第2章 第62話 試練の始まり
この瞬間がずっと続いたら……なんて、綺麗事は雨の中の花のように流されていく。でも、私はそう思ってしまった。それが綺麗事だと分かっていてもそれを願ってしまう。
「お疲れ様、莉音。あとはゆっくり休んでね」
「え……?でも……」
「大丈夫。莉音は、充分すぎる勇気をくれた。もう、任せてくれても…大丈夫」
心と苺ちゃんがそう言ってくれた。正直、今はもう指一本動かすのですら辛い……まるで鉄のように重くなってしまった体は、しばらくは使い物にならなさそうだ…全く、本当に鈍ったな……
「ありがとう…じゃあ、後は任せたよ」
「うん。任された」
さっきまで小指を絡めていた手を、今度は力強く握られた。でもそれは、本当に強い意志の現れだと思った。だから私は、なんの迷いもなく任せられたんじゃないかと思う。
人を信じるのに必要なのは根拠じゃない。なぜなら、人を信じるのは“心”なのだから。
「じゃあ、一緒に行こう。今度は私たちが莉音を守る番だよ!」
心は、私を運びながらそう言った。私は心の腕の中で、幸せに満ちていた。それはまるで、母親の腕の中のようで、私は落ちてくる瞼を止めることは出来なかった。
・・・
「お待たせ〜」
「おい、莉音は大丈夫だったのか!?」
「うん。ほら、ここに眠ってるよ。ふふふ、可愛い寝顔〜」
心は、自分の腕の中でまるで猫のように眠る莉音を愛でながらみんなの元に戻った。今は戦場だ。でも、少しでも幸せがあるのなら、それを仲間たちと共有しないのは馬鹿だと言えよう。
「余裕そうだな。いつ命を狙われてるかもわからないのによ」
でも、危機はすぐ目の前に迫っていた。これからが本当の試練の始まりだ。莉音を除いたメンバーで最後の敵、皆崎の元にたどり着く。
「あなたこそ、莉音が居ないからって油断しないで欲しいな」
空から降ってきた新しい敵を、心は剣で弾いた。その目に宿るは強い意志。莉音との約束を守るという、固くて強い意志だった。




