第2章 第63話 屍舞踏
「次の相手はあなた?」
「あぁ。英雄がいないのは残念だが、結構強そうな奴らばっかじゃねぇか」
荒廃した世界の中、男の不気味な笑みだけが唯一生き生きとしていた。
「それはどうも。それにしても、どうして今になって姿を現したの?ずっとそこにいたよね?」
「あちゃ〜。そこまでバレてるなら正直に言ったほうがいいか。まぁ、実に単純な話さ」
男は肩をすくめて少し困ったような表情で答えた。心達は常に警戒し、男の一挙手一投足に細心の注意を払い続けた。
「あまりにも天の上の戦い過ぎて見とれていた。それだけだ。それ以外は何も無い」
「そう。あなたも実力的にはあの二人に劣らないと思うけど?」
「そんなことはねぇよ。俺は暗殺者だ。本業は───」
刹那、男は目の前から姿を消した。逃げた訳ではなく、殺すため。証拠を残すことなくかつ確実に殺す。それがこの男の力だ。
「みんな気をつけて!今からは微かな気配だけを探って!そうじゃないと一瞬で全滅する!」
心は敢えて大声で叫んだ。理由は、それだけが現状この男に対抗できる手段だからだ。
「音も痛みもなく標的を抹殺すること。それは例え戦場でも変わりはしない」
男のその一言が、地獄のサーカスへの招待状だった。かつて世界を絶望に陥れたサーカスが、今ここに顕現する。
「カール!後ろ!!」
「分かってる。はぁ!」
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。でも、その先に男はおらず、またぶつかったのは一瞬だけであまりの手応えの無さにカールは首をかしげている。
「ちぃ。逃した」
「まだまだ来てるよ!前も後ろも警戒して!気配は確実に動いてる!」
心がどうして男の気配を追えるのか。それは、魔剣の共鳴によるものだった。つまり今、男も心もお互いの位置を把握しながら戦っている。それは男にとって、限りなくやりづらい状況だった。
「おい!なんでこいつは見えねぇんだ?!そんな魔法存在しねぇだろ!」
「魔神剣の能力だよ!あの男の使ってる短剣は第5魔神剣 隷属康明は、ただのステルス能力じゃなくて、亜空間転移能力もあるの!」
男は昔はただの腕利きの暗殺者だった。だが、偶然手に入れた魔神剣の能力によって、「死の演出家」と呼ばれるまでになった。だからこそ、彼の戦いや暗殺はこう呼ばれている。
『屍舞踏』と───




