第2章 第37話 妖精族の莉音
「それで、これからどうするんだよ」
「わかんない。けど、ダンジョンと呼ばれている以上は何かしらあるはず……なんだけど」
辺りを見渡しても何も無い。あるのは鍾乳石のような黒い岩石でできた柱と、同様の壁のみ。かすかに漂ってくる死臭が、最近誰かが飲み込まれて命尽きたことを示していた。
「こんなんじゃ八方塞がりじゃねぇか。あーあ。なんでこんなことになっちまうのかな〜」
「まぁ、それに関しての原因の半分は私だから何も言えないんだけどね。でも、ここって生物がいないダンジョンのはず……なのに、どうしてこんなに魔力が濃いのかな」
「さぁな。このダンジョンが本当にダンジョンなのかって問題からとき明かさねぇと、さすがにどうしようも出来ねぇ」
このダンジョンが本当にダンジョンなのか……か。なるほど、その手があった。
「そういうことね。じゃあ、行くよ」
「おいおい、何をするつもりなんだよ。さすがにぶん殴るとかはやめろよな」
「そんな事しないよ。まぁ、触るには触るんだけどね」
もしこのダンジョンが生きているなら、意思の交信位はできるはずだ。ましてや“波長共鳴”という妖精族特有の方法ならば。
「あ、ごめん龍護。ちょっと私の方見ないで欲しいんだけど……」
「ん?なんでだ?」
「ちょっと全裸にな──」
「わかった。わかったから。それ以上は言わなくていい。じゃあちょっと散歩してくるわ」
「それはダメ。はぐれるかもしれないし。だから、あそこの壁をじっと見てて。見たらダメだよ。絶対に」
「鶴かよ。まぁわかったよ。終わったら教えてくれ」
そう言うと龍護はちゃんと壁の方を向いてくれた。まぁ、そうしてもらった理由は裸を見られたくないからじゃないんだけどね。妖精族としての私の姿、誰にも見られたくない。だから1人で戦ったの。それが、理由。
「ふぅ……起天の儀」
まずは準備をする。これだけ魔力が濃いのなら問題ないだろう。
「世界終わりし時。それは全ての始まりであり終わりであろう───」
胸の刻印に右手をかざしながら少しずつ起句を唱えていく。そして数十秒の後、最後の句を唱える。
「神は汝に問わん。たそがれと」
私の周りを青白い光が包んでいく。ちょっと体が熱い。けど、大丈夫。すぐに慣れてくだろうから。
「さ、準備は出来た。あとは触れるだけ……」
私はいつの間にか治っていた右腕で壁に触れた。刹那、大きな力によって私の手が弾かれた。
拒絶……これこそがこのダンジョンが生きている最大の理由にして方法。そしてこれは人と同じ。
「何回でも行くよ。そりゃ!」
触れては弾かれ、弾かれては触れる。そんな、ただの作業と化してきた行為を続けていると、徐々に触れられる時間が長くなっていることは、言うまでもないだろう。




