番外編 バレンタイン
「君達、明日は何の日か知っているかい?」
いつものように生徒会室でグダグダしていると、唐突に玲奈がそんなことを言い始めた。
「明日?何かあったっけ?」
「あ!わかった!!バレンタインだぁ!!」
「正解よ、心。それにしても、もうこんな時期なのね…」
「あれ?ちょっと待って」
私は少し気になったことがあったので玲奈に質問した。
「今って2月だっけ?」
「現実世界ではそうよ」
「え?それってどういう…」
「まぁ!そういうわけだから、みんなチョコを持ってくるように!それで交換会しましょ!」
なんだかよく分からないけど、楽しそうだからいっか。ってあれ?将は?
「あ、将は休むってよ」
「なんで心が知ってるの!?」
「いや、毎年そうだし。ねぇ?将〜」
「致し方ないことだ。学校に来た時点で女子に囲まれて動けなくなってしまう。そんなことになるくらいなら、来ない方がマシだ」
な、なるほど?色々あるんだね。そもそも、バレンタインって何をする日なの?さっきチョコの交換会って言ってたけど……もしかして作るの!?ほんとに!?
「まぁ、そういうわけだから、明日の生徒会室は女の園ってこと!」
「詳しいことは心に聞くといいわ。それじゃあ今日のところはお開きにしましょう。あ、そうだったわ」
何かを思い出したかのように、玲奈が私の方を見てニッコリと笑った。
「手作り以外はダメですよ」
なんだろう……まぁ、とりあえず……早く逃げたいよ〜!
・・・
「よぉし!気合い入れていくよ!!」
「えっと……私はどうすれば」
「う〜ん…先に莉音のやつから仕上げちゃおう!何か作りたいものとかある?」
「特には……というか、初めてでも大丈夫なの?」
「大丈夫!私がいる!」
それ根拠になってないよ〜!本当に大丈夫なの!?あ、でもお菓子に関しては大丈夫なんだった。心、たまに作ってるし。
「それじゃあ、このチョコを溶かしていくよ〜」
「うぅ……早速どうやればいいのか…あ、溶かすのなら火炎魔法でも…」
「だめだめ、ちゃんと作らなきゃ。今回は固めるだけでいいから」
心が、手取り足取り優しく教えてくれる。これまで無縁だったものだけど、実際やってみたらちょっと楽しい…かも。
「お、いい感じに溶けてきたね〜。それじゃ、あとは好きな型に流し込んで冷蔵庫に入れるだけ」
「ねぇ心……」
「ん?どったの?」
「中に何か入れるのって、あり?」
「全然おっけー!むしろ入れちゃった方がいいかもね〜。あ、箱とかは何種類か用意してあるから好きなの選んでね〜」
何から何まで心に任せっきりにしちゃったな〜。でも、ちゃんと許可もらったし、良いよね。
私は、指に魔力を込めながらチョコを型に流し込むのだった。何を入れたかって?それは食べてからのお楽しみ。
・・・
「さぁ!皆持ってきたかな!!」
次の日、いつもとは明らかに違うテンションの玲奈が生徒会室にいた。
「おー!!」
「うん、ばっちり」
「い、一応……」
三者三葉の返答が起こる。1番最後に言ったのは言うまでもなく私……
「いいねぇ!莉音は自信なさげだけど。よし!順番決めよう!!あみだくじ行っくよー!!」
ほんと、今日の玲奈テンション高いな……あ、みんな早い…あと1箇所しかないや。まぁ、余り物には福があるって言うよね。
「くじの結果……苺!私!心!莉音!の順番になったよ!それじゃあトップバッターの苺!」
「うん。これ……イチゴ味のチョコで、苺作った。これこそ、おんりーわん」
1人1個ずつ、苺の形をしたピンク色のチョコが配られる。見ただけでわかる。絶対においしい……
「それじゃあ私から!いただきます!」
一般的ないちごの大きさだから、一口で全部行くのは無理だったらしい。口いっぱいに頬張りながら、玲奈が感想を言う。
「おお!中に苺ジャムが……それでいてしつこくない!心地よい甘さが口いっぱいに広がる!」
「ありがとう。ほら、2人も食べて」
「いっただっきまーす!!」
「い、いただきます……」
玲奈が絶賛していたけど、どうなんだろう?普通、チョコとジャムは喧嘩しちゃう気が……って、え!?何これ?!おいしい……玲奈の言う通り、しつこくない……すごい。
「初めから飛ばしてくれたわね苺!さぁ次は私!今年も自信作だよ〜!」
「お?今年は小さいのね」
「さすがに去年の二の舞は嫌だから……」
一体何があったんだろう……まぁいいや。昨日軽く味見させてもらったけど、正直、お店のものより美味しかった。
「ほう、タルトか」
「そう!味はもちろん、食感、満足感、依存性……どれをとっても最高の出来栄え!さぁ召し上がれ!」
「では早速……お!これはすごい!サクサクのタルト生地としっとりとしたビターチョコ……大きさもちょうど良くてどれだけでも行けそうだ!」
うん、わかる。それを食べ終わったあとの次欲しい!って感じは本当に依存……昨日危なかったな…
「苺も莉音もさぁさぁ!!」
「いただきます。はむ」
「い、いただきます」
やっぱり美味しすぎる。玲奈みたいに細かく感想は言えないけど、本当に無限に食べられちゃう。
「さぁ!最後は莉音!!正直どんな感じで来るのかわからないから、私としては一番楽しみ!」
「あ、あまり期待しないでくださいね……」
私はそう言いながら、小さな箱を開けた。その中には、うさぎの形をした小ぶりのチョコが何個か入っている。全部、名前を入れてある。
「ほう?シンプルだな。でも一つ一つ名前が書いてある。私のはこれかな?」
「うん……ただ、一つお願いが……」
「ん?どうした?」
「ちゃんと、一口で食べてね。あと、びっくりしないで欲しい……かな」
「ほう?わかった。それでは……って、え!?」
やっぱり……びっくりしないでって言ったのに…まぁ仕方ないか。さすがに分からないよね。魔法をチョコの中に入れるって。
「おい……苺、心……これ、やばい」
「玲奈が、そこまで言うなら」
「う〜ん…私と同じチョコなんだけどな〜」
そう言って、各々が自分の名前の書かれたチョコを食べる。案の定、玲奈と同じ反応で、おかしくて私は吹き出してしまった。
「おい莉音!笑ってないで何をしたのか教えてよ!」
「うん…新鮮だった。何したの?」
「莉音、何入れたの?私怒らないから正直に言って…」
まぁ、そうなるか……別に隠すことでもないからいいんだけどね。
「魔法の1種だよ。念話に近い感じ。それを中に入れたの。感謝の気持ちを言葉にしてね」
3人は、私に抱きついてきた。そんなに嬉しかったのかな。でも、こんな機会じゃないと伝えられないし、私としても良かった。
あれ?チョコが一つ余ってる……数間違えちゃった?
なんて、嘘。これは君の分だよ。ほら、名前。って、小説だから見れないか。でもちゃんと書いてあるよ〜。だから、これあげる。私からのバレンタインチョコ。ちゃんと感謝の気持ち入ってるよ。
さて、君には何が聞こえたかな?
思えばバレンタインですね。
というわけで番外編です。
友達や彼女からチョコを貰ったあなたも、誰からも貰えなかったあなたも、莉音からのチョコ、貰いましたよね。
聞こえた気持ち、どんなのでしたか?
あ、これは余談なのですが、僕は誰からも貰えず、さらには莉音からも貰えませんでした…………




