第2章 第20話 記憶の破片
「妖精にさせられた証……つまり、莉音は……」
私はその言葉を聞いた瞬間、とてつもない悪寒に襲われた。なぜなら私自身、その事実を初めて知ったのだから。
確かに私は、親に育てられた記憶が無い。今お父さんと思っている人も、本当のお父さんか分からない。ただわかっていることは、妖精と呼ばれる種族に育てられていたこと。それと、たくさんの魔法と呪術を教わったこと。それだけ。他のことはよく覚えてない。
「なんとなく、心の言いたいことは…わかった。あと、莉音もおいで。そんな所で泣いてても、誰も気づかないよ」
「え?あれ?なんで……私……」
なんで……泣いているんだろう。どうして私の涙は、止まってくれないのだろう……ほんと、よくわかんないや。けど、ちょっと嬉しい。
「え!?莉音起きてたの?!あちゃー。この戦争が終わったら夜這いしようと思ってたのに」
「おいコラ!お前この状況でなんてこと言ってんだよ!馬鹿か!?話聞いててめちゃくちゃ賢いと思ったがやっぱお前馬鹿か!?馬鹿だよな!」
「ちょっと龍護うるさいわよ。それに、心ちゃんの気持ちわかるもの。こんな可愛い子と同じ部屋なんだから、夜這いしない方が馬鹿よ。ねぇ?」
あれ?なんか話がとんでもない方向に……というか!たまに夜中に変な気配がするなって思ってたけど、心だったの!?最近は全く襲ってくる気配なかったから安心しちゃってた……
「お!わかってるね、シェリー!起きてる時のガードが硬すぎるんだよ。もっとすんなり襲われてくれれば夜這いなんてしないのに」
「ほんとよね〜。でも、そこがまた可愛いんだけどね」
「ねぇ、苺ちゃ〜ん……」
「いいよ。泣きたくなったら、言って。無いけど、胸貸してあげる」
うん、泣きたいよ。今凄く。というか、シェリーと龍護なんでいるの?う〜ん……カールと戦ってた時はいなかったはずなんだけどな〜。
「っておい!話逸れすぎだ!それで、とりあえず莉音のことはわかった…というかアレだな。始祖呪文については莉音に聞いた方が早いか」
「そうだね〜。それじゃ、語り部交代!ってことで、莉音。さっきそこに寝てる人に使った呪文について、できるだけ詳しく」
う〜ん……なんだろ、話しずらいな……それに心のテンションおかしい気が……まぁ、いつもの事か。
「えっとね、始祖呪文は、私が初めて師匠……あ、妖精族の長ね。から教わった呪文なの。ただ、あまり使うなっていうのだけは、言われてたんだよね」
「つまり……わかった。ねぇ、莉音」
「ん?苺ちゃんどうしたの?」
「私が前に言ったこと、覚えてる?」
前に言ったこと……自分を犠牲にしすぎってやつかな?まぁ、さすがに今回は───
「違うよ」
「え?」
「私が言いたいことと、違う。もっと前……莉音は、覚えてる?」
え?何のこと?う〜ん……わかんない。何かあったっけ?それに、苺ちゃんとはこの学園に来てからの付き合いじゃ……
なんてことを考えていると、少しずつ、苺ちゃんの表情が曇っていくのがわかった。でも私は、どうしていいか分からずにただ、泣きそうになった苺ちゃんを見ることしか出来なかった。




