表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第2章 白夜学園その②
62/334

第2章 第29話 男の涙

「舐められたもんだね〜。右腕が使えない上に目の前には白夜連盟のNo.2と3。こんな状況でそんなことを口にするなんて〜」

「舐めてるのはどっちかな?勝った敗戦者達」


  煽られてそれを上手く流せるほど、私も大人じゃない。だからといって、それに乗るほどのバカでもない。煽られたら煽り返す。お父さんから教わったことの一つ。


「うっわ、言っちゃったよ。言っちゃいけないこと言っちゃったよ。白夜連盟に対してそれを言うということは、全面戦争覚悟ということかな?」

「そうだね。それに、今すぐにこのくだらない世界崩壊させられるよ?遊ばれてるってことにいつになったら気づくの?」


  涼しい顔をしてた相手が徐々に赤く染っていく。猿みたいだな。というか、全面戦争仕掛けてきてるのそっちじゃん。おかしいな……やっぱ猿だねこいつら。


「あぁそうかい!でもよ、あんたには感謝してるんだよな〜。お前がいなかったら今の俺達はねぇ。これは白夜連盟の長のおもいであり、白夜連盟全員の思いでもある。だから───」


  閃光が走る。もし狙いが私じゃなかったら、誰も防ぐことが出来なかった。それほどにまで鋭い剣が私の目の前で鍔迫り合いをしている。


「死ねよ。ここで」

「くっ……確かにね。前とは比べ物にならないや。けど、それは私にも言えるよ」


  辛うじて剣をはじき返して距離を取り直すと、相手と同じように、私も心の内を明かすことにした。それは多分、本音でぶつかってきてくれた相手への、最低限の礼儀であると感じたから。


「私は君たちと出会う前、仲間の大切さなんて微塵も思ってなかった。ましてや、一緒に戦うなんて……でも、君たちが教えてくれたんだ!」


  再び距離が詰まる。互いの剣が火花を上げ、死んだ世界を明るく照らす。


「もう、君たちは私に勝った。何も知らない、孤独にすがりついていた私に!だから私はクロノア団を作った!君たちが教えてくれた大切な物を、私と同じ考えの人に教えるために!」


  2人は何も言わない。ただ、静かにそこにいるだけ。そこに反論も、怒りも、何も無かった。


「でも、今の君たちは違う!昔のような全員で戦う精神はどうしたの!?さっきも、今も……そしてこの先も!!」


  確かに私は君たちを煽る時に失礼はした。それはあとから謝る。けど、私は許せないんだよ。今の君たちは、必要以上に“個”に固執してる。私が憧れ、尊敬している白夜連盟はそんなのじゃない!


「……仕方の無いことだ」

「何が仕方ないの!?自分たちの戦い方を捨て、自分たちを憧れている人達を裏切って……仕方ないで済むと思ってるの!」


  半分衝動的だった。私は地を蹴り、無防備な相手の首筋に刃を当てる。それにすらも反応しなかった。白夜連盟副団長である『無の武帝』三ツ賀谷(みつがや) (はじめ)は、俯きながら静かに震えていた。


「本当に……俺たちゃバカモンだ。大馬鹿者だ」


  彼は、泣いていた。静かに静かに……私は、夢幻想造剣を解き、その様子を静かに見守った。

  だからこそ許せなかった。白夜連盟を利用した、皆崎とは“違う”黒幕が。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ