第2章 第33話 3人の笑顔
崩れゆく世界を眺めながら、君はどう思っているのかな。
私は、完全に動かないように押さえつけている鎌を見ながらそんなことを思った。白夜連盟は今回、ただ利用されていただけだった。この裏には、必ず2人の黒幕がいるはずだ。
「……ねぇ龍護」
「どうした?」
「こんなことしてて、相手は楽しいのかな?嬉しいのかな?私にはわからないよ。こうやって争うことの意味が……」
「知らねぇよそんなの。それに、今俺達も戦ってる。相手とは違う形だったとしてもな。でもそれは仕方ねぇ事なんだよ。生きてる限り、誰かと争わねぇのは無理な話なんだからよ」
あ、あれ?なんでこんなまともな答え返ってくるの?いつも馬鹿みたいな考えしか持ってないと思ってたのに…あれ?だとしたらなんで私は龍護に聞いたんだろう。う〜ん……謎が謎を呼んでるね。
「え?」
「いや、え?じゃねぇよ。莉音さ、たまに変なこと聞いてくるからちゃんと答えられるようにしようって思って、ちゃんと勉強したり、人の意見を参考にしたりしてるんだよ」
知らなかった。龍護がそうやって自分の意見を持とうとしていたなんて……でも、こんなこと前にやってたっけ?ちょっと覚えてないかな〜。
「そうだったんだね。ちょっと罪悪感が……」
「いやなんだだよ。俺の答えが100パーセント正解なわけないだろ?」
「まぁ、確かにそうだけど……ちょっと感慨深いな〜。あんな龍護が、ここまで立派になって」
「お前は親か。まぁこれまでがこれまでと言われればそうだけどよ。それを言うならお前もだぞ」
「え?私も?」
不意打ちすぎる返答に、私は間抜けな声でそう言ってしまった。その声を聞いたからか、はたまたそんなやり取りを微笑ましく思ったのか。笑いながらシェリーが話に交わってきた。
「確かにそうねぇ。莉音、自分の昔のことを話すなんてことしたことなかったもの。だから、成長したねってこと。そうでしょ?」
「おう!無理に話せとは言わねぇけどよ。さすがに、何も話してくれないのは寂しいんだよ。仲間として」
そっか。確かに私、これまで全く話してなかったかも。やっぱり、この2人といると私が私でいられる。また、新しい自分に出逢える。
やっぱり、クロノア団を創って良かった。
「そっか……ふふ、ありがとう」
「別に礼を言われるようなことはしてねぇよ」
「そうだね。でもありがとう」
完全に崩壊した世界の真ん中に、3人の笑顔がある。その瞬間だけは、世界から戦いというものが無くなっていた。




