリスト教が異世界の宗教だとは、夢にも思ってない。


「待って、スイショウ。サツキは天然なところが可愛いんだから、そこを怒っちゃダメよ」


「これは失礼しましたニャ! ついアツくニャって、姫さまの侍女を矯正してしまうところでしたニャ!!」


「それよりスイショウ。チ〇コは大きさだけじゃなく、【吊り上げ力】も重要っていう、あなたの主張が正しいとして、その力はどうやったら測れるのかしら?」


「任せてくださいニャ、姫さま! 実は私の〇〇〇〇は、チ〇コの【吊り上げ力】を測定できる機能を、標準装備しており……」


 と、スイショウがふざけたことを言いだしたので、ミナヅキが憤慨する。


「チョっと待て、スイショウ! お前、メイド長の分際で、姫さまと結婚するかもしれない男たちとセックスするつもりか! さては、そもそもここに現れたこと自体、それが目的ダナ!」


「ギク……そ、それは誤解ニャ! 男たちの裸を見ていたら、つい我慢できなくニャって…………みたいニャ、ふしだらニャことを、私が考える訳がないのニャ!」


「ウソを吐け! 姫さま、こいつを放っておいたら、隙を見て男たちに手を出すに違いありません! 今すぐ初期化して、まともな人格に変えてしまいまショウ!」


「あらあら、ミナヅキ。スイショウが私より先に、あの男たちとセックスするなんてことは、もちろん絶対に許さないけど、彼女の今の人格は、私もけっこう気に入っているから、初期化なんてしないわよ」


「デスが、男たちの安全を第一に考えるナラ……」


「いいから聞いて、ミナヅキ。あなたとサツキがしっかり見張れば、スイショウも男たちには手を出せないでしょう? それにスイショウの知識は、男たちの『性的な能力』を見極めるのに役に立ちそうだし、初期化してしまうのは、もったいないわ。なにしろ魔法人形たちの身体は、人間と同じように造られているから、お城でもメイドたちに手を出す男は多かったもの。それを管理するスイショウなら、性的な知識をまだまだたくさん持っているはずよ」


「…………グヌぬぬ……ヒメさまが、そこまでおっしゃるのなら、仕方がありまセン……」


 ミナヅキはそう言うと、いつでも飛び掛かれるように構えていた手を下ろし、胸をなでおろすスイショウをにらみながら、悔しそうに後ろに下がる。


「でも、ミナヅキ。スイショウの言う、チ〇コの【吊り上げ力】は、何とかして測定したいわ。スイショウを男たちに接触させることなく、それを調べる方法がないか、考えてちょうだい。あと、男たちがそれに反抗すると面倒だから、前回のチ〇コの体積を測った時と同じように、こちらの意図を男たちに悟られない方法がいいわ」


 という姫の要望を聞いて、うなだれていたミナヅキは、ピっと姿勢を正す。


「ハイ! お任せください、姫さま! スイショウを男たちに接触させず、こちらの意図を男たちに悟られない方法で、必ずやチ〇コの【吊り上げ力】を測定してみせます!」




 ミナヅキが大きな声で、そう返事をしたのと同じころ…………。


 姫の結婚相手として集められた、八人の全裸の男たちは、さっきバスタブの上で、腕立て伏せをしている最中にチリになった、九番ハンマーについて話していた。


「……拙者はそもそも、あの腕立て伏せは、弱体化魔法で妨害されながら、どれだけ続けられるかという、精神的な強さを見るものだと思っていたので御座るが…………なぜ姫さまは、まだ誰もバスタブに落ちていない途中の段階で、あの九番ハンマーをチリにしてしまったので御座ろうか……」


 細く引き締まった身体の胸と背中に、数字の二の番号とクサリガマのマークが浮かんだその男が、長い前髪を指で払いながら、そうつぶやくと、長椅子のとなりに座る、短髪で身体中が傷だらけの三番カラテの男も、それに同意する。


「押忍! 自分も、九番ハンマーが、あのタイミングでチリにされてしまったのは、まったく理解できないであります! 姫さまは、一体、どのような基準で、結婚相手をお選びになっているのでありましょうか! 押忍!」


 と、二人が話していると、やせているが動くと筋肉が浮き出し、高い身体能力があると思われる四番チェーンソーの男が笑う。


「ギャハハハ! たぶン姫は、あの九番のチ〇コが気に入らないトか、そんナくだらなイ理由で、結婚対象かラ外したんジャないノか! ギャハハハ!」


 たいして考えもせずに発したであろう、四番チェーンソーのその言葉は、前回に続いて今回も的を得ていたのだが、相変わらずそれが正しいと思う者は誰もおらず、日に焼けた野性的な身体をした五番金属バットの男が、自分が座っていた椅子を倒しながら、勢いよく立ち上がる。


「テメエ、なに適当なことを言ってんだっっっ! いくら何でも、チ○コが気に入らないなんて理由で、結婚対象から外される訳がねえだろっっっ! それに、あの九番ハンマーのチ〇コは、オレたちの中でも、小さい方じゃなかったぞっっっ! そもそも、ここにいる男たちの中で、最もチ○コが小さいのは、テメエじゃねえかっっっ! だったら、チ○コが気に入らないなんて理由でチリにされるのは、テメエじゃなきゃ、おかしいだろっっっ!」


 つばを飛ばしながら五番金属バットが詰め寄るが、四番チェーンソーはどこ吹く風と、それを受け流す。


「ギャハハハ! これダから栄養が全部チ○コに行っテるバカは困るンだ! チ〇コが気に入らナいと言ってモ、小さいかラ不満だトは限らないダろ! 大きいホど偉いト思っていルお子様は、そんナことモ分かラないノか? ギャハハハハ!」


 そう言われた五番金属バットが、四番チェーンソーにつかみかかろうとするのを、小柄だが均整のとれた身体の六番ブーメランの男が、間に入って止める。


「グス……姫さまは、ご自身のお考えで、結婚相手を決めようとなさっているんですから、ボクたちが、それぞれの基準で、それを推し量ろうとしても無意味です…………そんなことでケンカなんかしないでください……グス」


 泣きながらそう諭す六番ブーメランに毒気を抜かれて、五番金属バットがしぶしぶ引き下がると、ヒト族でありながらも、ネコ科の獣のような、しなやかな身体をした七番カタナの男が、けだるそうに微笑む。


「ふふふふ…………さっきチリになった九番ハンマーの前に、一番ヌンチャクがチリになった時にも、同じことを言わせてもらったけど……きみたちは、ちょっと取り乱しすぎだよ…………まだ二人がチリになっただけなのに、今からそんなことでは、先が思いやられるなぁ……わたしたちが、いくらジタバタしたって、この後で、さらに七人がチリになることは、変えようがないんだからね…………ふふふふふ」


 という言葉に、部屋の雰囲気が一気に重くなるが、それを発した本人は涼しい顔で、そんな空気の中、彫刻のような完璧な身体を持つ八番ハルバードの男が、平然と口を開く。


「ふむ…………より多くの者がチリになるほど、姫さまが求めている男の傾向が明らかになるから、生き残った我らにとっては好都合だ……この調子で、どんどんチリになってくれると、ありがたい」


 自分がチリになるとは微塵も思っていないらしい、七番カタナと八番ハルバードの二人の言葉を聞いて、少女のような美しい肌をした十番チャクラムの男が、苦々しげに言う。


「…………次に誰がチリになるか分からないこの状況で、よくそんなに落ち着いていられますね……ぼくには、そんな胆力はありませんよ…………でも、あなたたちが二人とも、姫さまを、まったく敬っていないことは、ちゃんと分かっていますからね! ぼくの目が黒いうちは、あなたたちの好きにはさせません!」


「ふふふふ……きみは、さっきチリになった九番ハンマーと気が合っていたようだから、彼が消えたことで、もっと落ち込むかと思っていたんだが…………どうやら、そんな心配はいらなかったようだね……ふふふふ」


 七番カタナにそう言われて、十番チャクラムは下を向く。


「……ぼくだって、あの人が、こんなに早くチリになってしまったことには、ショックを受けています…………でも、それが姫さまの決めたことなら仕方がありません…………ぼくは、その判断に、ただ従うだけです……」


「ふふふ……あの九番ハンマーもそうだったが、きみたちの姫さまへの忠誠心には、本当に頭が下がるよ…………ただし、姫さまが、結婚相手にそういうものを求めているかどうかは、まだ分からないけどね……ふふふふ」


 姫が男たちに求めているのは、『容姿』と『性的な能力』の二つだけ……などとは知る由もない男たちが、そんな会話をしていると、離れた場所にいるミナヅキの声が、その部屋に響き渡る。


『キサマら、よく聞け! 次は、度胸試しをしてもらう! 全員、メイドたちに従って、この屋敷の中庭に出るノダ!』


 という言葉と同時に、部屋に入って来たメイドたちに急き立てられて、男たちは全裸のまま廊下を進む。


「ぬう……今度は、度胸試しで御座るか…………だが、前回の腕立て伏せでは、測定している途中で九番ハンマーがチリになったわけで御座るから、今回もその言葉どおりに受け取るのは危険で御座ろう……各自、十分に気を付けるで御座る」


「押忍! しかし、あの九番ハンマーがチリにされた理由が不明のままでは、何に気を付ければいいのか、さっぱり分からないであります! 押忍!」


「ギャハハハハ! オレサマは、チリになるこトなんか、ちっとモ恐くナいから、気を付ケる必要なンかなイけどナ! ギャハハハハ!」


「くそっっっ! 千年後の世界を再生するメンバーに入れられていれば、こんな事しなくても済んだんだっっっ!」


「ぐす…………この身体にもともと入っていた人は、今ごろボクが元いた世界で、幸せに暮らしているんでしょうね……ぐす」


「ふふふふ…………姫さまが何を考えているのか、まだよく分からないが、じきに直接会える時がくるはずだ……そうなれば、こっちのものだよ…………ふふふふふ」


「ふん……度胸試しなどという、くだらん余興に付き合うのは面倒だが…………この国の支配者たちが全員眠っている今なら、姫さえ従わせれば、世界の全てを我のものにできる……もうしばらくの辛抱だ…………」


「姫さま! ぼくは絶対に、姫さまの心をつかんでみせます! 待っていてください!」


 と、それぞれの想いを口にしながら歩く男たちは、これから行われる度胸試しの真の目的が、チ〇コの【吊り上げ力】を測定することだとは知らないまま、ほどなくして中庭に出る。


 すると、それまで屋内にいる時は部屋の中に響いたミナヅキの声が、男たちのそれぞれの耳元に響く。


『ヨシ、全員そろったな! それでは今から、そこにいるメイドたちが、キサマらの身体をつかみ、魔法を使って、この屋敷の上空を飛ぶ! そして、その間、キサマらの心拍数や血圧などを魔法で計測して、どれだけ度胸があるかを見るから、できるだけ平常心を保つよう努力シロ!』


 という説明の後、メイドたち八人が一人ずつ、男たちの背後から手をまわして、その身体をつかんで、ゆっくりと空中に浮かび上がっていく。


 そこから離れた部屋にいる姫は、魔法で立体投影された映像を見ながら、後ろに控えるミナヅキに尋ねる。


「あら、うちのメイドたちって、飛行魔法なんて使えたの?」


「ハイ、姫さま! 全員ではありませんが、お城に仕えるメイドたちの多くは、飛行魔法を習得しております! 緊急の時には、彼女たちにも、王族の方々をお守りしてもらわなければいけませんノデ!」


 そう説明するミナヅキの後、さらにスイショウが言葉を付け足す。


「ニャ! ただし、ここのメイドたちが飛行魔法を使えるのは、緊急事態モードへの移行を、メイド長である私が認めた時だけですニャ! メイドたちは、普段はつつましくしてニャいと、いろいろニャところから苦情が来ますので!」


「ああ、それで今まで、メイドが飛行魔法を使っている姿を、見かけなかったのね…………まぁ、それはいいとして、ミナヅキ。男たちをこの屋敷の上空に浮かべたりして、ちゃんとチ〇コの【吊り上げ力】は測定できるの?」


「オマかせください、姫さま! 男たちには、度胸試しをしているように見せかけつつも、しっかりチ〇コの【吊り上げ力】を測定しますノデ!」


 と、ミナヅキが話している間も、メイドたちにつかまれた男たちは、どんどん高度を上げていき、それに危険を感じた二番クサリガマが、低い声でうめく。


「うむむむ……拙者たちは、この屋敷に張られた結界の外に出れば、最終攻撃魔法の影響で、死んでしまうので御座るが…………こんなに高度を上げて、大丈夫なので御座ろうか?」


「押忍! たぶん、この屋敷の結界は、上に高い円柱状になっていると思われます! それと、魔法人形であるメイドたちにも命がありますから、彼女たち自身も、結界の外には出られないので、大丈夫なはずであります! 押忍!」


「ギャハハハ! コれから度胸試シが始まルって時に、なに臆病なコとを言っテるんダ! いくら姫デも、オレサマたち全員が、一度に死ぬヨうなことヲ、させる訳がナいだろ! ギャハハハハ!」


「くそっっっ! いつまで、この変な男の笑いを我慢しなきゃいけないんだっっっ! こんなのを、ずっと聞いていたら、頭がおかしくなるだろっっっ!」


「ギャハハハ! オマエは、若いクせに神経質すギるぞ! そンなこトじゃあ、魔王とノ戦争が続いテいたら、精神がモたなかっタんじゃナいのか! ギャハハハ!」


「なんだとっ、テメエっっっ! やんのかっ、こらっっっ!」


 というように、四番チェーンソーと五番金属バットが言い争うのはいつものことだが、今回はいつもと違って、二番クサリガマがそこに割り込む。


「すまない……拙者が口を挟むことではないのかもしれないで御座るが…………四番チェーンソーのお主は確か、家族をすべて魔王との戦争で亡くして、その仇を討つために軍に入ったので御座ったな……」


 いきなり、そんなことを言われて、四番チェーンソーは口ごもる。


「…………ナ、何だソれは……ギャ、ギャハハハ…………オ、オレサマを、他の誰かト勘違いしてルんじゃないノか……ギャハハハ……ハハハハ…………」


「……拙者は、お主の上官と、同じ士官学校で同期だったから、お互いの部隊のことは、それなりに知っているで御座る…………お主はずっと、自分の手で魔王を倒すことを目標にしてきたのに、最終攻撃魔法などという裏ワザで魔王が倒されてしまって、生きる目的がなくなったので御座ろう? ……拙者は、軍に長くいるうちに、自分一人の力では何もできないことも受け入れてしまったが、お主は軍に入って一年も経ってないから、そういう現実をまだ受け入れられないので御座るな…………」


 そう言われて、四番チェーンソーが何も答えられないでいると、メイドたちにつかまれて屋敷のはるか上空に浮かぶ男たちの耳に、ミナヅキの声が響く。


『ソレでは、これから度胸試しを始める! せいぜい気合いを入れて、平常心を保つノダ!』


 との言葉が終わるや否や、メイドたちは、男たちの身体をつかんだまま、真っ逆さまに屋敷へと落ちていく。


 いきなりのことに驚きつつも、頭を下にして、全裸で風を切りながら、必死に平常心を保とうと努力する男たち。


「うむむむ! ……そ、装備もないまま、他人に身を任せて、あ、頭から落下しながら平常心を保つのは…………さ、さすがに難しいで御座る!」


「押忍! し、しかし、これは本当に……た、ただの度胸試しでありますでしょうか! …………ほ、他に目的が隠されているなら、い、いくら平常心を保っても無駄であります! 押忍!」


 と、ここでいつもなら、四番チェーンソーが『ギャハハハ』と笑うはずだが、その男は、隠していた心の内を言い当てられたことで、笑うことができず、五番金属バットにつっ込まれる。


「お、おいっ、四番っっっ! ……テ、テメエは、なに黙ってんだよっっっ! …………な、何かしゃべれっっっ!」


「……ウ、ウるさイ! オ、オマエは、オレサマが笑うノを聞きタくなかったンだろ! …………は、話シかけるナ!」


「な、なんだとっっっ! ……せ、せっかく心配してやってるのにっ、そ、その態度は何だっっっ! …………こ、殺すぞっ、こらっっっ!」


「グス……け、結局、ケンカになるのですね…………グス」


「ふふふふ……こ、これが本当に度胸試しなのかは、わ、分からないが…………だ、誰かをチリにするなら、は、早くやってほしいよ……ふふふふふ」


「…………………………………………………ふん……バカバカしい…………」


「……ひ、姫さまのためにも…………あ、あの二人に、ま、負けるわけにはいきません!」


 とか言っている間にも、男たちは、すごい速さで頭から落ちていき、姫はその様子を見ながら、ようやくミナヅキの狙いを悟る。


「あ、ひょっとして、落下しながら身体に受ける、空気の抵抗を利用するのかしら? そうでしょう、ミナヅキ?」


「ソノとおりです、姫さま! 男たちが、頭を下にして落ちているこの状況で、前回のように、魔法で体内の血液をチ〇コに集中させれば……グフフフフフ」


 そう言うミナヅキが肩を震わせながら、弱体化魔法をかけ始めると、落下している男たちは、苦悶の表情を浮かべる。


「ぐ…………ま、またしても、こ、こんなところで……チ、チ〇コに血を集めるので御座るか!」


「押忍! ……こ、この状況で、チ〇コが〇ってしまっては…………へ、平常心を保つのが難しくなるであります! 押忍!」


「…………イ、イいかげン、こ、こんなバカな事をスるのにハ、飽きたゾ! ……こ、殺すなラ、さっサと殺せ!」


「く、くそっっっ! な、なんで、オレがっ……は、裸で、空中を落下しながらっ…………チ、チ〇コを〇てなきゃいけないんだっっっ!」


「グス…………も、もう、ぼくは……ど、どんなところで、チ〇コを○てても、へ、平気になってきました…………グス」


「ふふふふ……く、空中で、チ〇コを○てたくらいで、な、泣き言を言うようでは…………し、真の男とは言えないよ……ふふふふ」


「…………………………………………………くだらん…………」


「……ぐ…………ひ、姫さま……い、いつまで、こんなことを、つ、続けるのですか!」


 と男たちが叫んでいると、〇ったチ〇コが風圧を受けて、プルプルと震えつつ、少しずつ押し戻されていき、それを見た姫は、笑いながら膝をたたく。


「なるほど! 自由落下中は、時間が経つほど、落下速度がどんどん上がっていくから、〇ったチ〇コを押し戻す風圧も、どんどん上がっていくわけね!」


「ハイ、そうです、姫さま! 風圧が上がっていく中で、より長くチ〇コを〇たせていられるほど、その男の【吊り上げ力】が高いことが分かるわけデス!」


「あははは! でも、まさか、こうやって空中を落下している間に、実はチ〇コの【吊り上げ力】が測定されているなんて、お釈迦様でも気が付かないでしょうね!」


 ちなみに、お釈迦様とは、大昔に異世界から転移してきた者が広めた、仏教という名の宗教の開祖だが、この世界のほとんどの者は、その宗教が異世界で発祥したものだとは知らない。


「トコろで、姫さま! あのメイドたちには、男のチ〇コの角度が、九十度を超えた瞬間に、落下を止めるように命令してあります! つまり、上空の高いところで止まった男ほどチ〇コの【吊り上げ力】が低く、より地面に近いところで止まった男ほどチ〇コの【吊り上げ力】が高いわけデス!」


「まあ、分かりやすいわね! あっ、言ってるそばから、止まった男がいるわよ! どうやら、最下位の八位は、少女みたいな肌をした十番チャクラムの男みたいよ!」


「ヤレやれ、こんなに早く風圧に負けてしまうとは、困ったものですね! ……ああ、次に止まった七位は、身体中が傷だらけの、三番カラテの男ですか! 強そうな身体をしていますが、チ〇コの強さは、それほどでもなかったようデス!」


「あらら、いま止まったのは、日に焼けた野性的な身体の、五番金属バットの男よ! あの男も怒ってばかりいるわりには、ぜんぜんたいしたことないわね!」


 などと、いつものように、姫とミナヅキが好き勝手なことを言っている間に、次々と男たちが止まって順位が確定していく。


 五位。『ギャハハ』と笑い、やせているが動くと筋肉が浮き出し、高い身体能力を持つだろうと思われる、四番チェーンソー。


 四位。異世界から転移してきたらしい、いつも泣いてばかりいる、小柄だが均整のとれた身体の、六番ブーメラン。


 三位。感情を表に出さず、何かを企んでいるように見える、彫刻みたいな身体の、八番ハルバード。


 二位。いつも余裕の笑みを浮かべている、ネコ科の獣のような、しなやかな身体の、七番カタナ。


 その順位を見た姫は、上気したほおに手をあてて、目を潤ませる。


「あぁ【吊り上げ力】の順位って、体積の順位とはけっこう違うのね…………ありがとう、スイショウ。あなたが【吊り上げ力】のことを教えてくれなかったら、体積の順位だけで試着の順番を決めていたところよ」


「ニャ! お褒めにあずかり光栄ですニャ! それにしても、まだ落下し続けている、細く引き締まった身体の、二番クサリガマは、すごい【吊り上げ力】ですニャ! このままだと、もうすぐ地面に…………」


 ドスン!


 という音と同時に、屋敷が揺れて、立体投影魔法で映されている中庭に、土煙が舞う。


 それを見て、呆然とする姫たち……。


 しばらくして、ミナヅキが、どうにか声をしぼり出す。


「……………………チョと待て、スイショウ……何で、あのメイドは、地面にぶつかる前に、停止しなかったノダ?」


「…………ニャ……ミナヅキ…………あんたこそ、あのメイドたちに、地面にぶつかる前には、ちゃんと停止しろと、命令してニャかったのか?」


「アァン? そんなこと、わざわざ命令しなくても、自分の判断で、地面にぶつかる前に停止するのは、当然のことダロ!」


「ニャ! あのメイドたちは、飛行魔法を使う時に、緊急事態モードに移行しているのニャ! お城に仕えるメイドが、緊急事態モードにニャれば、自分が生存することニャんか気にもせず、ひたすら命令を優先するのは当然のことニャ!」


 と、二人が言い争っている中、サツキが立体投影魔法の映像を指さして、大きな声を出す。


「な、な、何かが動いています!」


 見ると、薄れた土煙の中から、一人のメイドがヨロヨロと出てくる。


「ニャニャ! さすがは、私が訓練したメイドニャ! 事前に自分の身体を、魔法で強化しておいたようだニャ!」


「…………ナルほど……メイドは助かったようで、良かったな…………だが、チ〇コの【吊り上げ力】一位が確定していた、二番クサリガマは、どうなったノダ?」


 ミナヅキのその問いかけに、スイショウが答えられないでいると、それまでずっと黙っていた姫が、ポツリとつぶやく。


「……あのメイド、全身が真っ赤だけど、あれって二番クサリガマの血じゃないの?」


 そう言いながら姫が振り向くと、後ろの三人は、一斉に目を逸らす。


 こうして男たちの悪夢は、まだまだ続くのだ…………。




◆ 次回予告 ◆


「……まぁ、【吊り上げ力】一位の男が死んでしまったのは残念だけど、ここでクヨクヨしていても仕方がないから、とにかく試着を始めちゃいましょうか」


「ソウですね、姫サマ!」


「ひ、ひ、姫さま…………ほ、本当に、それでいいのですか……」


「ダマれ、サツキ! 私たちがいくら悲しんでも、死んだ男はもう帰って来ない! ならば、過ぎたことは忘れて、前進あるのみダロ!」


「そ、そ、それは、そうですけど…………」


「ヒメさま! サツキの言うことなど気になさらずに、すぐに試着を始めてくだサイ!」


「ええ、もちろん、そのつもりだけど……チ〇コの【体積】と【吊り上げ力】の順位が微妙に違うから、誰から試着するか悩んじゃうわ…………ねえ、スイショウ、あなたなら、どういう順番でする?」


「……恐れニャがら、姫さま! 私ニャら、もう少しだけ、試着は我慢しておきますニャ! なぜニャら、試着前に調べておかニャければいけない重要ニャことが、まだ一つだけ、残っておりますからニャ!」


「あら、【体積】と【吊り上げ力】以外にも、重要なことってあるの?」


「はい! それは【ストレス耐性】ですニャ! どんニャに優れたチ〇コでも、ストレスに弱くて、〇たないことがあるようでは、意味がないですニャ! うっかり、そんなチ〇コに惚れてしまったら、結婚した後に、地獄の苦しみを味わうことにニャりますから、ストレスに弱い、情けニャいチ〇コは、試着する前に排除しておくことを、お薦めしますニャ!」


「なるほどね……確かに、私が望んだ時に、必ず〇ってくれないと、理想のチ〇コとは言えないわ…………じゃあ、あの男たちに、精神的な圧力をぎゅうっとかけて、それでもちゃんとチ〇コが〇つか試してみましょう!」


「…………ほ、ほ、本気ですか、姫さま……」




 次回、第四章 『いいチ〇コは、〇ったチ〇コだけ!』 お楽しみに。




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