第2章 第56話 彗星剣
「いきなり強敵……けど、あなたとは前々からやり合いたいとは思っていたのですよ」
私は、目の前の相手をじっと見据えたまま言った。私が英雄になるまでは世界一の剣豪とまで呼ばれていた人間が、今目の前にいる。
「へぇ。俺を知ってるのか?」
「もちろん。『彗星剣』という二つ名を聞いたことのない者はここにはいません」
いや、多分心辺りは聞いた事ないだろうけど……あながち嘘じゃないから大丈夫大丈夫。
「天下の英雄殿から直々にそんなことを言われるなんて、夢にも思わなかったぜ。くっそ〜。さっきの1発で仕留めたかったのにな……仕方ねぇ。全員でかかって来な。まとめて相手してやるよ」
挑発…?…いやさすがにそんなことは無い?でもさすがにこの誘いに乗る訳にはいか──
「よし!そうと決めれば戦闘開始よ!」
「お?来るのか?言っとくが、俺は強いぞ」
ちょ、ちょっと心!?何勝手に始めようと……あーもう!やるしかないのか。
けど、対峙してるだけでひしひしと伝わってくる。強いなんて次元じゃないこと。彼は、一時期終末戦争のフロントランナーとして戦っていた。経験値も群を抜いて高い。
「さて、誰から調理してやろうか?」
「廻れ流星よ。その力我に授けたまえ!」
私は相手の無駄話が終わるタイミングで魔法を唱えた。タイミングとしては100点。だと思いたい……
「よし!英雄さんの負ける様をみんな目に焼き付けておけよ。さぁ、お前ら仕事だ。出てこい、鳳凰!」
「終焉の剣ノーバルニヤ=クタハーラン」
お互いがお互いの最高の武器のひとつを取り出した。
そして、これからの戦いを『死闘』と呼ばずして何を死闘と呼ぼうか。
そして、全てが終わった時、私達は何を得ることが出来るのだろうか。多分、何も得られないんだろうな……




