第2章 プロローグ
「ねぇ、本当に大丈夫なの?」
「あぁ。俺達の作戦に失敗の2文字はない」
「それ、結構な死亡フラグよ」
ほとんど明かりのない部屋。その中で数人の人間が話していた。
「ちょうどいいタイミングだ。まさか、あの二人が仲間割れしたのはこの上なく嬉しい誤算だったが」
「ほんとね!そのおかげで余計な作戦を追加せずに済んだんだから!」
真ん中に置かれた机には、作戦が書かれていると思わしき紙の数々と、バツのついた名簿。そして、「緑の丘」と呼ばれる隠れた学園敷地内で起こっていることが映し出されている液晶が置いてある。
「まぁそう騒ぐな。油断は慢心を呼び、慢心は失敗を導く。それに、あいつはこの程度じゃあくたばらんよ。でも、もう1人は無理だろうね。精神的に」
その口調は優しくても、その目には鋭い信念が宿っていた。
「おいおいリーダー。お前さんが1回口喧嘩に負けたからってさすがに買い被りすぎやしないか?」
「いや。というか、この戦いを仲間割れと見てる時点で君たちはまだまだだよ」
「ほう?理由を聞かせてくれよリーダー」
どうして“わざと”致命傷を負ったのか。その理由に気づくのは容易いが、まず「わざと」という点に気づくことが普通の人には不可能だ。
「簡単な話だよ。気づいてるんだ。我々の計画に」
「はぁ!?どこにそんな根拠が?!」
「そうだぜリーダー。いくらなんでもそれは考えすぎだろ」
「そうだね……じゃあこういうのなら納得行くんじゃないかな」
リーダーと呼ばれた男は、不敵な笑みを浮かべながら告げる。
「この作戦の最短ルートとして使う予定だった、新聞部を事前に潰された。だからイフリート同士の共鳴現象による暴走も止められた。これだけでも充分だろ?」
少し苦い思い出を話すようなテンポで、皆崎 獅童はみんなに告げるのだった。




