第2章 第60話 深層意識
私は、どうなってしまったのかな。死んじゃった?それとも、まだ生きてるの?
そんな、自分すらよくわからなくなってしまう程深い場所にいた。実感はあまりないし、そもそも暗くてどこなのかも分からない。ただ分かることは、ここが私の意識の深層部分であること。ただ、それだけ。
『汝がここに来るのも久しいな』
声が聞こえた。本来は聞こえるはずのない声が。
「……誰?」
だから私はそう答えた。思っていたよりも深いところにいるみたいだ。でもなんでだろう。どこか懐かしくて、不思議と落ち着く。
『何年か前に来た時も同じようなことを言っておったぞ。まぁよい。おそらく、対話できる時間は限られているだろうしな』
「対……話?それに、前にも来たって、本当?」
頭が回らない。何も考えられない。声が聞こえるだけで、その声の主も見えなければ体の感覚がなくなってきた。
『然り。汝は覚えていないみたいだな。まぁよい。わしからのちょっとした助け舟じゃ。受け取るが良い』
その時、真っ暗だった世界に一筋の光が差した。その光は少しずつ広がっていき、私の中に黄色いお花畑を作り始めた。
『お?始まったか。もう少し対話していたかったが……仕方ない。また会う時は、さらに深みで会おうぞ』
「ちょっとま──」
私の言葉は虚空に消え、徐々に精神が水面に向かい始めた。流れ込んで来た『思い出』は、どれも忘れてしまっていたものばかりで、懐かしいようで寂しかった。
「……私?」
ねぇ、君は私だったの?忘れてしまった物を持った私だったの?ねぇ……教えてくれなきゃわかんないよ。
「……じゃあ、私は約束を果たせた……のかな?」
その声が儚く木霊した時、私の意識は戻った。徐々に感じる温もりが、今の私の全てなのかもしれないとまで思った。
過去なんてどうでもいいんだ。今がこんなにも満たされてるんだから。




