第2章 第44話 終末日記
その戦いを、覚えているものはいないだろう。でも、それは「傷」という形で永遠に語り継がれることとなるのだろう。
3つの鬼迫が空間を支配し、時折響き渡る剣戟がその戦いの熾烈さを物語っていた。
「そんなものですか?2対1の状況で互角とは……正直話になりませんね」
「相変わらずよく喋りますね。それだけ余裕なら、私たちをさっさと殺せばいいんじゃないの?」
「生憎と、私はそんなに残忍じゃないのでね。少しは遊んであげないとっていう気遣いですよ」
「でも攻撃には一切の気遣いが見えないんだけど?」
数え切れぬ仕切り直しのさなか、徐々に龍護が2人から置いていかれていた。それは実力的は面でもあるが、もっと別の面。
「それにしても早いのですね。魔力適性が高いとここでは戦いやすいことこの上ないでしょう。でも、相方の方はどうやら苦しんでいらっしゃるようだけど?」
「へっ!大したことねぇよ。それに、もう置いていかれるわけにはいかねぇ」
「そう。あなたのその意思が無駄だと言うことを教えて差し上げるのも面白そうですね」
それは魔力適性。本来、魔力適性が高い人は周囲の魔力をより多く使えるために魔法に優れたものが多い。つまり、裏を返せば魔力適性が低いと周囲の魔力を使いずらい。龍護はまさに今、それで苦しんでいた。
莉音は既に周りの魔力を我がものとして扱っていた。龍護と莉音の実力の壁はそこだけだった。だから、龍護は莉音に勝てなかったのだ。
「そろそろ本気を出しますかね。ここまで粘られると逆に興ざめします」
グリストルがそう言うと、背中から大きな羽が生えてきた。空気が澱み、全ての空間が闇に飲まれていくような感じがした。まるで、これから起こることに恐怖しておるかのように。
「そう。なら、私も試すね。戦獄に覆われし国地よ!今血をもって我に昇華せん!」
「な!?」
莉音の詠唱1つで相手が初めて驚愕した。莉音の体は水色の光に包まれ、中で何が行われているか分からない。ただ、莉音の魔力は最初の約数千倍にまで跳ね上がっていた。
この呪術を人はこう読んでいる。「終末日記」と……
「ふはははは!なるほど。それは参りましたね。でも、舐めないでいただきたいものです。では───」
さっきはかわすので精一杯だったグリストルの剣が、今の莉音には止まってるも同然のように見えている。
「参る!」
「来て。踊ってあげる」




