第2章 第65話 路地へと
「さてと……依頼書によればこの辺にいるはずなんだが……」
男はターゲットである少女を探してひとつの街を訪れた。栄えてるでも衰えてるでもなく、ただ1つの平凡として存在しているその街は、ずっと不安定な世界に生きていた男からしたら新鮮だった。
「にしても、なんで俺なんだ……俺以外の殺し屋でも簡単だろ」
ここに来る最中も男はずっと同じことを考えていた。なぜあの巨漢は俺に依頼したのか、と。なぜなら、あの酒場には男以外の殺し屋もいた。中には世界トップクラスの殺し屋だって。なのに何故自分を選んだのか……それだけが小さな棘となってずっと突き刺さっている。
「まぁ、理由は何であれ、依頼されたからにはきっちりとこなさないとな。まずは普通に観光といくか。居場所を絞るにしては広すぎる」
男は街を歩き始めた。それはまるで一般人が観光に来たかのようで、一見ターゲットを探している殺し屋には見えない。
「さぁて、まずはどこに行こうか。この街は何が有名なんだ?」
それがこの男の強さだ。殺し屋としての影の薄さは、変装以上に重宝される。本来は無意識のうちに出てしまうそれを、この男は持っていないのだ。
「いや、普通に聞き込みすればいっか。あ、ちょっとすみません」
「ん?なんだ?」
「人探しをしておりまして……この子なんですけど」
男は偶然前を歩いていた青年に写真を見せた。どうやって手に入れたか分からないが、少女はしっかりとこちらを見て笑っている。人探しに使うにはもってこいだった。
「あ〜……ん?こいつぁ……」
「知っているのですか?」
「まぁ、な。あそこの路地をずっと奥に行ったとこにいる」
「ありがとうございます。では」
男は心の中でガッツポーズをしながら言われた通り路地を歩き始めた。その路地は永遠に続いているのではないかと思ってしまうほど暗く、そして静かだった。




