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戦場に咲く赤き青薔薇  作者: 九十九疾風
最終章 第2次終末戦争編
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最終章 第96話 できるじゃん

 どうして私は、あんなこと言っちゃったんだろう。

 ただひたすらに敵を焼き斬りながら、後戻りできないという気持ちだけがふつふつと増え続けていた。莉音の言っていることが正しいことは分かる。私が莉音に言ったことがわがままだったってことも。でも、どうしても伝えたかった。伝えなきゃ、いけないと思った。


「はぁ……馬鹿だな、私。素直に伝えれば良かったのに」


 私の体は、もうほとんど限界に達していること。莉音が言っていた、魔剣と共鳴した後の形態変化が、私には絶対に無理なこと。そして、私の魔力が今日の夜には切れてしまうってこと……この全てを、莉音に伝えたくて……でも伝えられなくって……

 昨日、拠点の中で眠った瞬間に私はあそことは違う場所にいた。多分、あの時は生と死の境にいたんだと思う。でも、莉音のおかげで魔剣と共鳴してなんとか今まで戦い続けれた。自分を信じることも出来た。その感謝もまだ、伝えることが出来ていない。ちゃんと伝えたいけど、伝えることそのものが怖い。


「……ちゃんと、伝えよう。今日の夜に……ここにいる敵を最大限減らしてから」


 魔剣をただひたすらに振るう。人生最後の力と、多分、あの時に莉音に分けてもらった力を使いながら。

 そんな戦いをしていると、どこから攻撃されるか分からなくなってくる。そのせいで何度か切られたけど、痛みを感じるよりも先に攻撃を出し続けた。止まったら、そのまま死んでしまいそうな気がしたから。

 時間は、思いの外ゆったりと進んでいった。敵を殺しては炎で燃やし、走っては敵を殺し、そしてまた燃やし。いつまで経っても夜が来ないような気がして、このまま1人で戦ってる時間が永遠に続いていくような気がして……


「……まだ?」


 ちらちらと太陽の傾きを確認しながら、血にまみれて敵を灰に変えていた。そして、私が待ちわびた夜が近づき始め、空が少しずつ赤色に染まり始めた頃に、本当の限界が私を襲い始めた。


「あっ……!」


 それでも止まらず戦い続けていたら、急に視界が歪み初めて、地面が私に迫ってきた。意識が飛びそうになるほどの衝撃。私が倒れたということに気付いたのは、敵の顔が遙か上に見えたときだった。


「……せめて最後くらい…………」


 立ち上がろうとしても、体全体に力が入らなくて、その上敵の武器が背中から滅多刺しにされるかのように突き刺された。もう助からない。意識も遠くなり、何かが口から溢れ出そうと込み上がってきた。


「……最後くらい……私らしく」


 もう死ぬ。だから、最後の一撃だけ。

 私の想いに応えるように、魔剣が強く輝き始め、私の魔力の全てが魔剣に注がれた。

 次の瞬間、超広域に雷と炎が混ざった波がほとばしり、莉音の周りにもいた敵すらも飲み込んで焼き焦がしていった。

 何億人単位の敵を、巻き込んだ最後の一撃を見届けた私は、血を吐きながら小さく呟いた。



なんだ……できるじゃん








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