第2章 第64話 男の過去
その男は昔、それなりの殺し屋として裏社会ではそこそこ有名な人間だった。でも、全てが中途半端な結果で終わっていた。
「おい。お前、『首斬りのジャック』だろ」
「だったらなんだと言うのだ」
「その腕を見込んで依頼がある。この者を殺して欲しいんだ」
男が普通に酒場で飲んでいた時、旅人だろうか?大きな荷物を持った巨漢に話しかけられた。
「初対面の相手の依頼をはいそうですかと受けるとでも?」
「いいや。ちゃんと報酬は用意する。それと…まぁそうだな。この依頼を受けた方がお前のためになる。それだけは断言出来る」
「胡散臭いな。まぁいいよ。どうせ暇なんだ。暇つぶし程度にこなしてやるよ」
「そう言ってもらえると助かる。報酬は───」
その後巨漢は、何個か注意点と報酬の受け取り場所と日時を指定しただけでその場を去っていった。
手渡された紙に書かれていたのは、たった一人の幼い少女の顔だった。
「受けるとは言ったものの……さすがに初めてだぞ、こんな幼い子を手にかけるのは」
男は殺し屋をやっているとはいえ、最低限の良心は持っていた。そのため無作為殺人や、一般人を殺す依頼は極力関わらないようにしていた。だが、巨漢はいとも容易くその壁を破ってきた。まるでそうすることに慣れているかのように。
「まぁ、この少女が一般人かどうかは別として、なんで俺なんかに…」
そんな疑問は、後には全く気にならなくなっていた。その理由はおそらく、その少女であろう。




