第2章 第15話 交わる過去と現在
『不可侵の剣舞』が自分の置かれた状況を理解した時には、莉音達は先に進んでいた。
「また、私は負けたのね……」
「あり?シェリーじゃねぇか。っておいおいおいおい!こりゃかなりバッサリやられたな。血は出ていないけど」
地面に落ちた手首と剣を眺めていた『不可侵の剣舞』、シェリー・レビットの元に龍護が来た。
「龍護……本当に龍護なの!?」
「あぁ。久しいなシェリー。莉音にやられたのか?」
「うん……あの子、本当に底が見えないわ…そもそもあるのかすらわからないけども」
「全くもって同感だ。この傷の感じ、夢幻想造伝にでもやられたか。ちきしょー、俺なんて普通に切り伏せられただけだってのによ」
「ねぇ、龍護……」
シェリーの気分を少しでも回復させるために、碌でもないことを話しながら治療を進める龍護に、シェリーが不安げに揺れる瞳で聞いた。
「私達、また昔みたいに……」
「それ以上は言うな。多分、今莉音がその答えを探しに行っている。知ってか知らずか…皆崎とやらに協力したのは間違いじゃなかったな。少なくとも、俺達にとっては」
「そうね……そうよね。莉音が、私たちを捨てるはずがないもの!」
「現に敵側であるはずの俺たちを殺していないのがいい証拠だ。莉音なら造作もないだろうよ。俺達を殺すことなんざ」
半ば自虐的な龍護の声に、シェリーは少し違和感を感じた。龍護の視線は、2階にいるはずのもう1人仲間に向けられている。
「……やっぱり、心配?」
「まぁ、な。あいつは俺らの中じゃ一番莉音に善戦してたが、多分今の状態じゃ傷どころか近寄ることすら許されないだろうな……」
「私も、そんな気がする。でも……」
「わかってる。わかってはいるとも……ただ、一つだけ心配事がある……」
「心配事……?」
龍護はずっと不思議に思っていた。莉音と戦った時、どうしてあそこまで仲間思いだった莉音が、なんの躊躇いもなく自分に雷魔法を撃ち、シェリーの手首を斬ったのか。そして何より、莉音はシェリーの名前を1度も口にしなかった。
「莉音は、ちゃんとあいつのことを覚えているのだろうか……」
「わからない。けど、私の名前、忘れてた……」
やっぱりか。と龍護は思う。そして、龍護はひとつの答えに結びついた。
「なら、莉音が危ない。今のあいつは、昔のあいつであってあいつじゃない。あと1時間ももたず、完全暴走するだろう。そうなったら、もう……」
「大丈夫よ。莉音だもん。私たち、クロノア団の団長は、ちゃんとカールも救ってくれる。だから信じて待とうよ」
「そう……だな」
この会話を最後に、2人はそれぞれ別の方向から2階を目指す。皆崎に見つかった時に対処できるように。
これは莉音とカール───『天の轟雷』カーリアスト・リン・ファヴォラーダが対峙する少し前に行われた会話。
タイムリミットは、あと55分───




