第二章 アレの体積を測れ!
◆ 登場人物 ◆
姫。
十四才。
わずか十才で痴女であることがバレて、ずっと男に近寄ることを禁止されていたヒト族の少女。
とにかく男に飢えている。
ミナヅキ(水無月)
姫の侍女の一人。 魔法人形。
命令に忠実で、とても気が利くが、常識が欠落していて、何をしでかすか分からない。
サツキ(皐月)
姫の侍女の一人。 魔法人形。
ドジでのろまだが、真面目で従順。
姫とミナヅキの奇行にも、けなげに付いて行こうと努力している。
姫の結婚相手の候補である男たち。
十六才から二十三才のヒト族の貴族。
結婚対象から外された瞬間に、チリとなって消える魔法がかけられている。
最初は十人だったが、すでに一人がチリになって、現在は九人。
◆ これまでのあらすじ ◆
「ヒメさま、今の状況をもう一度確認しても、よろしいでスカ?」
「いいわよ、ミナヅキ…………えーと、魔王との戦争で発動された最終攻撃魔法のせいで、この屋敷の外では、あらゆる生き物が生存できなくなった……ということで合っているわね?」
「ハイ、姫さま! この世界がもとの状態に戻るまで、千年はかかると言われています! それで王さまたちは、千年後に世界を再生する作業に備えて、人工冬眠魔法にかけられまシタ!」
「ふぅ……それなのに私は、ここに残って、新たな問題が起きないか、この世界を見張らないといけないのよね…………どう思う、サツキ?」
「お、お、王さまが決められた事ですから、し、仕方がありません……ひ、姫さまの使命は、こ、この世界を見張る役目を、子孫に受け継ぐことです…………」
「はぁぁぁ……分かっているわよ…………そのために、私の結婚相手の候補となる男たちが、十人も集められたんでしょう……しかも彼らは、私が結婚しないって決めた瞬間に、チリとなって消える魔法がかけられているという…………」
「ハイ! 今は残された資源をできるだけ節約する必要がありますので、集められた男たちは、姫さまの結婚相手となる一人しか、生かしてはおくことはできません! くれぐれも慎重に相手を選んでくだサイ!」
「あぁ……そんな状況で私ったら、うっかり顔が好みじゃないってだけで、すでに一人をチリにしちゃったのよね…………次からは気を付けないと……」
◆ 本編 ◆
十人いた男の一人がチリになってしまってから、しばらくして姫の口からもれた言葉に、侍女のサツキがきょとんとする。
「え、え、えーと、姫さま…………い、いま何とおっしゃいました?」
「試着よ、試着。やっぱり、結婚相手を決めるなら、その前に試着しなきゃダメでしょう?」
と、小首を傾げる姫の、暁の中でなおも輝く星のようなキラキラした瞳で見つめられたサツキは、それに意識を吸い込まれないよう目をそらしつつ、もう一度確認する。
「……し、し、試着って…………い、一体、何の話ですか?」
「なに寝ぼけてるの、サツキ? さっき、私、うっかり顔が好みじゃないってだけで、男の一人をチリにしてしまったじゃない。次はそんな、もったいない事をしないように、試着してから決めようって言ってるのよ」
「…………す、す、すみません……な、なぜ、ここで試着という言葉が出てくるのか、よ、よく分からないのですが……」
そう言ってうつむくサツキの腕を、となりにいるミナヅキが肘で突っつく。
「ニブいな、サツキ! 姫さまは、結婚相手を選ぶ上で後悔しないために、男たちを試着するとおっしゃっておられるノダ!」
「??? ……ど、ど、どういうことですか、ミナヅキ?」
「マダ分からないのか! 男を試着すると言ったら、そいつのチ〇コを自分の〇〇〇〇に〇〇して、どんな具合か確かめるということに決まっているダロ!」
「えぇ!」
仰天したサツキが顔を上げると、姫は男たちを見ながら恍惚とした表情を浮かべている。
「……じゅる…………うっかり一人はチリにしてしまったけど、まだ九人もいるから、試着のしがいがあるわね……じゅるるる…………よだれが止まらないわ……」
その様子を見て、ハっとなったサツキは、慌てて姫を止める。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください、姫さま! け、結婚するかどうか、ま、まだ決めてもいない相手と、そ、そういう行為をするのはダメです! ぜ、絶対に!」
「サツキ、あなた考え方が古いわよ。試着もせずに結婚して、その男のチ〇コが自分に合ってなかったらどうするの?」
「で、で、ですが、姫さま……」
「よく聞きなさい、サツキ。新しい靴なら、たとえそれがオーダーメイドで作られたものでも、完成したものが、ちゃんと身体に合っているか、まずは試着してみるでしょう? だったら、オーダーメイドですらない男という生き物が、ちゃんと自分に合っているか、結婚する前に試着するのは当然じゃない?」
「……う……あぁ……えぇぇ……」
姫の言うことに反論できず、口をパクパクさせるサツキをよそに、ミナヅキはその横で、うん、うん、とうなずく。
「マッタく、そのとおりです、姫さま! ですが、男を試着するのなら、ちゃんと小さいモノから順にしないといけまセン!」
「あら、ミナヅキ、あなた冴えてるわね。じゃあ、まずあの男たちのチ〇コの長さを測りましょう。もちろん、しっかり〇たせてから!」
「イエ、姫さま! チ〇コは長さを測るだけでは不十分です! やっぱり太さも測らないイト!」
「うーん……でも、〇ったチ〇コって、形がいびつで、太さも均一じゃないでしょう? そんなのを測っても、比較するのは難しいんじゃないの?」
そう尋ねる姫に、サツキが驚いて口を挟む。
「ひ、ひ、姫さまは……た、〇ったチ〇コを見たことがあるのかですか!」
「あら、あるわよ、そのくらい。今この部屋に男たちの姿を映しているミナヅキの立体投影魔法は、結界さえ張られていなければ、どんな場所でも覗けるもの。あなたが私の侍女になる前は、お城でそれを使って、みんなの性生活をチェックしていたんだから」
過去にしていた変態行為を悪びれず言う姫に、目を泳がせつつも、話を合わせようと努力するサツキ。
「……し、し、知りませんでした…………で、ですが、お、お城には、結界が張ってあったのではないのですか?」
「もちろん張ってあったわ。でも厳重なのは外側ばかりで、内側はかなりゆるかったから、根気よく探せば、すき間を見付けられたの。ミナヅキが立体投影魔法を習得していたことは内緒にしてあったから、みんな油断していたってのもあるけどね……だけど、それがバレてからは、私の部屋にも結界が張られて、部屋から出る時は見張りが付くようになってしまって…………」
と、姫が話している途中で、ミナヅキが突然、大きな声を出す。
「アァッ! いいことを思いつきまシタ!」
「どうしたの、ミナヅキ?」
「太さが均一じゃないチ〇コの大きさを比較するなら、体積を測ればいいのです! そうすれば、どんなに形がいびつでも、正確にサイズを比較できマス!」
「ん…………って、確かに体積を測れば、正確にチ〇コのサイズを比較できるのでしょうけど……さすがに、〇ったチ〇コの体積を測らせろって、いきなり命令したら、男たちだって抵抗して、面倒なことになるんじゃないの? …………かと言って、あなたもサツキも、複雑な形の体積を測るみたいな、つまらない魔法は習得していないから、こっそり測るのは無理でしょう? どうやって穏便に、〇ったチ〇コの体積を測るの?」
「フフ……大丈夫です、姫さま! 私にいい考えがありマス!」
そう言って、ミナヅキが邪悪な笑みを浮かべたのと同じころ…………。
同じ屋敷の離れの部屋にいる、九人の全裸の男たちは、その部屋の中央に椅子を寄せて、さっきチリになってしまった一番ヌンチャクの男について話していた。
「……たぶん姫さまは、拙者たちのここでの会話を聞いて、あの一番ヌンチャクが、結婚相手にはふさわしくないと判断されたので御座ろうが…………一体、あの男の発言の何がいけなかったので御座ろう……」
細く引き締まった身体の、胸と背中に二番の数字とクサリガマのマークが浮かび上がった男が、長い前髪を指で払いながら疑問を口にすると、短髪で身体中が傷だらけの三番カラテの男もうなずく。
「押忍! あの一番ヌンチャクは、姫さまと結婚するなど、おこがましいと、ずっと言っていたでありますが、それが問題だったとは思えないであります! なぜ、あの男がチリになってしまったのか、自分にもさっぱり分からないであります! 押忍!」
その二人の言葉に、やせているが動くと筋肉が浮き出し、高い身体能力があると思われる四番チェーンソーの男が笑い出す。
「ギャハハハ! どうセ姫は、一番ヌンチャクの男ノ言葉なンか聞いてモいなくテ、単に顔ガ好みじゃないトか、そんな理由デ、そいつヲ結婚対象かラ外したんダろうさ! ギャハハハ!」
それは図らずも的を得た発言だったのだが、言った本人も含めて、それが正解だと思う者は誰もおらず、日に焼けた野性的な身体をした五番金属バットの男が怒鳴る。
「ふざけんなっ、コラっっっ! そんな理由でっ、チリにされる訳ねえだろっっっ! ちゃんと考えてからっ、ものを言えっっっ!」
さらにその横では、小柄だが均整のとれた身体の六番ブーメランの男が、ポタポタと涙をこぼす。
「グス……せっかく異世界に転移したのに、顔が好みじゃないなんて理由で、チリになんかなりたくありません…………グス」
だが、そんなふうにチリになった男のことで、感情的になる者がいる一方で、この状況に全く動じない者もいる。
「ふふふ……そんなふうに、きみたちが取り乱してしまったら、姫さまが結婚相手を選びにくくなってしまうじゃないか…………今ここにいるのは、みんな伯爵で、しかも軍人か士官学校の生徒だろう? だったら、もっと平然と構えていてくれないと……ふふふふふ」
ヒト族でありながらも、ネコ科の獣のような、しなやかな身体をした七番カタナの男がそう言うと、それに続けて、彫刻のような完璧な身体を持つ八番ハルバードの男も口を開く。
「我の知る限りでは、姫さまは十才のころから全く人前には出ていない……つまり、十四才になる今の姫さまの心中を推察しようにも、我らはその手掛かりとなる情報を何も持っていない訳だ…………ならば、姫さまと直接お話しして真意を尋ねるか、もう二~三人ほどがチリになって、姫さまの考えの方向性が見えてくるまで、下手な推察はしない方がいい」
次に誰がチリになるか分からない状況にもかかわらず、落ち着き払ってそう言う二人を見て、最も身体が大きく分厚い筋肉で覆われた、九番ハンマーの男がうめく。
「ぐぬぬ……貴様らの意見に従うのは癪だが…………確かに、俺も姫さまにお会いできたのは、五年前が最後だ……だから、今どんなお考えをなさっているかは、全く予想ができん…………そんな中で、あれこれ考えても意味はないか……」
その言葉に続けて、少女のような美しい肌をした十番チャクラムの男も、肩を落として言う。
「ぼくも、姫さまにお会いしたのは、そのくらいのころが最後です……なので悔しいですが、姫さまが一番ヌンチャクを結婚対象から外した理由を推察することはできそうにありません…………姫さまに直接お会いしてお話しできれば、こんなことで悩む必要はないのですが……」
九番ハンマーと十番チャクラムがそう言ってうなだれると、二番クサリガマが腕を組んで考える。
「……しかし姫さまも、このまま拙者たちと会わずに結婚相手を決めるつもりはないで御座ろう…………大人しくしていれば、そのうちに、お話しできる機会が来るはずで御座る…………」
そうつぶやいて二番クサリガマが黙り込むと、三番カラテがさっきの二人に尋ねる。
「押忍! ところで九番ハンマーと十番チャクラムのお二人は、伯爵という身分でありながら、どうして姫さまとお会いすることができたのでありますか? 押忍!」
「うむ……俺は生まれてすぐに、軍人だった父が戦死して伯爵の位を相続したんだが……その後、母も病死して、父の上官で少将だった公爵に引き取られたんだ…………それで俺が軍人になってからは、その公爵のお供で、何度かお城に行って、姫さまにお会いする機会もあった、という訳だ……もちろん姫さまは、俺のことなど何も憶えとらんとは思うが…………」
「ぼくは六才の時に、事故で父を亡くして伯爵の位を相続したのですが、その後で再婚した母の相手が公爵だったので、その人に連れられて、何回かお城に行ったのです。姫さまとは、その時にお会いしました……ぼくの方も、姫さまに憶えてもらえているかどうかは怪しいですけど…………」
と言って照れ笑いする十番チャクラムを、四番チェーンソーが冷やかす。
「ギャハハハ! オマエは、そう言イながらモ、内心でハ、姫さまガ自分のことヲ憶えているニ違いないト、思い込んデいそうだナ! ギャハハハ!」
「そっ、そんなことはないですよ!」
実は図星だった十番チャクラムが慌てて否定すると、その時、部屋の中にミナヅキの声が響く。
『ヨク聞け! これからキサマら全員に、体力測定をしてもらう! 今すぐメイドたちの案内に従って、廊下の先にある部屋に向かうノダ!』
それと同時に部屋の扉が開いて、ぞろぞろと入ってきた魔法人形のメイドたちが、全裸の男たちを連れて廊下に出る。
そして男たちが、その先の大きな部屋に行くと、そこにはなぜか、水で満たされたバスタブが九つ、円を描くように並べられていた。
「何だよこりゃっっっ? さっきは体力測定って言ってたよなあっっっ? なのに何で水を溜めたバスタブがあるんだっっっ?」
五番金属バットがそう叫ぶが、メイドたちは無言でその部屋から出ていく。
離れた部屋で、立体投影魔法によって男たちの様子を見ているサツキと姫も、訳が分からずに顔を見合わせる。
「ど、ど、どういう事でしょうか、姫さま?」
「……私にもさっぱり分からないわ…………ねえ、ミナヅキ、あのバスタブは一体何なの?」
「ジキに分かります、姫さま! もうしばらくお待ちくだサイ!」
そう答えたミナヅキが、続けて発した自分の声を、魔法で男たちのいる部屋にも響かせる。
『キサマら! そこのバスタブをよく見ろ! ふちに番号がふってあるのが分かるな! 分かったら、さっさと自分と同じ番号のバスタブの前にタテ!』
その言葉のとおり、バスタブには、二から十の番号が記されており、男たちは軍で理不尽な命令を受けることに慣れているので、ブツブツ文句を言いながらも、その指示に従って動く。
「グス…………ボクがもといた世界では、戦争中に、シャワーを浴びろと言われて部屋に入ったら、水じゃなくて毒ガスが出てきたらしいです……」
「ふふふふ…………何を言ってるんだい、きみは……わたしたちの中の誰かが、姫さまと結婚するんだよ……そのわたしたちに、ここの者が酷いことをする訳がないじゃないか…………」
気弱なことを言う六番ブーメランに向かって、七番カタナがのんきに言葉を返していると、八番ハルバードがその会話に割り込む。
「それよりも六番。お前はさっきから異世界とか、もといた世界とか、訳の分からない事をずっと言っているが、士官学校で教官に殴られすぎて、頭がおかしくなったのか?」
「グス…………違います……ボクは、本当は別の世界の人間なんですけど、半年ほど前に、こっちの世界の人間と意識だけが入れ替わって…………」
と六番ブーメランが答えているのを聞いて、九番ハンマーが真面目に心配する。
「ふむ……貴様はどこかで、魔物が放った錯乱魔法を受けて、その後遺症がまだ残っているんじゃないのか? 俺がいた部隊でも、似たような症状のヤツがいたんだ…………後でここのメイドに、ちゃんとした治療魔法が使える者がいないか聞いておいてやる」
「グス…………ボクの話を誰も信じてくれない事には、士官学校にいる間に、すっかり慣れちゃいましたよ……グス」
そんな話をしているうちに、男たちは全員、自分の番号が記されたバスタブの前へ移動して、ミナヅキから次の指示を受ける。
『ヨシ、今から、水で満たされたバスタブの上で、腕立て伏せをしてもらう! 水の中に身体を入れないように、バスタブのふちに手足を置いて、胸を水にギリギリ触れさせるようにやるンダ!』
「??? 何でわざわざ、水を溜めたバスタブの上で、腕立て伏せをさせるんでしょうか?」
十番チャクラムが疑問を口にすると、二番クサリガマが真剣な顔で警告する。
「……これはきっと、ただの体力測定ではないで御座る…………たぶん、拙者たちの心を乱すような何かをして、水の中に落とそうとしてくるのではないで御座ろうか……みんな気を付けるで御座る!」
その言葉で男たちは気を引き締める。
「押忍! なるほど、体力を測定すると思わせておいて、実は精神的な強さを見るのでありますな! 押忍!」
「ギャハハハハ! オレサマは、姫との結婚にモ、自分が生き延びルことニも興味ハないガ、ここデ間抜けナ姿をさらスつもりはないゾ! ギャハハハハ!」
「くそっっっ! オレは絶対に生き延びるんだっっっ! こんなところで脱落なんかするものかっっっ!」
「グス……神様は、こんなバカな事をさせるために、ボクをこの世界に転移させたんじゃないはずです…………」
「ふふふふふ……こんなくだらない事で男をふるいにかけようなんて、姫さまは思ったよりも子供のようだな…………ふふふふ」
「ふむ……これは本当に、男を選別するための試験なのだろうか…………どうも腑に落ちん……」
「うむむむ…………結婚相手を選ぶためなら、もっと違うことをさせた方が良さそうなものだが……今の姫さまの考えている事は、本当によく分からん…………」
「姫さま! ぼくは、どんな命令でも、絶対にやり遂げて見せます!」
と、それぞれの想いを口にしながら、円を描くように並べられた九つのバスタブの上で、全裸で腕立て伏せをする男たち。
その姿を、離れた部屋から立体投影魔法で見ている姫は、ミナヅキの意図がまだ読み取れずに、腕を組んで眉根を寄せる。
「……で、ここからどうなるの、ミナヅキ?」
「モウ少しで分かります! 見ていてください、姫サマ!」
そう言ってミナヅキは、九人の男たち全員に、ある魔法をかけ始め、男たちはそれによって、うめき声を上げる。
「く…………これは 、体内の血液の流れを偏らせて、動きを鈍らせる、弱体化魔法で御座るな……」
「押忍! だんだん左腕に血が行かなくなって、力が入らなくなってきたであります! 押忍!」
「ギャハハハ! こんナ弱体化魔法なンかで、オレサマが水に落ちルと思っテいるノか! ギャハハハハ」
「あっっっ! くそっっっ! 今度は頭の方に血が行かなくなってきたぞっっっ!」
「ぐす……あれ? なんだか目の前が暗くなってきました…………」
「ふふふふ……普段から竜に騎乗していれば、宙返りの遠心力で頭の方に血が行かなくなった時に、視界が暗くなることにも慣れるんだけどね…………ふふふふふ」
「ふぅ……我に弱体化魔法をかけるのなら、もっと強力なものをかけねば、試験の意味がないと思うのだが…………まぁ、とにかく腕立て伏せさえ続ければいいのだな……」
「ぐぬぬぬ……身体が大きい者ほど、こういう弱体化魔法は地味にこたえるのだが…………姫さまを不届き者から守るためにも、ここで踏ん張らねば……」
「むぅううう…………みんな意外としぶといですね……でも、ぼくだって、まだまだ負けません!」
などと、弱体化魔法をかけられながらも、必死に腕立て伏せを続ける男たちの様子を見て、ようやく姫が、ミナヅキの狙いに気が付く。
「あ、なるほど…………体内の血液を偏らせる弱体化魔法とは、考えたわね……」
「ひ、ひ、姫さま、ミナヅキがやろうとしている事が、わ、分かったのですか?」
「ええ……きっと、あのバスタブに張ってある水にも、魔法がかけてあって、水があふれたら、その量が正確に測定されるようになっているんじゃないかしら…………そうでしょう、ミナヅキ?」
「ハイ! そのとおりです、姫さま! この状況で、男たちのチ〇コに血液を集中させれば、イヒヒヒヒ……」
ミナヅキが不気味に笑いながら、男たちにかけている魔法を操作すると、みんな今までにない反応を示す。
「むむっ! まさか、このタイミングで、チ〇コに血を集めるので御座るか!」
「押忍! こんな不安定な体勢で、チ〇コが〇てば、身体のバランスをとるのが難しくなるであります! 押忍!」
「ギャハハハ! そこマでしテ、オレサマを水に落とシたいノかよ! ギャハハハハ!」
「くそっっっ! だがっ、ここで腕立て伏せをやめたらっ、負けだっっっ!」
「グス……何で異世界に来てまで、チ〇コを○てたまま腕立て伏せをしないといけないの…………グス」
「ふふふふ……チ○コを○てて腕立て伏せをするなど、わたしにとっては息をするようなものだよ……ふふふふふ」
「ふん…………腕立て伏せ中にチ○コが○ったくらいで、うろたえるようでは、歴史に名を刻むことなどできん……」
「うぐぐぐ……姫さまが、これを見ておられたら、ショックを受けるであろうが…………しかし、ここで腕立て伏せを止める訳にはいかんし……」
「姫さま! ぼくは姫さまからの命令を、チ〇コが○ったくらいで止めるような男じゃありません!」
という感じで、男たちはチ〇コが○ったまま腕立て伏せを続け、そうするとチ○コが浸かって水があふれるので、魔法がかけられた水の表面に、あふれた量を示す数値が浮かび上がる。
それを見て、手をたたいて喜ぶ姫。
「さすがだわ、ミナヅキ! 水で満たしたバスタブの上で、チ〇コを○てた男に腕立て伏せをさせる事で、あふれた水の量から、体積を測るなんて、何てすばらしい発想なの!」
「アリがとうございます! 姫サマ!」
「……で、で、ですが、姫さま…………た、〇ったチ〇コの体積を測るために、こ、こんな事をさせたと……お、男たちにバレたら、ど、どうするのですか…………」
「あら、もう目的は果たしたんだから、この後でバレたって、知ったことじゃないわ……それより、見て! あの彫刻みたいな身体の男、えーと、あの男の武器は何ていうのかしら?」
「ヤリの先にオノが付いているような、あの武器は、ハルバードでございます、姫サマ」
「そう、八番ハルバード! チ○コの体積は、彼が一位じゃないの!」
「ヒメさま! あそこの、泣いてばかりいる六番ブーメランも、身体は小柄なのに、チ○コは意外と大きいであります! あの男が二位で間違いありまセン!」
「ねえ、その横で余裕の笑みを浮かべている、ネコ科の獣のような身体の、七番カタナも、けっこう大きいわよ! 三位は彼で決まりね!」
と、うれしそうに話す姫とミナヅキの後ろで、サツキがドン引きし、その間も哀れな男たちは、一心不乱に腕立て伏せを続けている。
ちなみに、九人の男の、四位から九位の順位は以下のとおりだ。
四位。常に怒りをみなぎらせて、語尾に『っっっ』を付けてしゃべる、日に焼けた野性的な身体の五番金属バット。
五位。いつも姫の身を案じている、最も身体が大きくて分厚い筋肉で覆われた九番ハンマー。
同じく五位。語尾に『御座る』を付けてしゃべる、細く引き締まった身体の二番クサリガマ。
(※九番ハンマーと二番クサリガマは、同じ体積のため、二人とも五位となる)
七位。一方的に姫にあこがれている、少女のような美しい肌の十番チャクラム。
八位。『押忍』が口癖で、傷だらけの身体の三番カラテ。
九位。『ギャハハ』と笑い、やせているが動くと筋肉が浮き出し、高い身体能力を持つだろうと思われる四番チェーンソー。
ただし、王さまの命令で集められた男たちだけあって、最下位の者ですら、チ〇コの大きさは一般の平均よりも上だ。
「デハ、姫さま! これで心置きなく試着が始められますね! もちろん、最下位の者から試すのでショウ?」
「うーん……ちょっと待って…………」
そう言って姫が考え込むと、次の瞬間、男の一人が、バスタブの上で突然ハジけてチリとなる。
バン!
「うわっっっっっ!」
それに驚いて手を滑らせ、水に落ちる八人の男たち。
さすがのミナヅキも呆気に取られて、姫を見る。
「……………………ヒメさま、これは一体どういう事でしょウカ?」
「……あ…………うっかり、またやっちゃったわね……」
サツキも身体をワナワナと震わせながら、姫の方を向く。
「ひ、ひ、姫さま…………い、今チリになったのは、ご、五位の、九番ハンマーですけど……な、なんで最下位ではなく、じゅ、順位が真ん中の男を、結婚対象から外したのですか…………?」
「えーと…………五位の男って、二人のチ○コが同じ体積だったでしょう? 試着をするのに、同じサイズの者が二人いても、意味がないかなぁって思って……」
という姫の説明に、開いた口がふさがらないミナヅキ。
「……ソンな理由で、男を一人チリにしたのでスカ…………」
「えっ…………でも、ほら、チ〇コのサイズが同じだからなんて理由でチリになった男は、全宇宙で、彼が初めてじゃない? きっと歴史に残るわよ!」
その言葉を聞いて、サツキはもう身体がフラフラするのを止められない。
「……せ、せ、千年後に目覚めた王さまが、こ、この事実を知ったら、何と言われるか…………ぜ、前回の、顔が好みじゃないというのは、まだ許されるとしても、チ、チ〇コのサイズが同じだからという理由でチリにしたことは、ど、どう考えても許されないかと……」
「あら、私はその時には、すでに死んでいるから、お父さまがどれだけ怒っても平気よ」
「…………ワタしたち魔法人形は、千年後も、まだ生きている可能性があるのでスガ……」
「そんな事を言ったって、結婚相手は一人しか選べないんだもの! その相手をどうやって決めるかくらい、私の自由でしょう!」
と、姫が逆ギレし始めれば、侍女であるミナヅキとサツキは、何も言い返せなくなる。
こうして男たちの悪夢は、まだまだ続くのだ…………。
◆ 次回予告 ◆
「じゅる…………じゃあ、男たちのチ〇コの体積も測れて、順位も分かったことだし、さっさと試着を始めましょうか……」
「待つですニャ、姫さま! 試着の順番は、チ〇コのサイズだけで決めてはダメですニャ! もっと重要ニャことを、忘れてますニャ!」
「あ……その声は、メイド長のスイショウ?」
「そうですニャ! 姫さまの侍女のミナヅキが、私にニャいしょで、メイドたちにバスタブを運ばせていたので、失礼とは思いましたが、こっそり様子を覗かせてもらいましたニャ!」
「……それで、スイショウ。チ○コにおいて、サイズよりも重要なものって何なの?」
「それは【吊り上げ力】ですニャ」
「ん……っと、チ○コの【吊り上げ力】って、上へ向かって、そそり○つ力、ってこと?」
「そのとおりですニャ! そもそも、チ○コを○○○○に○○されると気持ちがいいのは、クリ〇〇スを内側から刺激されるからですニャ! その刺激に重要なのが【吊り上げ力】ですニャ!」
「ちょっと待って、スイショウ。そんなに伏字だらけだと、何を言っているのか、読者が分からないわよ」
「そんニャことは、ないですニャ! この小説はR15ですが、十五才以上ニャら、この程度の伏字は、分かって当然ですニャ!」
「そうかしら? …………ねえ、サツキ。クリ〇〇スって、何のことか分かる?」
「え、え、えーと…………ク、クリスマスでしょうか?」
「ニャ! 何でこの流れで、クリ〇〇スと書いてあるのを、クリスマスと読むのニャ! だいたい、クリスマスを内側から刺激されると気持ちいいって、どういう現象ニャ! 説明してみろニャ!」
次回、第三章 『重要なのは【吊り上げ力】?』 お楽しみに。
(※この物語の舞台は異世界ですが、過去に転移した現実世界の人間によって、キリスト教が広められているという、生あたたかい設定です)