最終章 第104話 神と悪魔の戦い、決着へ
光と闇の戦いは、神と悪魔の戦いへと変化した。
強大な闇、もう既に莉音以外の全てを飲み込んだとも思えるような大きく、深い闇。莉音の勝ち目は、完全に消えたかのように思えた。
しかしまた、莉音は笑った。負けを察しての苦し紛れの笑いではない。この程度?という嘲笑でもない。ただ純粋な、楽しさから来る笑いだった。
「ふふっ。じゃあお望み通り、行くよ。あなたがそこまでしてくれたんだから、私もとっておきを見せてあげなきゃだしね」
「そうこなくては。では見せてください。あなたの全力を」
莉音はうなずき、全ての魔力を左手に集め始めた。
左手に魔力が集まりきったことを確認し、手を胸にかざした。そしてそこから2粒の魔力を取り出し、自分の魔力と合わせて1本の剣を作った。
「うん。上手く出来た」
「……何も変わってないようですが?」
「大丈夫。あなたの期待に応えられるだけの力はあるよ。あなたには無い力がね」
「そこまで言うなら……いいでしょう。こちらも全力で応えます」
ディナーガの言葉を受け、莉音は笑顔で剣を構えた。
そのまま2人は、また攻撃と攻撃の戦いを始めた。だが、今回はさっきまでの永遠に続きそうな相殺し合うだけの戦いではなく、攻撃を行うことでお互いの力を削り合う、完全な消耗戦になっていた。光が闇を削り、闇が光を削る。まるで、お互いの命そのものを使って戦っているかのように。
この戦いは、想像以上に速く限界が近づいていた。
ディナーガがどれだけ自分を改造し、神に近い力を手に入れたとしても、神の力を手に入れている莉音に勝てるはずがなかった。しかし、莉音はもう既にこの場所にたどり着くまでに10数億もの人間を殺し続けていた。そのせいもあり、2人が距離をとった瞬間に、2人同時に地面に倒れる寸前といったところだった。
「お互い……限界みたいだね」
「その……ようですね……これは…………完全に想定外でした。まさか、こんな勢いで削られる……とは」
「私も……」
2人は、何も言わずに最後の一撃の準備を整えた。全ての魔力を使い、この世界が闇に染まるか、光のある世界に戻るのかを決める一撃のため。
「お互い、考えることは同じだね」
「ですね。今日は……とことん気が合いますね。あの世まで同じは嫌ですが」
「私も。だから決めよう。ここで」
莉音は左手に光の剣を持ち、ディナーガも魔剣を手のひらから出し、右手に持った。
それ以上、言葉は必要なかった。
何も言わず、お互いに背中を向けてから離れるように歩き始めた。
1歩。
2歩。
3歩……
2人が10歩離れた直後、振り返って駆け出し、そのまますれ違ってお互いの立っていた場所で止まった。
一番最初に膝を突いたのは莉音だったが、血のように魔力を吹き出して地面に倒れ、消滅したのはディナーガの方だった。
「さよなら……この世界の敵、悪魔の使者ディナーガ」




