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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第2章 白夜学園その②
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第2章 第61話 約束

「おやおやぁ?もう英雄殿は瀕死ですか」


  莉音とメーズの戦いを遥か上空から眺めていた皆崎は、軽く落胆しながらそう呟いた。


「まぁいいでしょう。これで我々が勝つという未来がぐんと近づいたのですから。メーズが死んでしまったのは痛手ですけど」


  不気味な笑みを浮かべ、人知れず皆崎は孤独な愉悦感に浸っていた。なぜなら、それが皆崎の生き甲斐であり、生きる糧でもあるのだから。


「さぁ、まだ最終戦は始まったばかりです。残りの5人がいったいどのようにして抗うのか……非常に興味深い」


  皆崎は知っていた。いくつもの死闘で勝利をもぎ取った者の強さを。だからこそ1番最後に控え、数々の死闘を超えて満身創痍な相手を全力で潰す。それが弱者だった皆崎の戦い方だった。




 ・・・




「莉音!よかった……死んじゃったんじゃないかって思ったよ」

「良かった……本当に」

「……心…………いち…ごちゃん?」


  私が目を覚ますと、心と苺ちゃんが安堵に満ちた表情で覗き込んできていた。近い近い。


「とりあえず…大きな傷は、塞いだ。後は……」

「え?……本当に?ほんと、ごめん……」


  確かに、胸に空いているはずの穴はしっかりと埋められていて、至る所にあった裂傷も綺麗に直されている。痛みは残っているけど、命の危機は脱したみたい。


「謝らなくてもいいの。私達は莉音が無事ってだけで嬉しいんだから。あと、莉音……ひとつ聞いていい?」

「うん。どうしたの?」


  心は、とても真剣な目で私を見ている。こういう時は大抵、とんでもないくらい踏み込んだ質問をしてくる。


「これまで、何回心臓を貫かれたの?」

「あはは…ほんと、心はどうして気づいちゃうのかな…さっきの戦いで3回目。あと4回貫かれたら、もうさすがにやばいけどね」

「そっか。じゃあ、約束して」


  そう言うと、心は小指を立てて右手を出した。懐かしいな……心はなにか大切な約束をする時、必ずこうやる。理由はわからないけど、私はこういうのが好きだ。


「もうこんな危ない戦い方はしない。もう二度と心臓を貫かれない。わかった?」

「また難しいことを……でも、わかった。心との約束だもん。守らない理由がないよ」


  私は同じく右手の小指を心の小指に絡みつけながら、そう言った。固く結ばれた小指が、私達2人のつながりを表しているような気がして、ちょっと嬉しかった。






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