第2章 第19話 刻印の正体
「よし、到着!」
生徒会室の中に入ると、心は意識のない二人を寝かせるための布団を用意し始めた。その手際は良く、開始数分で敷き終わっていた。
「さぁ、2人はここで安静にしてもらって、私達は私達にできることをやるよ。とりあえず、2人とも警戒しなくてもいいよ。私は君達のことを敵とは思ってないから」
「そう言われて、はいそうですか。なんて信じるやついると思うか?正直、お前はまだ信用するに値するような存在とは思っていない」
「う〜ん……じゃあ仕方ない。信じてもらおうかな」
心はそう言うと、その場に鞘ごと剣を置き、両手を広げた。まるで好き勝手攻撃してもいいと言わんばかりに。
「……どういうつもりだ?」
「信じられないなら殺せばいいじゃない。こうやって無防備晒してるんだし。好き勝手攻撃して、好き勝手遊び道具にして、好きなように殺せばいい。信じられない相手なら、造作もないでしょ?」
龍護は、暴論すぎると思った。けど、今の心が本当に信じられない相手で、このようなことをされたとしたら……そう考えた時、不思議と心の言葉は的を居ているように感じてしまった。それは、シェリーも同じこと。
「心……本性丸出しすぎ。賭けに出るなら、もっと冷静に」
「あはは〜、ごめんね。正直、そこまで本気にされると思わなかったからさ。でも、そういうことなんじゃないの?そこのお二方」
龍護とシェリーは、多重人格を疑ってしまう程にコロコロ変わる心の雰囲気に圧倒されながら、ため息をひとつついた。
「そうだな。あんたの言う通りだ。少なくとも、今オレには戦うつもりは無い」
「私も同じよ。それに、カールと莉音のことが心配だもの」
「それなら万事OK!というわけで、こちらの椅子におすわりくださいな。順を追って説明するから」
龍護とシェリーは促されるままに椅子に座った。そこにはなんのトラップもなく、単純に客人をもてなすための準備がされていた。
「お疲れ!準備ありがとね〜。それじゃ、役者も揃ったことだし、始めようかな」
苺が席に着くのを見計らって、心が話し始めた。
「とりあえず今日のことを話す前に、一つだけ言っておくと、莉音は本当に人間じゃないよ。だからと言って、完全に人間とは違うって訳でもない」
「……え?それってどういうこと?」
「まぁ、少し言いたくないことなんだけど、私は莉音がなかなか裸を見せたがらないことに違和感を感じたのよ」
その言葉に、心以外の3人がよく分からない顔になった。いや、多分この言葉を聞いて危ないやつを見る目にならないものはいないだろう。
「それで、夜な夜な莉音が寝静まった隙を狙って……」
「ちょっと待ったァ!!」
「ん?どうしたの?」
「どうしたの?じゃねぇよ!女子同士だからってやっていい事とダメなことくらいあるだろ!」
「まぁそうだけど……今はそこは重要じゃないの。それに、実際脱がせたりとかしてない。流石にそこまではしない。というか、出来なかった……が正しいかな」
じゃあやる可能性はあったのかよ。という龍護のツッコミを無視して、心が衝撃の事実を告白した。それは、苺は愚か、龍護やシェリーでさえ知らない事実だった。
「偶然パジャマのボタンの隙間から、莉音の胸の真ん中……心臓の上辺りに小さな刻印が見えたの………それの正体は調べなきゃわからなかったんだけどね……」
そう言うと、心の瞳に少し恐怖が過ぎった。そして、震えた声で皆に告げた。
「それは、妖精にさせられた証……つまり、莉音は…」
心の口から、その先の言葉が発せられることは無かった。でも、その先の言葉を理解できなかったものは、誰一人としていなかった……




