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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
第1章 白夜学園編その①
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第1章 第5話 開戦!

  時間というのはいたずらで、やたらゆっくりと進んでいくものだ。特に何かを待っている時や、楽しみなことが待ち受けている時に。

  そんなくだらないことを頭の中でぐるぐるさせながら、私は授業を受けていた。


「え〜、魔法と剣というのは昔、相反する力として───」


  教師の授業を作業用BGM代わりにして、ノートに資料をまとめるという苦行をたった6時間だけやったはずなのに、感覚としては18時間以上も続けている感じだった。

  そんなことを思っていると、本日最後のチャイムが鳴り響いた。それとともに号令をし、あとは各々自由解散となる。が、今日だけはほとんどの人が教室に留まり、模擬戦という名の決闘の結末を自由気ままに話し合い始めた。


「お気楽な人達。いずれ戦うことになるでしょうに」


  どこかから聞こえてきたその声は、言葉の深さとは裏腹にあどけなさ全開の声だった。




 ・・・



  玲奈に案内された場所はコロシアムのような体育館で、玲奈曰く全生徒が入ってもまだ席が余るそうな。


「大きい…私、今日こんな所でやるんですか?模擬戦にしては規模が……」

「さぁ?なんのことでしょう。少なくとも、模擬戦はここでやるの。あと教職員全員見てるから、いいアピールタイミングでもあるわ」


  あれ?おかしいな。私の知ってる模擬戦って、もっとこじんまりとしてるんじゃなかったっけ?じゃあわざとぎりぎり負けてうわーって出来ないじゃん!


「図ったな?」

「どうでしょうね。ふふふ」


  そうこうしているうちに「コロシアム対戦者用西入口」という場所に到着した。


「さぁ行ってらっしゃい。楽しい遊戯を期待していますわ」


  そう言って玲奈は観客席の方に向かった。取り残された私は、ある1種の覚悟を決めて目の前の扉に手をかけた。それが間違っているのか、いないのか、そんなことを考える必要が無いことは知っている。


「勝てばいいんだ。死なないのなら、思う存分やれる。それに、ここはあまり広くないね」


  緊張しているはずなのに、どうしてか心地よい。それも笑ってしまうくらいに。なら、このまま行こう。私らしく、好きなようにやろう。


「さぁ、サーカスの始まりだ!」


  勢いよく開け放たれた扉は、ギィィという音を立てて簡単に開いた。目の前に広がる大きな砂の戦場は、昔を思い出させてくれた。


「……緊張はしてないようだな」

「まぁね。この感じは久しくて心地いいんだよ。さ、始めよっか。どうする?剣使う?」

「それは挑発かな?それとも、純粋な剣戟がお望みかい?」

「違うよ。お互い本気でやり合おうってこと。全力で来ていいよ」

「そうか……」


  その刹那、一瞬にして懐まで潜り込んできた将を捉えた。開戦の合図もないのか。もうそろそろめちゃくちゃだな、ここ。


「にしても会話の途中で切りかかって来るのは無しでしょ」


  愚痴りながら魔法による盾を生成し、すんでのところで刃を止める。私も腰の剣を取り、将の剣と打ち合わせ弾く。

  時間にして0.6秒。普通の魔法使いなら今のでやられていた。


「ほう?あれを凌ぐか」

「そっちこそ、見た目以上に疾いね。あそこまで入り込まれたのは初めてかもしれない」

「そりゃどうも」


  お互いに一旦距離を取った。何が起こったかわからないほとんどの観客達は声も出せないでいた。


「不意打ち失敗、かぁ。ならば、今からは正々堂々戦おうか」

「今更何が正々堂々さ。酷いことするね、君。まぁいいや。じゃ、今度こそ始めようよ」


 お互いに剣を中段で構える。そこに雑念はなく、ただひたむきな勝利だけを渇望する力があった。


「そうだな。じゃ、この木の葉が地面に落ちたタイミングでいいか?」

「いいよ」


  将がすっと木の葉を宙に舞わせた。ヒラヒラと落ちていくそれは、まさに時間のいたずらだった。

  それが地面に近づくにつれ、徐々に意識が深い場所に落ちていく。戦いに全てを投じるかのように、世界から音が消えていく。色が消えていく。そして木の葉が地面に落ちる瞬間、1つの枷が消えた。


 ぱさっ


  耳を済まさなければ聞こえないほど小さなその音を合図に一気に翔ける。

  今度こそ、同時に───





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