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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
最終章 第2次終末戦争編
328/334

最終章 第100話 これは願いだ

 今この記録は、世界境界観測所管理室によって日本に直接伝えられた映像記録に関する記述である。





 この映像記録は、第二次終末戦争における莉音単体の戦闘の記録である。

 戦争の拠点から得た情報では、莉音と残り2人がいるとのことだったが、敵の数の多さによって発見困難な状態となっているため、生死不明とする。

 また、遙か上空からの撮影であるため、水色と金色の光を追うことでしか莉音を把握できなくなっている。この光が莉音であることは、管理室長によって証明されているが、あまりにも速すぎるうえに移動範囲が広いせいで所々追えていないところがあることをご容赦願う。

 前書きはこのくらいにして、ここから映像内の記録文書である。政府陣は同封した映像と同時に閲覧することを義務とする。


 莉音は2メートル程の直線を描きながら、その直線上にいる敵を全て切り落としている。目測秒間数百名~1000名の敵を殺している。

 この映像自体は昨日の記録であり、そのうちのわずか3時間の切り抜きである。莉音はこの映像内では6000万人程の敵を殺している。そして現在も殺し続けており、敵の数はこの記録を書いている時点で6億をきるほどまで減っている。

 記録内容を映像に戻す。

 10分経過時、莉音の殺戮速度に変化はなし。映像内に目に見えて死体が現れ始めるが、それを踏み潰してもなお莉音への攻撃を行おうとするが、成功した者は現れていない。

 30分経過時、上記に同じ。見た目で敵の数に変化は見られない。

 1時間経過時、目に見えて死体の数が増えている。場所によっては死体の上に死体が積み重なるようになった。この様子は、1時間12分10秒付近で映像内に映される過去戦場に置かれているものと同様である。

 1時間30分経過時~2時間45分経過時まで、上記と同様。時間経過と共に生存者よりも死者の方が増えている。

 2時間55分経過時、映像内に生存者が莉音のみとなり、初めて莉音が立ち止まる。映像からは表情まではわからないが、我々のために全力で戦ってくれていることは充分伝わるだろう。




 ここからは室長である私から、日本政府に対してのメッセージである。


 たった1人の少女が、世界を救うために今もなお戦い続けている。

 我々は、その姿を記録し、未来にも「英雄」がいたという記憶を引き継ぐ準備を整えている。

 君たちはどうだ?

 作られた平和の上にあぐらをかいていないか?

 もっと認識するべきだ。君たちは……我々を含めた全ての人類は、彼女の犠牲によって平和に暮らせていることを。

 彼女がいなければ、数年前に我々は滅ぼされているのだ。ディナーガと呼ばれる、いかれた科学者に。

 もっと感謝するべきだ。神のような力を持った、奇跡の少女に。

 もっと敬うべきだ。我々を救ってくれている、小さき英雄に。

 もう一度言う。彼女はこんな今も戦い続けている。

 君たちは何をすべきか。

 我々が何をすべきか。

 いい加減動いたらどうだ?いくら彼女が神のような存在とは言え、彼女の命は有限だ。今できることを今やらなくてどうする。

 君たちが、最善の働きをしてくれることを願っている。これは期待ではない。願いだ。







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